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これが私の生きる道  作者: さく
第1章第2部
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私の決意

「ーーガフッ!?」



 急に襲ってきた暴風に為す術もなく吹き飛ばされて地面に叩きつけられた。


 グランド・ドラゴンのローブのお陰で深い傷は無いけど、それでも身体中に鈍痛が響き渡った。



「グッ……アッ、はあ、はあ……」



 背中から叩きつけられて儘ならない呼吸を無理矢理しながら、周りを見渡して愕然とする。


 大量に生えていた樹々は遠くに吹き飛ばされていたり薙ぎ倒されていた。


 そして、その薙ぎ倒された場所の中央に、蟷螂の姿に蝶の羽を付けた巨大な魔物……バタフライ・インセクトが空中を飛んで私を見ていた。



 さっきの暴風はただの羽ばたきなの……?



 絶句……その意味を体感しながら空中にいるバタフライ・インセクトに目を向ける。


 視線を向けたバタフライ・インセクトと目が合ったと同時に、身体が恐怖で動かなくなり、最悪の結果が脳裏を過った……。


 でも、そんな私の思考を遮るかのように鋭い風が私の頬を擦り、後ろの樹を切り裂いた。



 焼けるような熱が一筋頬に走り……血が流れて、手に落ちる。


 そこでやっと何が起きたのかを理解した。多分、風の魔法で私を攻撃したんだろう。



 少しでも狙いがしっかりとしてたら私の首は今頃地面に転がってる。


 身体がより一層震え、歯と歯が噛み合わなくなる。


 圧倒的な死という根源たる恐怖の前に……私は何も成せずに死ぬんだろう。



 グチャグチャになった思考で漠然と考える。結愛と、カルロ・ベルトは無事なのか……。


 高校に入った頃から人付き合いの悪い私に根気よく話しかけてくれた結愛、彼女は私がどんなに冷たい態度を取ってもめげる事なく私に関わってきた。


 うざいともしつこいとも思って、実際に言った。それでも、私から離れようとせず私に笑顔を向けてきてくれた。


 この世界に来てからもそう、事ある毎に私に声をかけ近くにいて、全身で私の事を信頼してると語ってきてくれた。


 彼女のお陰で今の咲森渚という存在は此処にあるんだ。言い過ぎだと結愛に笑われそうだけど、そう思う程に私は彼女に感謝している。



 カルロ・ベルト、彼との出会いはある意味では鮮烈で、彼にとっては恐怖でしかなかったと思う。実際に彼が私を見る時は怯えが混ざってた。


 だけど、それでも私と対等に会話を試みようとしていたのを知ってる。彼と出会ってまだ1日程度でしか経ってないけど、たったそれだけでも彼の根の優しさは理解できた。



 親友と胸を張って言える少女と、まだまだ未来がある優しい少年。


 2人が今どうなっているかわからないけど……それでも、生きていると信じてる。



 幸か不幸かバタフライ・インセクトは私を見ている。


 生きているのなら今のうちに逃げてほしい。私も生きたいけど……無理だと思うから。


 結愛達が少しでも生きて逃げられるように、私は頑張らないと……そうじゃないと犬死になるじゃない。



 バタフライ・インセクトがいつまでも動かない私に痺れを切らしたのか鎌を構えて急降下して来た。


 速い……でも、対処出来ない速さじゃないのは多分標的が小さくて地面にいるから。



 恐怖と痛みで震える身体を無理矢理動かして“縮地”を繰り返し、攻撃範囲内から転がるように出て、“焔の矢(ブレイズ・アロー)”、“焔の豪球(ブレイズ・ボール)”、“焔の槍(ブレイズ・ランス)”を同時に出来るだけ発動させてバタフライ・インセクトに全力で放つ。



 無数の焔が地面に着地したバタフライ・インセクトに殺到して爆炎が巻き上がるのを見ながらまた“焔の矢(ブレイズ・アロー)”、“焔の槍(ブレイズ・ランス)”、“焔の豪球(ブレイズ・ボール)”を発動して放つ。


 それを後3回繰り返すと頭に針が貫通したかの様な鋭い痛みが走った。


 この痛みは魔法の連続使用で脳に負担が掛かり過ぎた時に起きる現象で、それだけ私は魔法を行使したんだろう。



 でも、まだまだ足りない……。


 この程度で倒せたのならランクAになんてなるわけがない。



 その考え通りに爆炎の中から怒り狂った様にバタフライ・インセクトが躍り出てきた。


 幸運にも片方の羽に穴を開ける事ができて飛べないのか、羽ばたく様子を見せない。


 でも、それ以外で傷ついてる様子なんてない。



「やってられないわよ……」



 思わず出る言葉に苦笑して今度は“氷結の矢(フリージング・アロー)”、“氷結の盾フリージング・シールド”、“氷結の欠片(フリージング・ダスト)”、“氷結の棘床フリージング・ニードル・フロア”を発動させて放つ。


 その時に更に頭が痛んだが無視して行使した。


 急激な温度変化は劣化を早める。昔に見たテレビでそんなことを言ってた覚えがある。


 それが本当ならと恐怖に怯える思考を押し殺して、僅かに残った理性でその方法を選択した。


 だけど……“氷結の矢(フリージング・アロー)”が螺旋回転しながら突き刺さろうとするも刺さる様子なく砕け散り、“氷結の盾フリージング・シールド”が切断しようとするもその皮膚の硬さに阻まれ、“氷結の欠片(フリージング・ダスト)”で切り刻もうとするも薄皮に線が走るだけで“氷結の棘床フリージング・ニードル・フロアで下から突き刺そうとするも当たった瞬間に砕けて消えた。



「嘘、でしょ……」



 急激な温度変化以前に魔法が全く効いてない。


 全ての氷魔法が、当たった瞬間に砕けてなくなった。



 これがAランク……正に理不尽の権化。


 偶然片羽を貫通しただけで、元々私の魔法なんて擦り傷になるのかすら怪しかったんだ。


 茫然とする私に向かって、バタフライ・インセクトは風の魔法を放った。


 唸りを上げる鋭い風の刃が私に向かって迫り来るのを避けようとして、足元に散らばる樹に足を取られて無様に転ぶ。



 起き上がろうとした瞬間に私の腿裏を風の刃が切り裂いた。


 熱いっ……切り裂かれた腿裏から血が吹き出て、脚の力が抜ける。


 熱さと痛みで溢れ出た涙を無視して、少しでもやり過ごせる様にグランド・ドラゴンのローブで身を包んで丸くなる。



 無数の風切り音が数十秒鳴り響き、そして止む。


 その間に途方もない衝撃が来たものの、その刃が私の体を切り裂くことはなかった。


 ……グランド・ドラゴンのローブで身を守ったのはどうやら正解だったらしい。



 腿裏の傷が少しでもマシになればと体力ポーションをアイテムボックスから出して一気に煽り、続けて魔力ポーションを煽る。


 深い傷が浅い傷になった様な感覚と魔力が幾分か回復したのを感じて少し安堵したところで、外がやけに静かなことに気づいた。



 私が死んだと見てこの場からいなくなったのか、あるいは……。


 恐る恐るローブから顔を出すと周りが暗くなっていた。


 夜が来たんじゃない、バタフライ・インセクトが私の前に陣取ってるんだ。


 目の前にいるバタフライ・インセクトを見て言葉を失った私を、バタフライ・インセクトが嘲笑った気がした。



 恐怖を煽る様にゆっくりと上に上げていく鎌を見て咄嗟に腰にある刀を引き抜き、姿勢が崩れた状態で“居合い”を発動した。


 勿論そんな不完全なもので傷なんかつくはずもなく、金属と金属がぶつかり合う様な音が鳴り響いた。


 そして手に重たい痺れが襲い、あまりの痛みに手に力が入らなくなり持っていた刀を落とした。



 それが私の最後の抵抗と見なしたのか、もう興味を失ったのかわからないけど……もう興味はないと言わんばかりに鎌を振り下ろした。



 咄嗟に目を瞑り身を固める。……来るはずの痛みが、来ない。


 不思議に思い目を開けると、さっきまで目の前にいたバタフライ・インセクトの姿は忽然と消えていた。



「え……」



 何……?何が起きたの?


 気分が変わって何処かに行った?それにしては歩く振動も何も感じなかった。


 誰かが助けてくれた?その割には何も音なんてしなかったし、誰もいない。



 意味がわからない……わからないけどただ1つわかるのは、私はどうやら助かったらしいということ。


 助かった、その事実を脳が認識してその言葉の意味を理解すると共に涙が溢れて……身体中の力が抜けると共に世界が曖昧になっていく。



「ふう、何とか間に合った。にしても、ここら辺は立ち入り禁止にしたはずなんだが……やれやれ、事後処理が面倒だ」



 傾く視界と身体、地面に倒れて意識が泡沫の内に沈みそうになった私の耳に、男の人の声が聞こえた気がした。




 ーーーーー



 ……ふと、意識が浮上した。


 あれ、私何してたんだっけ……?


 たしか……地球出身の女の人と話して……ううん、もっと他にあったはず……。



 結愛とカルロと……森に行って、魔物を狩って……それから……?


 そうだ、それからバタフライ・インセクトに……。


 バタフライ・インセクト、あの魔物と戦って……忽然と消えた後に気を失ったんだ……。



「……っ!……あ、れ……?此処、は……」


「うぉわぁ!?」



 跳ね上がって周りを見た私の目に映った光景は……木造の部屋。此処って、確かミルト村で泊まった宿屋……?



「お、起きた……。よかった……」



 そんな声が聞こえて、聞こえた方向に目を向けるとカルロが椅子から転げ落ちた状態で私を見上げていた。



「カルロ……?」


「え?うん、そうだけど……っていうか、今、名前……って!?何で泣いてるの!?」


「……あれ……?」



 カルロの言葉で自分が泣いてることに気づいた。


 涙を止めようと思っても止まらず、寧ろ余計に流れていく。


 カルロが泣いてる私にオロオロして、私も制御の利かない自分にオロオロする。



 泣き止まない自分にどうしようと困惑してると、部屋の扉が開いて見慣れた少女が部屋に入ってきた。



「……あ、渚起きた……って!?泣いてる!?なんで!?」



 部屋に入ってきた結愛を見て更に涙が溢れ出る。


 最早どうすることも出来ないこの涙を唯々流してる私を見て、結愛が私を包み込むように抱き締めてきた。


 私は結愛に縋り付くようにして抱き締め返して、止めどなく流れる涙と胸中に広がる安堵を感じながら、しばらくの間そのままでいた。




 止まらなかった涙が止まり、私は氷魔法で目元を冷やしながら私がこの宿屋にいる理由を2人から聞いていた。



「なんかね、私達村の入り口で倒れてたのを愛美さんが見つけてこの宿屋まで運んでくれたんだって」


「そういえば……僕たち何であの森に行ったんだっけ」


「ホントだよねぇ〜、渚は覚えてる?」



 そう暢気に話している2人に言葉を失った。


 え……覚えてないの……?


 遺跡に向かう途中で、バタフライ・インセクトと遭遇したんじゃない。


 そう話すも2人は首を傾げるだけで、遺跡のいの字も、バタフライ・インセクトの事も欠片も覚えていない様子だった。



 頭を打って記憶が抜け落ちてるのか……それとも、あの時に聞こえた男の人が何かをしたのか。


 その割に私の記憶に鮮明にあの時のことが残ってるから何とも言えないけど。


 ただ、頬の傷や腿裏の傷、ダメージを受けた武器防具があの戦いが本当にあったことだと語っているし、レベルとかが上がってるからもう確実。



 とは言っても2人は覚えていないみたいだし、私もあまり話したいことじゃない。


 だって、恐怖して泣いて、色々と小っ恥ずかしいこと思って……。


 顔から火が出るほど恥ずかしい事を誰が好き好んで話すの。



「まあ、取り敢えず今日はもう夕方になるし出発は明日だね」


「うん、そうだね。あ、カフリの実を絞った飲み物があるんだけど飲む?」



 結愛が旅立ちを明日にしようという提案をして、カルロが私達にカフリの実のジュースを渡してくれた。


 冷やしていないのかあまり冷たくないカフリの実のジュースに、氷魔法の氷を入れて冷やす。


 結愛とカルロに氷を入れるか聞いてから、2人のコップに氷を入れる。



 冷えたカフリの実のジュースを3人で飲んでから、一階に行き夕食を食べた。


 その時に愛美さんと愛美さんの彼氏のシュルダさんと色々と話をした。


 その後、まだ疲れが抜けきっていなかったのか重い身体を動かして体を拭き、歯を磨いてから眠りに就く。



 その時に近くにいた結愛を抱き締めたのには、特に理由はない。



咲森 渚 17歳 女


Level50


役職:女子高生


天職:魔剣士


スキル:ポーカーフェイスlv6 料理lv6 平常心lv7 気配察知lv6 痴漢耐性lv6 恐怖耐性lv4 身体制御lv6 魔力操作lv8 魔法操作lv3 縮地lv7 斬術lv7 喧嘩殺法lv6 投擲lv3 疾風斬りlv5 居合いlv5 二連撃lv3 五月雨斬りlv2 十字斬りlv3 疾風衝lv5 疾風乱舞lv1


スペル:焔魔法ー焔の矢 焔の壁 焔の槍 焔の豪球 焔の鞭

氷魔法ー氷結の矢 氷結の盾 氷結の檻 氷結の棘床 氷結の欠片

合体魔法ー氷焔の光爆


ギフト:アイテムボックス ステータス閲覧 学習能力向上 刀剣の心得 魔法の心得 焔魔法 氷魔法



取り敢えず書けたので投稿します!

誤字脱字は見つけ次第修正させていただきます。


戦闘描写って難しいですね…。

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