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これが私の生きる道  作者: さく
第1章第1部
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私と友達の魔物狩り

 結局1日中結愛の相手をした翌日の今日、私達は何時もの屋内訓練場に集合していた。

 私たちの前には2番隊副隊長のジル・ソルダードが普段より厳しい顔で立っている。



「今から支給品を配る!袋の中に入ってるのは体力ポーションと魔力ポーションが2本ずつと非常食3食分だ!各自配られたら中身を確認する様に!もし足りなかったら近くにいる騎士団員かシュルイス教の教徒に伝えてくれ!」



 その言葉と共に騎士団員とシュルイス教徒が私達に支給品を配り歩き始めた。渡された袋の中身を見るとジル・ソルダードが言った通りの物がしっかりと入ってる。

 全員しっかりと入ってたみたいで、足りないっていう声は聞こえてこなかった。私達の様子を見て頷いたジル・ソルダードが口を開く。



「この一ヶ月、辛い訓練や勉強があっただろう。挫けたり泣きを見た奴もいるかもしれない……だが、今此処に立っている!この一ヶ月の訓練でお前らは強くなった!それに誇れ!自信を持て!魔物と戦うときに必要なのは揺るぎない気持ちだ!心が折れた奴から死んでいく!さあっ、お前らの訓練の成果を確かめる時だ!!」


「「「おおおー!!」」」



 腕を組んで屋内訓練場の壁がビリビリと振動するほどの大声で演説をしたジル・ソルダード、その演説が終わると共にクラスメイトの大半が叫び返した。

 私は聞いてはいたけど、空気を読まない結愛の抱きつき攻撃に応戦してたせいで乗り遅れた。


 ……いやまあ、乗り遅れてなくてもやらないけどさ、恥ずかしいし。



「魔物狩りの説明をする!2人以上でチームを作り、できたら俺に報告してくれ!俺に報告が終わり次第騎士団の1人が付く!これはお前らがまだ魔物に慣れていないのと万が一危険が起こった時の保険だ!基本はお前らで魔物を狩ってもらう!魔物を1人5体は最低目標として狩ってこい!倒した後はお前らのアイテムボックスで回収して此処まで持って帰る様に!期限はなし、必ず自分の力で狩ってこい!以上解散!!」



 魔物狩りの説明が終わってすぐに、ざわざわと騒がしくなるクラスメイト達。普段話しかけてこないクラスメイトが私に話し掛けてきたりしてるけど、残念ながら組む人は決まってる。



「よし、私と渚でいいよね!これぞゴールデンコンビだよ!じゃあ、私熊の人に伝えてくるね〜」


「よろしく」



 そう、相手は何気にずっと一緒にいる結愛。理由としては私と結愛のお互いがお互いの戦闘手段や癖をわかってるから。伊達に一ヶ月一緒に訓練してない。

 熟練者なら初めて組む相手とでも息を合わせることができるんだろうけど、私はできない。変な冒険をするより確実性を持って事に当たった方が確実だと思う。

 特に今回は初めて魔物と戦うし、今までの訓練とは全く違って命のやり取りをするんだから余計にそう。


 声を掛けてくるクラスメイト達をのらりくらりとかわして、ジル・ソルダードに報告し終わった結愛と合流する。



「よっし、じゃあ早速行こ!」


「ちょっと待て」



 合流すると同時に号令を掛けた結愛を止める騎士団の人。多分私たちについて来る人で、確か名前はレト・シルータ。一昨日私と対人訓練をした人で、それ以前にも何回か模擬戦してる人だ。


 流れをぶつ切りにされた結愛が不満気にレト・シルータに向き直る。



「なに?」


「2人とも、この神殿から出たことないだろ?だから入り口まで案内しようと思ってな」


「お、気がきくねぇ君〜。じゃあ早速案内お願いね!」



 レト・シルータの気配りのお陰で迷ったりすることなく神殿の入り口まで移動出来るらしい。私の手を引いて歩いていく結愛に苦笑しながら、レト・シルータは私達の少し前を歩く様にして先導を始めた。


 ……というか、此処って神殿だったんだ……確かに考えてみれば、シュルイス教の総本山なんだから建物は神殿や教会とか……なのかな。



「改めて俺の名前はレト・シルータだ。魔物狩りが始まったら基本的に俺は後ろに控えて、お前達の行動を見てる。ギリギリまで手は出さないからそのつもりでな」


「はーい」


「わかったわ」



 私達の返事を聞いて満足気に頷いたレト・シルータはそのまま歩みを進めた。



 とことこと歩くこと暫く、ようやく私達は神殿の入り口に辿り着いた。神殿の名の通りに入り口付近は白い石で出来た床や巨大な柱、シュルイス神を象った像があったりと、何処となく神秘的な雰囲気が感じられる。


 そして、外に出ると其処は白い石で出来た家が立ち並びかなり離れたところに高い壁が見える。多分あの壁が城壁とかなんだろうと思う。



「この建物達はシュルイス教の教徒達が寝泊まりする為の施設でな、年に1回シュルイス教徒が集まるシュルイス神祭の時や修行中のシュルイス教徒が利用するんだ。これだけ見ると1つの町に見えるけど、逆に言えばこんな広さが必要なほどにシュルイス教徒がいるってわけだ」


「シュルイス教は山にあるって聞いてたけど、こんなに広い山ってあるの?」


「ああ、それはな、数百年前に存在したとされるシュルイス教の教祖が巨大な台地を作り其処に家を建てたらしい。それが時間が過ぎていくうちに木々が生えて山の様になったっていう話だ。つまり、この街があったところが山になったってことだな」


「ふ〜ん、とんでもない話ね」



 確かに、神話とかよりもリアリティがあるし本当にあったことの様に感じる。多分レベルが100とかになったらできる様になるんじゃないかな。歴史上ではレベル90を超えた人物は2人だけみたいだけど……。


 一般的にはレベル50が殆どの人の限界値で、それ以上上がるとしてもレベル70を超えるかどうからしい。

 その話を聞いてレベル90超えは無謀だってわかったけど、超大規模な魔法を使いたい私はなんとしてでもその場所までいってみせる。



「そういえば今更なんだが、お前ら2人とも鎧とか着なくていいのか?」


「何言ってんのよ、私達か弱い女の子よ?鎧なんて重い物着れるわけないじゃない」


「いや、革鎧とかあるんだが……」


「却下よ。それにシュルイス教徒の人が防刃のローブをくれたから大丈夫よ」



 結愛はそう言って着ている白のローブをバサバサして強調する。結愛が言う通り、鎧を着ない……又は着れない人はシュルイス教から防刃の加護がついたローブを配られている。


 と言っても鎧ほど丈夫じゃないし相手によっては着てる意味のない代物になるけど、ないよりはマシということでこのローブを配られている。

 ちなみにこのローブは、白・灰色・黒の全3色ある。私は迷うことなく黒を選んだ。だって黒って高級感あるし、大抵の服に合うし、何より血の色とかが目立たないじゃない。

 どうせこれから汚れるんだからっていう理由で選んだ私を、結愛が何処となく可哀想なものを見るような目で見てきたのはきっと気のせいのはず。





 ーーーーー



 シュルイス教の街を出て暫く道なりに歩き、その後山の中に入って2時間程経過して遂に初めての魔物であるゴブリンを発見した。


 身長は小さく緑色の肌をして醜い顔をした魔物であるゴブリンは正に、想像してた通りのものだった。


 私達は相手を認識してるけど、相手は私達に気づいてないらしい。初っ端から中々良い条件で戦えるのは運が良い。



「あれってファンタジーの代名詞的存在のゴブリンよね?私が先にやっていい?」


「どうぞ」


「よっし、渚に良いところ見せちゃうぞ〜」



 そう言って一歩前に出て唸り始める結愛の頭上に少しずつ光が集まっていく。時間にして1分程で光り輝く矢が2本出来上がった。


 その間ゴブリンは地面を必死にほじくり返していて私達に気づく様子がない。



「よしっ、いくよ!“光の矢(ライト・アロー)”!!」



 結愛の掛け声と共に一本の矢が発射されてゴブリンの右腕に突き刺さる。そのことで初めて敵の存在に気付いたゴブリンは慌てた様子で周りを見渡して私達の存在に気付いた。


 怒りの形相で私達に襲いかかろうとするゴブリンの額に残りの“光の矢(ライト・アロー)”が突き刺さった。


それでも暫く踠いていたけど、結局結愛が追加して放った“光の矢(ライト・アロー)”が頭に突き刺さって絶命した。



「……魔法の威力は確認できたけど……生き物殺すのって意外とクルね……」



 暗い顔をする結愛をちらりと見てから周りを警戒する。魔物の図鑑に書いてある通りならゴブリンは絶対と言って良いほど複数で行動する。だからあの1匹だけって言うわけじゃないはずだ。


 多分近くでさっきのゴブリンのように地面を掘ってるか、私達を警戒してるか。


 ふと、ゴブリンを回収しに向かっている結愛を見て、その近くの木に視線がいった時にゴブリンが木の上に潜んでいるのを見つけた。



 ゴブリンが見ているのはとぼとぼと歩いている結愛で、手には錆び付いたナイフを持っている。


 そこまで認識して私は氷結を重視した“氷結の矢(フリージング・アロー)”を3発、頭・胴体・下半身に向けて射出した。


 結愛に集中していたゴブリンは“氷結の矢(フリージング・アロー)”に気づくことなく氷漬けになった。



 木の枝と一緒に凍ってるからか木から落ちる様子がないから、もう一度“…今度は硬度を重視した“氷結の矢(フリージング・アロー)”で枝を破壊してゴブリンを落とした。



 実は1つの魔法でも、イメージのやり方次第で色々と追加効果を付けたり特化させたりすることができる。

 ただ、それが出来るのはベテラン又はそれ以上の実力者が出来る芸当であって、私達のようなズブの素人では本来出来る技術じゃない。



 じゃあ何で私が“氷結の矢(フリージング・アロー)”を氷結特化にさせたり硬度重視にしたりといったことが出来るかというと、ギフトの“学習能力向上”と“魔法の心得”、それに転職の魔剣士の補正のお陰だ。


 ここまで魔法に関係する補正があるなんてことは非常に希とのことで、シュルイス教徒や騎士団の人達に非常に羨ましがられた。


 私も、これらのギフトを持つことが出来たことに普段祈りもしない神様にお礼を言うほどに喜んだ。その時の光景を通りすがりのメイドさんに見られて、それから暫く生温かい眼差しを向けられることになったけどそれを気にする余裕もない程に嬉しかったなぁ。


 少し前の自分のことを思い出しながら落としたゴブリンをアイテムボックスに仕舞う。



 不思議と生き物を殺すことに嫌悪感とかが湧いてこないのは多分、昔にあった出来事の影響かな。

 あの時は色々荒んだけど、今となってはそれが糧になってるんだから人生わからないものだ。



「はぁ、生き物を殺しても変わらない冷静っぷり…相変わらず過ぎて羨ましいよ」


「こんなのは慣れるに限るわ。私の場合はスプラッタ映画と動物の解体で慣れてるからね」



 過去の話なんてする必要もないから少し前までマイブームになってたスプラッタ映画鑑賞と、お爺ちゃんに付き添ってやっていた豚や牛の解体を理由にする。


 これらが私が殺すことに慣れてる理由の1つでもあるし嘘は言ってない。



「うぅ〜、私も頑張って慣れないといけないんだよね……。すぅーはぁー……よしっ!私頑張るよ!」


「頑張れ」


「うん!」



 流石心臓に毛が生えてると言われてる結愛だわ。直ぐに気持ちを切り替えて前に進みだした。



「よしっ、一気に慣れるためにいっそのことこの短剣で挑もうかな」


「結愛の場合は近接より、魔法を使った遠距離攻撃や治療が主なんだから素直に魔法にしたら?」


「……な、渚が私に優しくアドバイスしてる……だと……?……えへへー、そんな優しくされたら魔法にするしかないじゃ〜ん!ふふふ、見ててよ渚!私のスーパーな光魔法でどんどん敵を蹴散らしちゃうよ!!」



 別に優しくしたつもりはないけど、本人がやる気になってくれたから結果オーライということで。



 結局今回の魔物狩りの戦果は、結愛がゴブリン2匹に犬の頭で人型のコボルトを3匹と、50cm程の大きさで兎の魔物の“シック・ラピッドを2匹。私がゴブリン2匹に1メートル程の大きさを持つ蜂の魔物のキラービーを13匹と、2mを超える大きさの熊の魔物の“ジャイアント・ベアーを1匹。


 合計で約3日、その間の食事は非常食や現地調達した魚や魔物の肉を食べて凌いだ。



 また、今回の魔物狩りのお陰でレベルが上がり元々持っているスキルのレベルも上がって新しいスキルを覚えられた。


 ほくほく顔をしている私達を見てレト・シルータもほくほく顔をしていた。


 レト・シルータが言うには、私達の戦績は非常に優秀な部類らしく非常に嬉しいとのこと。

 というのも、今回の魔物狩りに参加している護衛の騎士達は私達が討伐した魔物の数とランクで特別給与が増減するらしくて、私達の戦果だとそこそこの特別給与が貰えるらしい。

 鼻歌を歌いながら嬉しそうにしているレト・シルータの浮かれ振りは凄かった。



咲森 渚 17歳 女


Level21


役職:女子高生


天職:魔剣士


スキル:ポーカーフェイスlv5 料理lv6 平常心lv6 気配察知lv3 痴漢耐性lv6 身体制御lv2 魔力操作lv4 縮地lv3 斬術lv6 喧嘩殺法lv5 投擲lv3 疾風斬りlv3 居合いlv2 二連撃lv2


スペル:焔魔法ー焔の矢 焔の壁

氷魔法ー氷結の矢 氷結の盾


ギフト:アイテムボックス ステータス閲覧 学習能力向上 刀剣の心得 魔法の心得 焔魔法 氷魔法

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