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これが私の生きる道  作者: さく
第1章第2部
12/19

私と結愛の魔武闘大会予選1

 ほのぼの亭を出て暫く道沿いに歩くと、中央広場という場所に着いた。その名の通りに、この街のメインストリートである東西南北4つの道がぶつかり合う場所でこの街で最も賑やかな場所らしい。


 私達は南のメインストリートから合流した形であり、東の方に魔武闘大会が開催される大闘技場があるとのことで受付はその大闘技場前で行っているってカルロが説明してくれた。


 やるべき事は早めに、ということで魔武闘大会の受付に行く為に東のメインストリートを歩いていく。



「おおー、なんか如何にも!っていう感じの人がいっぱいいるね〜」


「ほんとだね」



 結愛の感嘆にカルロが一言返し、二人揃って周りにいる人に目を向けた。私も二人に倣って周りを見る。


 道着を着て何かの型を繰り返してる筋肉ムキムキの中年男性、只管食べ物を口に放り込んでいく丸々とした肉ダルマ、タロットカードみたいなのを空中に浮かべてる占い師風の若い女性、2m以上の背丈にほぼ同じ大きさの大剣を背に掛けた大男、背丈を越える大杖を持ったお爺さん等々、見た感じ強そうな人がいっぱいいる。



「あ!あそこにクレープ屋さんある!後で食べに行こ!!」


「ほんと!?僕甘いの大好きなんだ!」


「クレープ……」



 甘い物って存在してるだけで正義よね。バナナクレープやラズベリークレープとか、甘いと甘いが重なったり甘いと酸っぱいが混ざり合ったり……楽しみね。


 色々な人や物を見ながらとことこ歩いていくと、私達の眼の前にどでかいコロッセオが姿を現した。高さで言うなら二十階建てのビルくらい、かな。この世界の建造技術凄い。

 ほおー……と感心しながら3人で歩き、魔武闘大会受付と書かれている看板の下にある受付に行く。



「こんにちは、魔武闘大会に出場ですか?見学ですか?出場は無料で参加できて、見学は席料として千ゴルド頂きます。出場する方はこの紙に名前をお願いします」


「はーい……伊藤結愛っと、よし」



 受付にいる女の人が説明してくれて、結愛が言葉に従い示された紙に名前を書く。私もそれに倣って名前を書き、カルロは見学するということで席のチケットを買った。



「伊藤結愛様と咲森渚様ですね……それでは明日の朝にこのナンバーカードを持って大闘技場にお越し下さい」



 そう言って受付の人から渡されたカードを見る。私は514番、結愛は513番で私達はこの番号目に登録しに来たということらしい。

 つまり最低でも514人もの人が魔武闘大会にエントリーしてるっていうことになる。


 明日と明後日で予選をして、3日後に本選をするとのことで試合を観戦出来るのは本選のみらしい。

 集合は明日の朝、正確には午前8時を示す鐘が鳴る前に大闘技場に集合しないといけない。



 小さい村とかには精々日時計くらいだけど、大きな街や都になると時計塔がある。それはこの街も例外じゃなく、中央広場には大きな時計塔がある。

 さっきはスルーしたけど、そういえば何気にこの世界で時計を見るのはさっきが初めてだったな。


 シュルイス教にいた時は基本太陽の傾きで大体何時位か予想してただけだし。


 ちなみに、シュルイス教は他の街とかより色々なことが遅れていて、その理由が古き良き慣習の継承を大事にしてるから。

 お陰で、時間に縛られていた地球の生活の時より大分余裕を持って行動できてたと思う。



 閑話休題(それは置いといて)



 魔武闘大会のエントリーを無事に終わらせることが出来た私達はお待ちかねのクレープを楽しみ、屋台や露店を楽しんでその日を終えた。

 あと、冒険者ギルドで狩った魔物の換金をしたお陰で大分懐があたたかくなっている。


 内訳は、フォレスト・ベアーが10匹で50万ゴルド、フォレスト・ウルフが36匹で180万ゴルド、ビッグ・ベアーが12匹で12万ゴルド、ゴブリンキング1匹で4万ゴルド、ゴブリン50匹で5万ゴルドで占めて251万ゴルド。


 結愛の提案でこのお金はそれぞれの討伐した魔物の分のお金がそれぞれに渡る形にした。

 そうした方が変な喧嘩とか起きないだろうし、お金という見て分かるものでモチベーションを上げる効果があるとかなんとか。



 ちなみにこれだけの数を換金して大丈夫なのかをちょっと心配になって聞いたら、逆にもっとないのか聞かれた。その人が言うには、魔物の素材……特にベアー系は品薄で困っていたらしい。

 それと当然の如くこれだけの量を持って行って驚かれたけど、私と結愛が女子高生だと知って、その時対応してくれた人は何か納得していた。

 そしてカルロ曰く、私と結愛を下卑た目で見ていたクソみたいな男共も、私達が女子高生だと知った瞬間に顔を真っ青にして逃げてったらしい。



 それだけ英雄の系譜とやらが凄いのか、過去に女子高生に手を出して手痛い目にあったかのどっちかかな。

 私的には後者がいいな。女を人として見ずに欲望の捌け口として見る畜生にも劣る存在は、苦しんで苦しんで少しずつ……毒に侵食されるように死んでいけばいい。




 ーーーーー



 ということで翌日の午前6時、私と結愛は魔武闘大会の予選に行くために、カルロは街で掘り出し物がないか出店とかを回るために街中を歩いていた。3人で中央広場までゆったりと行き、途中で別れる。



「それじゃあカルロ少年、私達は予選に行ってくるよ」


「うん、気をつけてね」


「行ってきます」



 軽く手を振って私と結愛は東のメインストリートを歩き大闘技場に向かった。



「うーん、私たちの番号で何となく予想はしてたけど、かなり人数多いね〜」


「そうね」



 大闘技場に向かって行く人の波に流されつつも、別れないように手を繋いで歩く。


 周りを見ながら歩いてると、ふと見覚えのある顔が見えた。



 黒髪黒目のどこにでもいそうな男の子と、艶やかな黒髪の可愛い女の子。何時ぞやに両片思いだと発覚した村本広と白石小百合が、露店を見て回ってる。


 顔を若干赤く染めた顔で幸せそうに笑い合う2人、偶々見えた左手の薬指にはペアリングを付けていた。……ふむ、両片思いからちゃんと両思いになったんだ。行程を数段飛ばしてるように見えるのは気のせいかな。


 この2人とは全く関わり合いがなかったけど、それでも祝福したくなるのは2人があまりにも幸せそうだからかな。私的には何事もなく幸せに過ごしてほしいと思う。



 大闘技場に行く時に偶々2人の近くを通ったけど、私の顔を見てもやっぱり相手の方はほとんど覚えていないらしく普通にスルーしてくれた。


 それからまた、人の波にゆらゆらと流されてると大闘技場前に到着。


 昨日の受付の前には長蛇の列が並んでいて私達はその列の1番後ろに並ぶ。れからも私達の後ろはどんどんと列を成していくのを見て、その人数の多さに少し頬が引き攣った。



 余裕を見て来ておいて良かった。これで受付する前に8時になって終わりって言われたら流石にショックが大きい。


 あれかな、時間を守ることが出来るのも重要なのかな。なんとなく、10分前行動5分前集合的な概念はこの世界にもありそうだなって感じた。


 だって如何にも不良って感じの男の子達が文句も言わずに列に並んでて、現在進行形で酒を飲んでて叫びそうな中年の男の人も大人しく列に並んでるから。


 それから、暫く経ってようやく私達の受付が完了。


 と言っても昨日渡されたナンバーカードを受付の人に見せて、受付の人がナンバーカードに書かれてる数字を確認してチェックを入れて、クジ引きみたいに紙を引かされただけだった。

 それで成済ましとかないのか聞いたら、そこまで厳密じゃなくて代理で受付をしてナンバーカードを貰いその後本人が来ることもあるから大丈夫とのこと。



 魔武闘大会側としてはとりあえず参加してもらえればいいから、人が変わってようが関係ないって言ってた。

 それでいいんだ……まあ、これだけの数をしっかり管理するのって面倒だし雑になる部分はあるよね。



 ということで受付を終えた私と結愛は大闘技場の観客席に誘導された。誘導された場所はまんま、写真で見た古代ローマのコロッセオだった。

 へぇー、ていう感じでコロッセオを観察しつつ周りの人も見てると突然大きな声が響き渡った。



『えー、ゴホンゴホン!それではこれより魔武闘大会の予選を始めます。えー、魔武闘大会には上位8名が出場できますので皆さん頑張ってください。予選の順番は受付で皆さんに引いてもらったクジの番号となります。今回は人数が予想以上に多かったのでスタジアムを4分割し、それぞれの場所で行ってもらいます。それでは第1試合第1部ーー』


「私達はまだまだ後だねぇ」


「そうね」



 私が引いた番号は560番で結愛が引いたのは234番、これは確かに2日掛かりそうな人数だ。


 特に特筆する試合もなくぼーっと眺めてるといつの間にか結愛の番になっていた。ふんすと気合を入れる結愛に応援を掛けて見送る。



 戦闘の結果は結愛の圧勝だった。


 最近細かい操作ができるようになってきたという魔法で“光の矢(ライト・アロー)”を10本ほど間隔を遅らせたり、放った後の矢を操って奇襲して相手が半泣きの降参で終了。


 なんとも味気ない試合だった。


 というより、これ位で半泣きとか……。



「いえーい!結愛ちゃんの圧勝だよー!」


「おめでとう」


「いや〜それほどでも〜」



 テンション高めで戻ってきた結愛に労いの言葉を言うと、てれてれと照れながら隣に腰を落ち着けた。


 それからまた暫く経ってやっと私が呼ばれたから、コロッセオに降りて予選をする場所に行く。



「えーと、咲森渚さんとボルゴ・ブルンゼさんですね。それではお互い離れて向かい合ってください」


「はん、あんたみたいな嬢ちゃんが魔武闘大会に出るとはなーー」



 上は肩口まで、下は膝下までしかない武闘着擬きを着てて身長2.5mはありそうな筋肉ゴリゴリのメガマッチョが、5m位距離を置いてお互い向かい合ってから鼻で笑い話しかけてきた。

 ちょっとイラッとしたけどここは受け流す。こんなのに一々腹立ててたら身がもたないし、それにまだ話したいことありそうだし。



「それほど強い猛者なのだろう。この俺の拳が何処まで嬢ちゃんに噛み付くことができるか……試させてもらうっ……!」


「……はあ、よろしく」



 ……違った、血が滾ってたみたい。



「それでは、始め!」


「最初からフルパワーでいかせてもらう!!うぉおおおおお!!!!」



 序盤からの本気宣言と共に全身に力を込めるボルゴ・ブルンゼ。


 何をするのかちょっと興味が湧いて少しの間見守ると、全身の筋肉が音を立てて膨張し、顔が鬼みたいな形相になって、更に全身から赤褐色のオーラが出始めた。なにそれかっこいい。



「これが、我が武闘家人生で磨き上げた奥義!!“極限解放(オーバーリミッツ)”だ!!往くぞ!!咲森渚!!」



 物語の終盤で出てきそうな名前のスキルを聞いてちょっとワクワクした。


 そして、“極限解放(オーバーリミッツ)”の名の通りに超強化されたボルゴ・ブルンゼは凄まじく、地面を足で砕きながら2歩で私に肉薄してきた。


 だけど、その初動から私のいる場所に来るまでの動きは全部しっかりと見えてるし対応範囲内。


 振り下ろしてきた右拳を“縮地”で横に移動して、そこから直角にカクッカクッと“縮地”を繰り返して後ろに立つ。



「なっ!何処に……!!」


「ここ」



 私の姿を見失ったらしく狼狽えながら周りを見ようとしたボルゴ・ブルンゼの後ろから、刀を首に掛けるように突き出していつでも首を切れるようにする。



「……っ!」


「で、どうするの」


「……くっ、降参だっ……!」


「そこまで!勝者、咲森渚!!」

 


 審判の言葉と共に刀を鞘に戻すと、潔く降参してくれたボルゴ・ブルンゼが地面に膝を着いて悔しそうに地面に拳を叩きつけた。


 けど、それに対して何かしら行動を起こすことなくその場を後にする。


 負けた者に対して勝者が何かするのはご法度だ。それが同情や哀れみなら尚更、勝者がそう感じるのは勝者の高慢でしかない。


 という理由を自分の中でつけつつ、結愛の待つ観客席へと戻った。


 ちなみに、ボルゴ・ブルンゼは“極限解放(オーバーリミッツ)”の代償でぶっ倒れて医務室に運ばれたらしい。……医務室ってあったんだ。

咲森 渚 17歳 女


Level50


役職:女子高生


天職:魔剣士


スキル:ポーカーフェイスlv6 料理lv6 平常心lv7 気配察知lv6 痴漢耐性lv6 恐怖耐性lv4 健啖lv3 消化力強化lv2 身体制御lv6 魔力操作lv8 魔法操作lv3 縮地lv7 斬術lv7 剣術lv2 喧嘩殺法lv6 投擲lv3 疾風斬りlv5 居合いlv5 二連撃lv3 五月雨斬りlv3 十字斬りlv3 疾風衝lv5 疾風乱舞lv2


スペル:焔魔法ー焔の矢 焔の壁 焔の槍 焔の豪球 焔の鞭

氷魔法ー氷結の矢 氷結の盾 氷結の檻 氷結の棘床 氷結の欠片

合体魔法ー氷焔の光爆


ギフト:アイテムボックス ステータス閲覧 学習能力向上 刀剣の心得 魔法の心得 焔魔法 氷魔法

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