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これが私の生きる道  作者: さく
第1章第2部
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私と仲間と念願の物

 シキルトの街へ入るために外壁の門前にいる兵士達に身分証明のカードを見せる。その時に役職を見て驚かれたけど、昨日のカルロの話からある程度推測できていたことだったからスルーした。


 門を潜った場所は大きな広場になっていて馬車やそれに準ずるものがあちこちに向かって走っていた。多分この広場は門を潜った後で、事故とか起こさないようにっていう配慮なのかな。



「着いたー!さあ待ってなさいお米!」



 ビシィッと空に向かって指をさした結愛を微笑ましいものを見るような目で見て通り過ぎていく人達。とりあえずカルロと他人の振りをした。


 それから結愛と合流して今日から魔武闘大会が終わるまで泊まる宿屋を探す。それで見つけたのは、ほのぼの亭という何とも緩い名前の宿屋。

 この街の特徴であるレンガ造りで、看板には丸くなって寝ている猫が描かれている。その絵を見て猫ってこの世界にいたんだ、と変な感動が出てきた。


 とりあえず中に入ると、右側にカウンターがあって左側に食堂、真正面は一階部分の宿泊部屋が数室に二階に続く階段があった。



「いらっしゃいませー!!御用は何でしょうか?宿泊ですか?ご飯ですか?」



 なんとも元気で気持ちの良い声がカウンターから聞こえてきた。カウンターの方に視線を向けると、黄色く肩まである髪に緑色の快活な瞳の溌剌とした少女が私たちを見ていた。



「魔武闘大会が終わるまで宿泊できる処探してるんだけどさ、ここって大丈夫?ちなみに2部屋借りたいんだけど」


「んーとちょっと待ってくださいね……はい、大丈夫です!2人部屋と1人部屋でいいですか?」


「ええ、大丈夫よ」


「はーいわかりましたー!!魔武闘大会が終わるまでということなので、5日間ですね。それでは2人部屋が1泊2千ゴルドなので1万ゴルド、1人部屋は1泊1千ゴルドなので5千ゴルド…合計1万5千ゴルドになりまーす!あ、食事の方は別途料金が掛かりますのでご了承くださーい!!」



 へぇ、食事は別途料金が掛かるんだ。そう思って食堂の方に振り返ると壁にメニューが数個掛けられていて、それぞれに値段が書かれていた。キッポリングにシュルームモル、ブルメワーズにシンドロン等々名前から想像できない物が多数あるのは流石異世界だと思う。



「あ、壁に掛けられてるのはチャレンジメニューですので注文する際はお気をつけ下さい!」


「あ、うん……」



 そっか、チャレンジメニューだったの。シンドロンとか何処と無く化学臭がしてて不安だったんだけど、そっかチャレンジメニューだったんだ……。

 ということで快活少女からの説明が終わり、お金を先払いして私達は彼女の案内でそれぞれの部屋に向かった。


 案内された部屋は極々普通な感じで、特徴って言ったらベッドが2つあるだけとしか言いようがないほどに普通。あ、ひとつあったわ……このほのぼの亭は外はレンガなのに中は木張りだった。


 渡された部屋の鍵で施錠をして1階の食堂に向かう。途中でカルロと合流したから一緒に向かった。


 食堂に着き空いてるテーブルに陣取って備え付けてあったメニュー表を見る。


 鳥の唐揚げ、ハンバーグ、餃子、フライドポテト、揚げ豆腐、刺身、焼肉定食、魚定食、カレー、オムライス、チャーハン、ラーメン等々……何か日本の定食屋に居るような錯覚を感じるのは私だけかな。


 当然ここが日本じゃないのは知ってるけど、なんとなくそんな気分になった。



「……あれ、私日本に帰ってきたの?」


「違うわよ」



 私と同じようにメニューを見て言葉を漏らした結愛にツッコミを入れてから、日本に居る気分にさせるメニュー表を眺めて、それから近くを通った快活少女に注文をする。

 私は焼肉定食、結愛はカレー、カルロはカツ丼でみんなで摘む事が出来る餃子やフライドポテト、刺身に鳥の唐揚げを注文してふと思った。焼肉定食とかカレーとかカツ丼があるってことは、当然お米があるのよね……それはつまり、やっとお米が食べられるってことよね。



「そういえば、このほのぼの亭もそうだけど他の飲食店も此処と似たようなメニューなんだ。なんでも、300年前にいた英雄が今ある料理のほとんどを広めたって話らしいよ」


「ほえ〜そうなんだぁ。300年前の英雄グッジョブだよ!!」



 英雄の系譜=この世界の常識に疎いっていう方程式がミリニムでは成り立っているらしく、私達が英雄の系譜と知ったカルロは進んでいろいろなことを教えてくれている。


 本当に感謝。


 私が見てきた限りでは科学関係とかはそうでもないみたいだけど、食文化や衛生関係の文化ハザードが起きてるみたい。

 そういば王女が、この世界に来た時に科学云々って言ってたっけ。この時点で科学っていう概念がこの世界にあることに気づくべきだったわけね。私にとってはあまりにも当たり前すぎて、そこまで考えがいかなかったわ。


 ミルト村にいた時は愛美さんが料理を出してくれてたから違和感すら感じなかったし……。



「はーいお待たせしましたー!!焼肉定食とカレー、カツ丼に鳥の唐揚げ、餃子とフライドポテトと刺身でーす!どうぞごゆっくり食べてくださいね!」



 ポンポンと私たちの前に料理を置いて颯爽と去っていく快活少女を見送って、この世界に来てから願って止まなかったお米を視界に収める。


 ツヤツヤな白色で光をてらてらと反射してて、温かい湯気からほのかに甘い匂いがする。


 逸る身体を押さえ付けて茶碗を持ち、じっくりと炊き上がった白米を目で楽しんでから箸で掬い口に運ぶ。


 口に入れた瞬間に感じる米特有の甘みを感じながら咀嚼すると、唾液に含まれるアミラーゼがデンプンを分解して更に甘みを強調する。



 しっかり咀嚼した後にこくりと飲み込み、もう一口口に運ぶ。


 そして口に入れてすぐに、味噌汁を啜ってご飯と一緒に噛んでいく。


 味噌汁の香りが嗅覚を満たし、味噌汁の塩気とご飯の甘みが絶妙にマッチして絶妙な演奏(ハーモニー)を感じながら飲み込む。



 今度は、焼肉定食のメインである焼肉をご飯に巻く。


 タレで光る焼肉でご飯を優しく包み込み、焼肉のタレが新雪のように白いご飯をその色で染めていく。


 その様子を目で楽しんでから、肉で巻いたご飯を口に持っていく。


 お肉特有の野性味とタレのコク、そして安定のご飯の甘みが混ざり合い旋律の三重奏トリオ・オブ・メロディーを奏でていく。



「なんか、渚の顔がこれまでにないほど蕩けてるけど……」


「あ〜うん、よっぽど嬉しいんだね〜」



 なんて会話が聞こえてきたけど、今の私はそんな事に構っている暇はない。


 今私の私には、目の前にあるおかずの品々とご飯とが奏でるメロディーを存分に味わうという大事な使命があるんだ。


 唐揚げのサクサクとした食感と特有の病み付きになる味がご飯と絡み合いワルツを踊り、私はその踊りにただ酔いしれて……餃子のモチモチとした皮とニラとお肉、生姜の刺激的な味とキャベツのシャキシャキとした食感がご飯と混ざり合い輪舞曲(ロンド)を奏でる。



 ああ……ここが、天国なのね……。




 ーーーーー



「食べすぎた……」


「まあ、あれからチャーハン、ラーメン、カツ丼、魚定食 、カレーもおかわりしたらそりゃあそうなるよね」



 あれから本能の赴くままにご飯を胃に納めた私は、宿泊する部屋のベッドでダウンしていた。


 お腹がはち切れそうな程に苦しくて、少しでも動いたら吐きそう。


 でも、後悔はしてない。


 神にすらお祈りして願ったお米にありつけたんだもの、これで後悔しているなんて言ったらバチが当たるわ。……でも、本当に苦しいから今日はもう動きたくない。



「私……今日はもう動けそうにないからもう寝るわ」


「あ、うん。あんまり苦しいようだったらちゃんと吐きなよ?私はカルロ少年と明日の日程詰めてくるから」


「ごめん……」


「ううん、何かこんな渚見るの新鮮だし、偶には私も仕切りたかったし、丁度いいよってね。それじゃ私行くね」



 妙に温かい笑顔を私に向けてから部屋を出た結愛を見送り大人しくベッドの中に収まる。明日には消化されてることを願って目を閉じる。


 けど、暫くの間お腹の苦しさで寝付けることはなかった。




 ーーーーー



 翌朝……私はお腹が地獄の亡者のような唸りを上げたことで意識が覚醒した。


 身体から発せられる危険信号に従い、お花を摘みにダッシュで部屋に備え付けてあるとある個室へと“縮地”を駆使して駆け込む。


 それからどれくらいの時間が経ったのかはわからないけど、私にとってはとても……とても長く感じたお花を摘む作業は終わり、個室から無事に出ることができた。


 とゆうかこれ、絶対に胃もたれ起こしてる。じくじくと胃の辺りが痛い。



「はぁ……反省ものね……」



 胃の辺りを手で押さえながら独りごちて、そのまま身支度を開始する。


 顔を洗って歯を磨いて制服に着替えて、刀を腰に差して準備完了。


 何となくこけた気がする頬は、放っとけばそのうち治るだろうからこの際無視しておく。第一化粧品なんて物持ってないから隠しようがない。……あるとすればマスクかな。持ってないからつけれないけど。


 身支度が終わって暇だからベッドの上に戻って、隣のベッド寝ている結愛を見る。ふんにゃりとした顔で笑いながら身体をくねらせてて、一体どんな夢を見てるのか非常に気になる。


 結愛の寝姿から視線を外して、丁度この宿屋が面している道を見ることが出来る窓から外を覗くとまだ薄暗く……その薄暗い道を黒装束の人が1人滑るように走ってた。……うん、暗殺者かそれに類する者かな。


 今からターゲットを狙いにいくのか、それとももうターゲットを仕留めててその帰りなのかわからないけど、もう少し周りに気を配ったほうがいいと思う。


 だって私、バッチリ黒装束の人見ちゃったし。


 とまあ、そんな事がありつつもそれからは特に何もなく、ぼーっと外を眺めてたら結愛が起きた。



「おはよ〜渚」


「おはよう、よく眠れた?」


「うん……ってそれはこっちの台詞だよ。お腹大丈夫?……ってあまり大丈夫じゃなそうだね」



 起きて早々私の心配をしてくれる結愛、私が胃の辺りを手で押さえてるのを見て私の状況を理解したらしい。



「ん、と……はいこれ、昨日厨房のおばちゃんから胃薬もらったんだー。かなり苦いらしいけど頑張って飲んでね」



 そう言って渡してくれた紙包みの中に入ってたのは濃い緑色をした粉末。何となく抹茶や茶葉を粉末にしたものとかに見える。


 物凄い苦いらしいということで、深呼吸してから覚悟を決めて口に入れる。


 途端に口の中がキューッとなる感覚がして、途轍もない苦味とエグミが私の口の中を蹂躙し始めた。


 例えるなら津波が大地を侵食する感じ。



 予想以上の味に、慌てて前もって用意していた水を一気に飲み込み粉末を押し流すも、口の中に残った粉末の生き残りが引き続き口の中を蹂躙してる。


 それから何度か水を飲むことで口の中に残ってる粉末を流して、やっと一息ついた。ああ……お腹がタプタプいってる……。



「……ふぅ……」


「あっはは、渚何か可愛い」



 粉末との侵略戦争に打ち勝って見事に撤退させる事に成功した私を見て、結愛がいつもより控えめに抱き着いてきた。


 多分私の事を気遣っての行動で、それがなんとなくむず痒い。


 少しの間結愛とくっ付いてると扉がノックされる音とともにカルロの声が聞こえてきた。



 どうやら結構時間が過ぎていたらしい。慌てて支度を終えた結愛と一緒に扉の外にいたカルロと合流する。



「2人共おはよう、渚は……お腹大丈夫なの?」


「ええ、お陰様でなんとか」



 心配そうな目で私のお腹を見るカルロにそう答えて1階の食堂に向かう。



「おはよーございます!お腹大丈夫ですか?」


「ええ、なんとか」



 食堂に着くとそこで給仕をしていた快活少女が私を見てそう聞いてきた。


 その事に微妙に恥ずかしくなりながら答えて空いてる席に着く。そして通りがかった快活少女に注文をする。私はお粥、結愛は卵サンド、カルロはハンバーグを注文した。


 あの薬で多少はマシになったけど、流石にまだきついからお粥を選択。でも、お粥はお粥で美味しいから問題ない。ただ、食べ過ぎに注意しないと。


 その後朝食を食べ終えて、魔武闘大会にエントリーするために会場へ向かった。




咲森 渚 17歳 女


Level50


役職:女子高生


天職:魔剣士


スキル:ポーカーフェイスlv6 料理lv6 平常心lv7 気配察知lv6 痴漢耐性lv6 恐怖耐性lv4 健啖lv3 消化力強化lv2 身体制御lv6 魔力操作lv8 魔法操作lv3 縮地lv7 斬術lv7 剣術lv2 喧嘩殺法lv6 投擲lv3 疾風斬りlv5 居合いlv5 二連撃lv3 五月雨斬りlv3 十字斬りlv3 疾風衝lv5 疾風乱舞lv2


スペル:焔魔法ー焔の矢 焔の壁 焔の槍 焔の豪球 焔の鞭

氷魔法ー氷結の矢 氷結の盾 氷結の檻 氷結の棘床 氷結の欠片

合体魔法ー氷焔の光爆


ギフト:アイテムボックス ステータス閲覧 学習能力向上 刀剣の心得 魔法の心得 焔魔法 氷魔法

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