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これが私の生きる道  作者: さく
第1章第1部
1/19

私とクラスメイトは異世界へ

初めての投稿です!



 チャイムの音が鳴り響き、授業の終了を告げる。日直の挨拶とともに教室を出た教師を見送って私は、中庭で昼食を食べるために弁当を取り出して教室を出ようとした。



「渚、ご飯食べよ!」



 教室を出ようとした私の行く先を遮って声を掛けてきたのは自称ナイスバデー、他称ツルペタロリの伊藤結愛(イトウ ユア)

 身長148cm、ふわふわな茶色の髪をショートボブにしていて丸くて大きい茶色の瞳が特徴的な女の子。小さくて可愛らしい見た目とは裏腹に、豪胆な性格でスケベオヤジを思わせるような行動をする。


 そのお陰なのかクラスの女子はセクハラという存在に慣れつつある。


 趣味はエロ本を読むこと、特技は怪我の手当て。怪我の手当てが特技の理由は、それを盾にして女の子の身体を触りまくりたいという不純な動機で始めて、気が付けば他の何よりも上手になっていたかららしい。


 渾名はセクハラ魔神、本人曰く将来的にはセクハラ大魔神に成長する予定らしい。



「いいけど、触らないでね」



 別に断る理由もないから触らないことを条件に了承する。そうじゃないと、常に身体中をさわさわと撫で回してくるからだ。



「そんな殺生な……!」


「殺生でも何でもない」



 ショックを受けてる結愛の横を通り過ぎようとしたその瞬間、教室内の床に光る文字が走り金縛りにあったかの様に動くことが出来なくなった。


 何、これ。何で動かないの?この光る文字は何なの?というか、こんな非現実なことって実際にあるんだ。



 一瞬の混乱の後に変な感心が浮かんできた。状況を確認しようとしても、私は教室に背を向けてる状態だから何が起こってるのかまるで理解出来ない。


 ただ一つ確実なのは、この教室が外界との接触を断ったということ。だって、さっきまで見えてた廊下や窓から見える外の光景が白一色になってるし、こんな異常事態が起きてるのに誰もこの教室に来ないんだから。


 妙に冷静な頭で家族に別れを告げる。多分、もう会えないと思うから。出来れば、しっかりと別れの挨拶を交わしたかった。


 白い光が強まり、色が白に変わっていく。出来ればまた、此処(地球)に戻りたいな。





 ーーーーー





 白に染まった世界が少しずつ色を取り戻していく。それを瞼越しに感じ取った私は恐る恐る目を開けた。


 あれ、私目閉じてないよね?


 白い光でダメージを受けた目に痛みを感じながら、そう考えつつぼやけていた世界が少しずつ色と形を明確にしていく。

 そしてハッキリと網膜に映った光景は、学校の体育館並に大きい石造りの部屋と呆然としているクラスメイト、そして私達を囲むように立っている白いローブを着て杖みたいなのを掲げた変な人達。



「ここは……?」



 1人のクラスメイトが小さく掠れた声でそう呟いた言葉は、だだっ広いこの部屋で不思議と浸透するように響き渡った。



「おお、勇者様方が呼びかけに応えて下さった!!」


「これで魔王の脅威を退けることができる!!」


「勇者様万歳!!」


「「「万歳!!万歳!!」」」



 クラスメイトの呟きがきっかけとなったのか、途端に騒ぎ出す白いローブを着た人達。それはさながら、怪しげな宗教団体が神やら悪魔やらの降臨の儀式をして本当に降りて来たかのような発狂振りを思わせて気持ち悪い。


 実際にクラスメイトの大半がこの変態集団の行動を見て盛大にビビってる。かくいう私もビビってる。



 非現実的な事が起きて、意味不明な集団に囲まれてる。そして、其処彼処から聞こえてくる勇者や魔王という不穏な単語。


 これはあれか、ネット小説とかで度々見かける集団転移系のあれか。


 人数の差はあれど、そこそこの人数が異世界に呼び出されて勇者として祭り上げられる中、1人か2人が不遇ポジションでダンジョンや外への遠征中に裏切られて死に追いやられ、その結果強大な力を獲得して無双していくあれか。

 出来れば私は強くもなく弱くもない、列で言えば真ん中辺りの特に目立たないポジションがいい。



 そんな事をつらつらと考えていると発狂する白ローブの集団から1人前に出てきた。1人が出てくると共に白ローブの発狂は治まった。

 私を含めたクラスメートと白ローブ集団の視線が前に出てきた白ローブに集まる中、被っていたローブのフードを取って顔を露わにした。


 白ローブの顔を確認したクラスメイトの男子達が妙に熱のある溜息を吐く。


 それもその筈、ローブを着ていて長さはわからないけど緩いウェーブを描き金色に輝く髪、パッチリとした二重に垂れ気味の青色の瞳、鼻筋は通っていて桜色の唇はぷるんとして瑞々しく肌は一つのシミもなく白い。


 有り体に言えば絶世の美少女と言っても過言ではない少女がそこにいた。



「勇者様方、呼び出しに応えて頂きありがとうございます。私はエルフィエール王国第3王女、シルフィリア・イデス・ヒュリアーリムと申します」



 そう言って軽く頭を下げた第3王女は次々とこの世界の特色や、この国の事、なぜ私達が呼ばれたのかの理由を軽く説明した。



 要約すれば次の通り。


 この世界はミリニムという名で呼ばれ、人種は私たちの様な人族、エルフやドワーフといった亜人族、そして人族と敵対している魔人族がいる。


 他の生物としては、魔物と呼ばれる体内に魔石を持った生物がいる。


 この世界は、科学と呼ばれるものがない代わりに魔法というものがある。魔法は人それぞれで違い、例えば火の球を出すのに呪文が違えば火の玉の形自体も楕円形や円形等と色々あるとか。


 ただ、魔法はギフトという先天的に持っている特殊能力がないと使えないとか。


 ちなみに、この世界の住人は1〜2個、私たちの様に召喚された者や英雄と呼ばれる者は4〜7個持っているものらしい。


 そして、技術の集大成みたいなものがスキルと呼ばれている。それらはレベル制でLV1〜10までで表記され、数字が多くなる程スキルは強くなっていくとのこと。


 この国、エルフィエール王国は人族が主の国であるとのこと。それ以外はただのお国自慢みたいになってて聞き流した。


 最後に私達が呼び出された理由は、王お抱えの占い師が魔王の復活を予言してそれに対抗する為に呼び出したとか。



 王女の話を聞いたクラスメイトの反応は大きく分けて2つに分かれた。喜び勇み興奮する者と、無理やり連れ出されたことに怒り反発する者。

 私はというとどちらでもなく、ただ周りを見ているだけ。強いて言うなら傍観組?



「ねえ、渚……これってファンタジー展開だよね!?」



 そう言ってきたのはいつの間にか私の腰に張り付いていた結愛。その瞳は無駄にキラキラしていて、言わなくてもこの先の誰もが一度夢見たであろうファンタジー展開にワクワクしているのがわかる。



「そうなんじゃない?」


「そうなんじゃない?って、わくわくしないの!?ファンタジーだよ!?魔物が闊歩してて剣と魔法で冒険してくファンタジーだよ!?わくわくするでしょ!?ドキドキするでしょ!?濡れてくるでしょ!?」


「わくわくしないし、ドキドキもしないし、ましてや濡れないわよ」



 形相を変えて吠える結愛の顔を手で押さえて周りを見る。どうやら話が一段落したようでこれから場所を移して、身分証を作りに向かうらしい。



 私達を囲むように白ローブの人たちが配置され、王女は私達を先導する為に前を歩く。

 そんな王女と話をしている人達がいるけど、あれはとんでもないイケメンとその仲間達だ。

 困ってる女の子を助けてはハーレム要員を増やしていく、成績が良く運動神経が抜群な神木優希(カミキ ユウキ)と愉快な仲間達は王女に積極的に話を振っている。



 いかにも主人公な彼のことだから、纏まった情報を皆と共有しそうな気がする。それ自体は悪いことじゃなくてむしろ良い事なんだけど、多分その纏まった情報は綺麗な情報だけだと確信する。

 何故なら、彼の耳は人の悪い話なんてすり抜けるからだ。耳に入ったとしても美化するから変な風に認識するのが彼の特徴である。


 どうでも良い事だけど、私は彼等とは全くと言って良いほど関わりがない。というのも、私の交友関係が結愛以外ないからだ。

 友達ができない事に寂しくなりつつその事を結愛に相談したら、私から放たれる冷たい雰囲気とほとんど笑う事のない顔のせいらしい。あと、そっけなさ。

 私自身は冷たい雰囲気なんて出してる自覚はないし、そこまで笑わない事なんてないと思ってたけど結愛がいう限りでは全くの真逆だった。





 閑話休題





 最初にいた部屋から出た私達は王女の先導の元、10分程歩いて目的地に着いた。

 その10分間の間に近くにいた白ローブの人と話をして情報を聞き出していた結愛は中々強かだと思う。



「ここでは身分証明となるカードを作ってもらいます。まず、この何も書かれていないカードに触れてもらいその後、血を触ったカードに垂らしてください。そうすれば、現時点でのあなた達の情報が記載されます」



 王女の説明と共に周りのローブがカードを配り出す。当然私にもカードと、血を垂らすように針が配られた。

 クラスメイト全体から戸惑う雰囲気が漂う中、神木優希が勇気を出して血をカードに垂らした。


 血の降りかかったカードは淡く輝き、数秒の後に消えた。


 それを見た他のクラスメイトも後に続くようにカードを作っていく。私も波に乗るようにカードに血を垂らした。そして輝きその輝きが消えたカードを見てみる。


 ーーーーー


 咲森渚(サキモリ ナギサ)


 年齢:16歳


 役職:女子高生


 天職:魔剣士


 ーーーーー



 カードに書かれていたのは必要最低限だと思われる内容だけ。それにしても…そうか、私の天職は魔剣士なのか。魔法と剣の両立が出来るのは戦闘の幅が広がるね。



「ねぇねぇ渚、渚の天職って何だった?私は治癒術師だった」


「治癒術師ね、私は魔剣士よ」


「魔剣士!?うっわぁいいなぁ、正に厨二病の心が躍り狂うじゃない!私の治癒術師と交換しない?」



 抱き着いてきながら羨ましがる結愛の相手をしながら周りの声に耳を澄ませる。

 剣士、錬金術士、薬師、結界師、槍士、魔闘士等々千差万別な天職があるらしい。ちなみに神木優希の天職は、聖騎士らしい。

 そこまで確認してると、ドッと部屋の隅が盛り上がった。と言ってもその盛り上がりは賞賛ではなく嘲りが多分に含まれたもの。



 その嘲りの対象はクラスでも地味で目立たなかった村本広(ムラモト ヒロシ)で、彼の天職はーー、つまりは無し。本来全ての人間が何かしらの天職がある中で、村本広だけが天職がない状態。


 カードの不調かもと王女の提案で数度カードを作り直すも結果は同じ、村本広には天職に表示されるものはなかった。

 王女と周りの白ローブが何かを考える中、数人のクラスメイトが村本広を虐めているのを結愛と眺める。



「ねぇ渚、助けに行く?」


「いってらっしゃい」


「えぇ〜、1人で行くの?面倒だからヤダ」



 村本広、彼とは話した事もなければ目があった事もない完全な赤の他人。親しい間柄ならまだしも、赤の他人を庇う必要性が私に感じられない。

 結愛は村本広だけじゃなく男自体に興味がない。彼処で虐められているのが女の子だったら恐らく風の速さで救出に向かってる。



「皆さん、お疲れでしょう。今日のところはしっかり休んで下さい。明日からは魔法や戦闘技術の基礎訓練を行います。それらが終了次第、国王に挨拶をして頂きます。それでは、この者達が案内しますのでそれに着いていきますようお願いします」



 よく通る声で話した皇女の言葉に従い、白ローブに着いて行く私達。



「渚渚、さっき聞いたことなんだけどさ、私達のように召喚された人はステータス閲覧っていうギフトを持ってるんだって。それを見れば自分の持ってるスキルやギフトを見ることができるらしいよ?」


「そう、貴重な情報をありがと」


「いやそんな〜」

 


 てれてれと照れてる結愛を眺めながら内心でステータス閲覧と呟いてみる。



 ーーーーー


 咲森 渚(サキモリ ナギサ) 17歳 女


 Level10


 役職:女子高生


 天職:魔剣士


 スキル:ポーカーフェイスlv5 料理lv6 平常心lv5 痴漢耐性lv6 斬術lv3 喧嘩殺法lv4 投擲lv2


 ギフト:アイテムボックス ステータス閲覧 学習能力向上 刀剣の心得 魔法の心得 焔魔法 氷魔法



 ーーーーー



 ……ああ、まぁ……とりあえず私は運が良いらしい。ギフトが7つあって更にその7つは非常に有用なものばかりだ。焔魔法や氷魔法とか凄い強そう。

スキルに関しては何も言うまい。痴漢耐性が一番高レベルだとか、斬術とか何やら物騒なものがあるけどそれはこの世界で生きていくなら逆に必須なものだ。是非ともレベル上昇してほしい。


 明日からは魔法等の戦闘技術の基礎訓練を開始するらしいから、頑張って鍛えて強くならないと。

 魔王なんて如何にも強そうな奴と戦わされるみたいだから余計にそう思う。



 白ローブの1人が私が泊まる部屋まで案内してくれた。早速中に入ると其処はまるで高級ホテルのような豪華な部屋だった。


 部屋は10畳程でふわふわな絨毯張り、キングサイズのベッドがあって煌びやかな調度品や絵画が壁に飾られている。部屋の中にはもう2つ扉があって、1つは洗面台と浴室があり、もう1つはトイレ。食糧さえあればずっと生きていけそうな気がする。



 部屋の観察が一通り終わると扉がノックされた。扉を開けると其処にいたのは、本物のメイドって感じの人がカゴを持って扉が開けられるのを待っていた。



「なに?」


「お疲れのところすいません。こちら、替えのお召し物と身体拭きでございます。洗濯物は翌朝このカゴの中に入れて洗面室に置いていただければ、お洗濯させていただきます」


「そう、ありがとう」


「いえ、それではおやすみなさいませ」



 早速カゴの中を確認してみる。中に入ってたのはバスタオル、パンティ、サラシ、ネグリジェ、そして動きやすそうな上下の服に靴の数々。

 部屋にあるテーブルに出した物を置いてバスタオルと下着、ネグリジェを持って浴室へ向かう。

 30分程で上がって髪を洗面所にあったドライヤーっぽいもので乾かす。



 このドライヤーっぽい物やその他地球の品を思わせるものは先代の勇者が広めた物らしいと、第3王女が話した数ある自慢話の中にあった内容を思い出す。

 先代の勇者よくやったと心の中で拍手を送りながら眠りに着く。さあ、明日から色々頑張らないと……なんて、現実味のない出来事に思いを馳せてみた。

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