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短編集

見えない雪は降り続ける

作者: 影都 千虎

 天異病。

 そういう病気があるらしい。

 なんでも、実際の天気とは違う天気が見えて、感じてしまうのだとか。例えば、実際は晴れているのに雨が降っているように見えて、実際に雨が降っていると感じてしまったり、或いは、どんよりと曇った空を、雲ひとつ無い青空に見えてしまって、太陽に照らされて暑く感じてしまったりする感じだ。

 よくわからない。

 本当に、よくわからない病気だ。

 何がどうしてそうなってしまうのか分からないし、本当にそんな症状が出るのかもよくわからない。お互いにお互いの頭がおかしいと感じるだけで終わるだけではなかろうか。

 実際に、その天異病の患者として認定されている僕がいうのだから間違いない。


 僕はどういうわけか、雪が見えた。

 どういうわけかもなにも、雪が見えるのだから、冬になれば雪は降るものだと、当然のように思っていた。

 だが、現実は違ったらしい。

 どうやら、この僕が生まれ育った町は絶対に雪が降ることはない土地だったらしい。

 だから、雪が降ったとはしゃぎ、雪で遊ぼうと誘い、雪で上手く歩けず、雪に足をとられてよく転び、自主的に雪掻きをこなす僕のことを、周囲は異物を見るような目で見たものだ。

 そんなものがここにあるわけがないのに、この子は何を言っているのだろう。

 そんなものがここにあるわけがないのに、この子は何をしているのだろう。

 気持ちが悪い。気味が悪い。

 異端だ。頭がおかしい。

 気が狂っている。病気だ。

 散々な言葉が、散々なのはこっちだと言いたいくらいに浴びせられた。そして、とうとう母親に病院へつれていかれた。その結果、僕は天異病という訳のわからない病気だと診断されたのだった。

 天異病だと診断されてから、僕は入院生活を続けさせられている。

 解明ができない、非常に珍しい病気だから、丁度いいところに研究材料が手に入ったと判断したのだろう。

 まあ、僕としても、なにもしなくとも三食寝床つきの施設が提供されるのは有り難いことだからいいのだけれど。


 この季節になると、よく人が死ぬ。

 それは毎年毎年、冬だけに現れる連続殺人犯として大きく取り上げられていた。

 なんでも、人の頭を何らかの鈍器で思い切り殴り殺すのだとか。まったくもって物騒な世の中だ。

 被害者に外傷はある。だが、凶器を特定することはできない。そして、目撃者もいない。

 被害者はみな、突然その場に倒れ、そのまま死んでしまっているという話もある。流石にそれは荒唐滑稽にも程があるのだけれど、僕は人のことを言える立場ではないので慎んでコメントを控えることにしよう。ただただ、怖いなぁ、という感想しか僕は持たない。

 一面に広がる白銀の世界。

 僕にしかこの世界は見えていないのだが、きっとこの世界でも同じように人は死んでいるのだろう。そのとき、僕の目にはそれはどう映るのだろうか。天気すら常人とは違ったものを映して感じてしまう僕は、目の前で死んでいく人や何やらを見たとき、やはり人と違うものを見てしまうのだろうか。

 通常を見てみたいな。

 なんて叶わぬ思いを胸に抱きながら、僕は病室の窓から外を見た。

 病室の窓からは雪で真っ白に染められた大きな道路を沢山の車が走っている様が見える。どの車も、いつもと変わらずスピードを出している。

ーーと、ここで突然、一台の大型トラックが突然スリップし周囲の車を巻き込みながら横転した。この道路では珍しくない、比較的大きな事故だ。

 嫌なことに、この病室に居続ける間にそういった事故も見慣れてしまった。

 僕の目には、トラックが雪にハンドルをとられて横転したように見える。でも、本当は違うのだろう。雪によって全てを白に染められてしまう僕の目では、真実はわからないけれど。

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