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1:台風の海に出るという事

「やばい、思ったより風が強い! しかも、こんな時にセッティングをミスってる」


 誰に言うでも無く、俺は一人呟いた。


 セイル(帆)を引く手に感じる予想以上の強烈な風のパワーに、それを真っ先に感じる。

 体ごと風下へ吹き飛ばされそうになるのを、必死で耐えた。


 俺の乗ったスラロームボードは凄まじい加速を見せて、あっという間に出てきた岸は遙か遠くになっていた。

 正直なところ…… 想像以上の風のパワーで、暴れようとするボードのコントロールが手に負えなくなりつつあった。


 セイル(帆)のセッティングが合っていない事もあって、制御するのに必要な力のバランスが崩れている。

 風上側にある右手の握力が、疲労で徐々に無くなって来ているのが如実に感じられた。


 ずっとフルパワーで握り締めているのだから、それも当たり前だ。

 このままでは、握力を無駄に消耗し尽くしてしまうのも時間の問題だろう。


一旦岸に戻ろうと風上旋回に移るべくボードとセイルを操作した時に、不意打ちで突風ブローを喰らってバランスを崩してしまう。

 そして、結果的に俺は荒れた海に落ちた。


 一旦海の中で一息吐いて、焦る気持ちを落ち着けようとする。

 自然相手に強がってみても、甘えても媚びても言い訳をしても無駄なことは、今までの経験で痛い程判っている。


 だから、その時々で自分に出来る最善の事をするしかない。


 潮と風に流されて、見る見るうちに遠ざかって行く出艇場所。

 気落ちする俺の脳裏に、大事な女性ひとの笑顔が浮かんだ。


 気を取り直した俺は、翻弄しようとする風の力を逆利用して再びボードの上に飛び乗る。

 そして遙か遠くに見える岸に向かって強風のもたらす強烈な加速に身を任せ、ひたすら邪魔な波を蹴散らして突き進むボードの上で、元居た場所へ戻る事だけを考えていた。


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