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1章 3話  オーラ×魔法×異世界

 夕食を終えた正也とセイラは、リリナと海人が来るまで各々の準備をしていた。

 セイラの準備は簡単で、自分の専用OBMとオーラで作った端末に、正也と同タイプの端末。

 後は、これもオーラで圧縮しているが、各種着替えと勉強道具一式。

 これで何処へ行っても、1年程度なら帰れなくても大丈夫な筈だ。


 対して正也は物凄く多い。

 専用OBMこそ無い物の、セイラのOBMをメンテナンスする為の機材と端末一式。後色々な各種オプションを旅行バックに入れ、セイラに序に圧縮して貰っている。

 更に、先ほど端末を見ていて気付いた事だが、向こうでは何やらこちらと同じような機械が有るようで、色々と飛び回っているのが惑星の上空から見えた。

 しかも、それとは別に明らかに地球上では絶滅したはずの恐竜の様な化け物や、空を飛んでいる化け物が居る様で、その対策の為に、急遽権蔵にスタンガンと圧縮型の空気銃、他に武器となる様な物を詰められるだけバックに入れている。


 そんな風に準備をしていると、リリナと海人が夕食を終えてセイラ達の個室にやって来た。

 権蔵たちと正也の家族は未だ色々とやることが有るらしく、1時間後結果を報告せよとの命令らしい。


「よし、じゃあお嬢様?少し離れていてくださいね?何が起こるか分かりませんから」

「分かりました。ですが、ヤバいと思ったら迷わず私の手を掴んでください。それで如何にかなるかは分かりませんが、何もしないよりはマシです。…良いですね?」

「…了解です…では」


 そう言って正也は端末を操作する。そして、全員が見れるように、惑星の表示をポリゴン式の球体にし、全ての表示を展開させる。


「…なに?マジックブレインシステム…って、昔流行ったアニメの魔法の事?この惑星では魔法が使えるって事?」


 表示のMBSマジックブレインシステムの説明に驚きを露わにする海人。

 正也もその説明にはビックリだったのだ。

 しかも、もう少し読んでいくと、先ほど中で見えていた機械の様な物も地球のOBMに似て非なるMBMと言う魔法をオーラの代わりに用いて使うマシンらしい。

 そして、国もあり、この謎のデータの海を作った者も(既に死んでいるらしいが)居たという事が分かった。

 どうやらこのブラックボックスの目的を調べる事は、中に入らねばどうやっても分からないらしい。

 まあ、どちらにしても行くことは大前提だったので、その事は変わりないが…

 そして、粗方調べ終わったので、いよいよ出発する事になり、『ゲート発生』を押すと…


 ヴーン……という低い音と共に球体のポリゴンから黒い空間が出てきた。

 その黒い空間は瞬く間に正也を包み込み…


「正也!手を掴んでください!!」


 という声と共に小さい、しかし握り慣れた手が正也の手を掴むのがハッキリと分かった。

 そして、次の瞬間には視界が黒に覆われた…



 ☆ アステリアのとある国の夜の草原



 正也が気が付いた時には真っ暗闇の草原に放り出されていた。

 いや、その表現は少し語弊があるか?

 何故なら、あのセイラが正也の為にオーラを使ってキャンプ道具を用意してくれていたんだから。

 どうやらあの後正也は気を失っていたらしい。

 そして、正也の気が付くまで拙いながらも正也の見よう見まねでオーラを使いながら器用に何本もの手を使ってテントを建てていた。

 そして、正也が気が付いたことを悟ったセイラは勢いよく正也の顔に己の顔を近づけ


「気が付いたんですね?!正也ちゃん!良かったです~!!」

「…心配掛けたみたいで申し訳ありません、お嬢様」

「…ここには誰も私たちを知っている者は居ませんから、二人の時の話し方でお願いします…」

「……」


 泣きながら縋り付いてきたセイラをあやしていると、そんな事を言って来た。

 イキナリの申し出に一瞬硬直するが、確かにセイラの性格と、今の状況なら、そうした方が良いだろうと、正也も苦笑しながら言われた様に話す。


「分かったよ、セイラ。…しかし、ここはどの辺だ?何か目印に成る様な建物はない?」

「それなら来る時のポリゴンの大体の地図と今の草原の広さからして、何処かの大陸の真ん中辺りだと思います」

「いや、それは見れば解かるから。問題は…って端末を見れば解かるな」

「はいです!」


 そうして、端末を見ようとするが…


「…色々と突っ込みたいのですが、充電はしましたか?」

「…やったはずだぞ?っていうか、セイラも見てただろ?それにセイラの一般普及型の端末を見てみろよ、恐らく俺と同じはずだ。…いや、同じでないとおかしい」

「ムキに成らなくても良いですよ?」

「いや、ムキに成ってるのでは無くてな?…まあいい、試に見てみろ」

「はいです。…って、ホントに使えませんね。何故でしょう?オーラのタイプは使えると思いますが…」


 イキナリ面倒な事になったが、端末が使えないのは正也とセイラの一般に普及しているタイプのだけで、セイラのオーラ式端末は使える筈なので、其方を見せて貰う事にする。


「じゃあ、セイラの見ようか?」

「…笑ったら嫌ですよ?」

「って、何をダウンロードしてるか気になる言い方だな…」

「Hなサイトです」

「マジで?」

「性に興味深々な年頃なのです」

「それなら言ってくれれば…」

「ウソです。唯の熊の人形のカタログです。…まあ、さっさと見ましょうか」

「ああ」


 って事でセイラは、己のオーラ型の端末を特大サイズのモニターに切り替え、自らの分身体であるオーラ式ミクロン探査機を半径10キロに飛ばす。

 

 それから10分位正也の膝で休憩していると、程なくして情報が入ってきた。


「…来ましたね。…これはまた、随分広い大陸のようですね。半径10キロで海岸が見えないとは…正也ちゃん、どう思いますか?」

「…どうだろうな。いっそココにセイラのオーラマーキングをして、何時でもOBMで帰れるようにしてから少し遠出するか?」

「それが良いでしょうかね…。……ああ、忘れてました。正也ちゃん」

「ん?何だ?」

「先ほどは起きるまで見張っていたので疲れました。なので次は正也ちゃんが見張っていてください。私はその間に正也ちゃんの膝枕で仮眠をします。…揺れる位なら良いですが、動かれたら嫌なので、武器は手元に置いてから胡坐を掻いてください。縦に寝た方が良いのです。急激な角度は首が痛いのです」

「…分かった、ちょっと待ってろ?」


 色々と言いたいこともあるが、先ほどは確かに俺が寝ていたので今度はセイラの番と言うのは分かるから、渋々ながら武器を用意して枕代わりの準備をする。

 そして、枕に成って数分後…


「…ん…ん~…」


 静かに寝息を漏らし始めた。

 そして、セイラが寝ている間、シャッフル式の充電地をシャカシャカ発電させながら、十数分した所で、どうやらお客さんが来たようだ。

 そのお客さんは見た感じゴリラだったが、背丈があまりにも飛び抜けたゴリラだ。

 この御客さんがどのような種類のお客さんかは分からないが、一応武器に手を伸ばしておく。

 すると、此方の状態を確認したゴリラは後ろに隠しておいた子供の様な子ゴリラを4匹横に出すと、正也とセイラを囲む様に展開した。

 そして、一気に距離を詰めてくる。

 その様子に、気は進まないが殺すことも覚悟しないと駄目だと思う事にした正也は、手元にあった圧縮銃を素早く操作し、今にも喰いかかって来そうなって言うか、もう襲ってきている子ゴリラに向かって発射。

 バシュ!っという低い音が鳴り、その直後


「ぎゃ…ぎゃぎゃ…ギャ!!…」


 と子ゴリラが地に臥した。

 その子ゴリラの哀れな姿に、一瞬呆けた様な顔になっていた親ゴリラは正気を取り戻すと、今度は残った3匹で一度に襲いかかってきた。


「仕方ない。セイラ、ちょっと揺れるぞ?」


 そう一言聞こえていないであろうセイラに断りを入れて、お姫様抱っこをして立ち上がる正也。

 そして、3匹が同時に正也の居た場所に


「「「ぎゃぎゃぎゃー!!!」」」


 と攻撃をした時…ドーン!!っという土埃が巻き起こり、次の瞬間には


「「「---」」」


 ……バタン!っと3匹が同時に地に臥した。

 3匹とも首が辛うじて繋がっている位の完全に死んでいる状態だ。

 そして、3匹のゴリラの傍には正也が手に磨き上げられた包丁を持ち、その刀身を血に濡らした状態で立っていた。

 セイラは何処に行ったかというと、旅行鞄の横に、着替えを重ね、徐々に高さが変わるように調節した状態で寝かせてあった。

 どんだけの早業だ!…とも思わないでもないが、正也はセイラのようにオーラが使えない分、妹と共に主の身を護れるように幼少の頃よりあらゆる経験を積んでいる。

 その為の最終段階で中学も途中で辞める事にまで成ってしまったが、そのお蔭でこの強さを手に入れられたのだから、正也自身は後悔していない。

 妹も今頃は最終段階の修行に入っているだろう。

 否、優秀な妹なら、既に全過程を終了しているかもしれない。

 もしそうなら、先ほど集まるのに、遅れてくると言った連絡くも納得いく。

 …まあ、そんな事よりと、正也は辺りを見回して、先ほどから暗がりの中、こちらを遠くから見ている2人の気配に対して話しかける。


「そこで見てる奴。何か用か?用が無いなら身ぐるみを置いて行けば殺さないし、有るなら話くらいは聞いてやる。情報と交換でいいなら少しはこちらも話をしてやる。身ぐるみ置いて行くか立ち去るか、どっちか選べ」

「…はいはい、覗き見して悪かったわよ。アンタがあまりにも強いんで見惚れてただけ。悪気はないし、身ぐるみ置いてったらここいらの魔物相手に直ぐに死んじゃうから、色々と話を聞かせて貰うわ」


 正也の忠告で手を上げてお手上げのポーズで現れたのは、暗い中でフードで顔を隠してる見るからに怪しい、声が女性なので恐らく女性なのだろう。

 フードで分からんが、耳は普通の耳っぽいし、尻尾も無いから普通の人間っぽいが、詳しくは暗くて分からない。

 しかし、気配の内一つは出てきたが、もう一つは出てこない。

 何故だ?と正也が訝しんでいると、いつの間にかセイラの気配の近くにさっき感じたもう一つの気配が近寄っていた。

 なので、正也は急いでセイラの元へ行こうとしたが…


「…?体が…動かない?…何をした?」

「今だ!さっさとそいつに魔錠を付けろ!」


 正也の言葉を無視して、先ほどの女性の声とは明らかに違う男の物にしか聞こえない声が、セイラの近くにあった気配の主に送られる。

 そして、セイラがこの騒動に気付いて枕にしていた着替えの束から頭を起して起き上がり、「…ん~?正也ちゃん、どうしたです~?」などと言って片手で目を擦っている間にその気配の主に魔錠と言う物をセイラの手首に付けられた所だった。


 ガチャン!…という音が響き、突然前のめりに頭から俯せに倒れてしまったセイラに向かって、男は片手から昔アニメで見た幾何学模様の魔法陣の様な物を出すと、そこから風が起こってセイラを空中に宙づりの状態にする。


 しかし、最初は浮かせていただけだが、突然風が渦を巻き、鎌鼬に成って巻き起こり、セイラの着ていた服を下着を残して切り裂いた。


「ヤベ、威力の調節ミスったぜ。良さそうな生地の服破いちまった」


 男が言ったように、風の鎌鼬の所為で破けた所がボロボロに成って落ち、その所為で中に着ていた純白の下着が露わに成り、慎ましい小ぶりの形の良い双丘が顔を覗かせる。

 そして、キャンプ場のLEDライトの明かりの元、その一種の彫刻の様な美貌を見た男たちは歓喜の声を上げて……。


「うひゃー!こりゃー上玉じゃねえか。俺の魔力じゃ時間が足りねえが、人質として近くに置いている間は良いもんを見れるぜ。これが怪我の功名って奴だな。…服は損しちまったが」


 そう言ったのはセイラの服を魔法(恐らく)で破いた男だ。

 そして、正也を拘束している男も隣でほくそ笑みながらも服を破いた失敗を追及する。


「お前は間近で見られて良いが、俺は見れねえんだ。代わりやがれ。…しかし、コイツがモンキー共をアッサリ倒した時は、流石に止めとこうかと思ったが、やっぱりガキには女の声で近付くに限るな。ひ弱っぽい事を言えばアッサリ騙されやがったし。この高価な声が変えられる変わり身衣装も使い捨てだが役に立っただろ?」

「ああ、上出来だぜ。コイツを押さえてる以上はそいつも荷物は諦めないと駄目だろうから、荷物もさっきの上等な武器も俺らの物だ。笑いが止まらんぜ。…おい!こいつを傷物にされたく無かったら荷物を全部置いてココから失せろ!さっきのセリフのお返しだ。身ぐるみ置いて去るか死ぬかどっちか選べ!」


 セイラの隣で宙づりのまま動けないセイラの体(高さ的に浮いているので胸のあたり)に刃物を突きつけながら、正也を脅してくる男。


「おい、こいつは今動けねえんだから、言っても無駄だ。俺らで回収して、さっさと連絡取ってズラかるぞ。もう少しの予定だからな。さっさとしようぜ」


 そう言いながら男たちが話し合いを終え、次の行動を男がする前に、漸く正也は正気に戻り、遅いながらもセイラの力を使ってこいつ等を私刑にしなければいかなくなったので、セイラに戦闘行為を促す。


「セイラ!起きたてで未だ意識がハッキリしてないだろうが敵だ!シルバースーツ展開!そして先ず横の奴をオーラ糸で拘束しろ!」

「はん!何言ってやがる。そいつに填め…って何!!?」


 正也の指示に反応したセイラは何の迷いもなくオーラを自分の全身に纏わり付かせるように展開した。

 オーラは瞬く間に全身を覆い、昔の戦乙女の下着程度の面積の割合で銀色の色の付いた服になった。

 その際に手首にに取り付けられていた魔錠とかいう物が何の抵抗も無く砕け散り、その事に驚く男の体をオーラの糸で絡めて拘束した。

 この間1秒前後。

 しかし、この手の訓練は中学校でも頻繁にやっており、誰かの合図があれば呼吸するかのように行使できる位セイラにとっては簡単な事だ。

 そして、正也も目の前でセイラに取り付けられた魔錠に少なからず動揺したが、あれは昔の書籍を読んでいた時に書かれていた、人を無理矢理奴隷にする魔法の道具だと瞬時に判断し、且つオーラは魔法とは根本的に違うから、恐らく効果は無いと踏んで構わず指示を出した。

 まあ、万が一あの魔錠が有効なら、後でこの男共を締め上げて解除法を聞きだすつもりだったが。

 そして、セイラの隣の男が拘束されてから、数秒後今度は裕也を動かなくしていた男が逃げようとしていたので、追いかけようとするが…


「……まだ、何かされてるな…。セイラ!この逃げようとしてる奴も頼む!気絶させてくれればこの手の拘束手段は解除されるのがセオリーだって昔の書籍に書いてたから、構わずブチかませ!」

「分かりました!OBM軽装展開!」


 セイラが腕の端末に取り付けてあるOBMの状態を訓練モードに移行する。

 すると、腕の端末から大量の光が流出し、一気にセイラを包み込む。

 そして、光が止んだ処には、部分部分を機械的な装備に換装した銀色の鎧を付けたセイラが居た。

 その姿を見た男共は、急に怯えだし、大声で許しを乞うてきた。


「な、なんでお前らみたいなガキがそんな専用機みたいな高価なMBMを持ってんだよ!そんな奴らって知ってたら俺らが襲う訳ねぇじゃねぇか!知らなかったんだから助けてくれよ!頼むよ!もう襲わねえから!魔法具も解除するよ!」

 大声でそんな事を言って来た男に、正也は聞きなれない単語を確認したので、少し疑問の言葉を掛ける。

「なあ、アンタらはこの機体の事を見たことが有るのか?」

「あん!?お前ら自分で持ってるんだから、知ってるだろうが。なんで一々…ってわかった、言うからその嬢ちゃんの剣をしまわせてくれ!…ほれ、動けるだろ?!」


 男が何を当たり前の事をって感じで言おうとした時、セイラが手から出したオーラで形成したオーラブレードを男に向けて頬を膨らませて怒っていた。

 どうやら、正也の質問に応えろ!って事らしい。

 その状況に苦笑しながらも、男が言ったように動けるようになったので、聞く事は聞いておこうと正也も質問を開始する。




「じゃあ、この機体みたいな物はここではよく見るのか?」

「よくは見ねえ。王国の騎士団長様や、王女たちの護衛が専用機を持ってるくらいだ。勿論、王女もそれぞれに専用機を持ってるしな?」

「…それで?強さは知ってるのか?」

「強さはアンタらも知ってる筈だとは思うが、魔導師の技術によってタイプが異なるから、一概には言えないだろ?俺も詳しくは知らねえよ。唯、言えるのは専用機と汎用機でも格段の差があるって事だ。…まあ、これは常識だから、アンタらも知ってる筈だがな?俺が知ってる常識はそんなとこだ」




(成るほど、ここではオーラではなく、魔導って言う魔法の技術が発達してるって事か。しかも、地球と同じように機械的な物もありそうだ。更にオーラの代わりに魔法が有るって事は、多少は俺が使える可能性もあるって事だな。それでないとあのブラックボックスが、セイラ達には受け付けなくて、俺にだけ反応した意味が分からん。……!!待てよ!?なら、俺はここではオーラが使えない代わりに魔法って奴が使えるかも知れないって事か?!!…ヒャッホー!!)



 正也が心の中で思わず小躍りしそうになるのを押さえて、目の前の男に目線で警戒を発していると、セイラが正也の方へオーラ糸で固めた男を連れてきた。




「正也ちゃん、この男どうしますか?私は正也ちゃん以外の男に胸を見られたので、コイツの目は潰しておくべきだと思いますが?」

「…そうだな…。それも良いけど、こいつ等にはまだ色々と聞きたいことが有る、眼を潰すとその事の確認が出来ないと思うから、もう少し待ってくれ。それと、オーラ探査機のデータの更新は出来てるか?出来てたら画面を表示してココがどの辺りかこいつ等に聞いて、近場の町を教えさせるから」

「…仕方ありませんね。そう言う事なら今少し真の闇はお預けにしておきましょうか。…っと、待ってくださいよ?…はい、何時までもこの格好は正也ちゃんだけならまだしも、こいつ等に見せるのはムカつくので着替えてきます」


 そう言ってセイラは自分のオーラ型端末を正也に預け、自分は着替えの束の所に着替えに行った。

 まあ、端末自体は誰でも許可さえあれば使う事は出来るから、セイラがこの場に居る必要はないから良いのだが。


(けど、あの状態ならそこまで露出は多くないから見られても気にする必要はないと思うんだが?流石にオーラのみの軽装時は見てても恥ずかしいと思うが…)


 そんな感想を抱きながら、セイラの端末を操作し、周囲100キロに及ぶ地形と、現在地が書かれたマップが更新されていたので、そのマップを見ながら男たちに情報を吐かせる。


「おい、この地図のこの赤い点が現在地だ。指で押さえながら移動させれば地形も確認できる。この近くで比較的文明が発達してる町や都市を教えろ。そして、お前らが俺に使った動きを止めた方法とあの女の子に填めて操ろうとしたブレスレットの事もだ。…取りあえずそれを教えて確認を取るまでは光は保障するし、生かして置いてやる。さあ、教えろ」


 声は抑えてあるが、声質までは抑えていないので明らかに怯えた状態になる男共。

 その様子に内心苛立ちつつも、持って来ていた電磁警棒でセイラの胸を間近で見た男を小突く。

 その際に少量だけ電力を流したので、「ぎゃ!!」という悲鳴を上げた後、観念したのか話し始めた。

 もしかしたら話さなければ生きていられると思ったのかもしれない。


「…お前らがどういう技術を持ってるかは聞かねえが、コイツは恐ろしく発展した地図だな。こんな物何処の国に行っても見たことがねぇ。…っと、今がココだ。そして、ココをこう行って真っ直ぐに落ちていった先にあるこの大きな建物がこの国の【王都リルカル】、それとココが王城の【リロード城】だ。…ココまでは良いか?」

「…ああ、続けろ」

「よし、次にアンタの動きを止めた方法は知ってるとは思うが、魔法具だ。一応魔法具と魔導具は別々に捉えられているから言って置くと、魔法具は人間や人族が使う魔法を道具や武器に封印して魔力を篭めれば誰でも使えるようにした物だ。そして、使う際の魔法陣が発生せずに気付かれ難いのが利点だな。っていうか、アンタは魔法を使ってないようだし、あの嬢ちゃんも変な力は使ってるが魔法自体は使ってないし?さっき見た感じでも魔力の身体強化を使ってるようには見えなかったぞ?脳の処理速度が遅いから意味が無いって事か?」


(…?どういうことだ?魔法を行使するのに脳内処理の速度が問題なのか?)


 考えても分からないので男に聞くことにした正也だが、正也が質問した時に今度は男が訝しげに眉を顰める。


「魔法を使う条件ってのは何だ?」

「…本気で言ってるみたいだが……、兄ちゃん、ホントに人族か?人族で魔法の理を知らないって言ったら相当の田舎者か、赤ん坊位の子供か死に掛けのボケちまった年寄り位だぞ?…って、嬢ちゃん!俺は常識を言ってるだけなんだから、物騒なもんは仕舞ってくれ!」


 男の説明の途中で帰って来たセイラが、正也をアホのように言っていた男に対してオーラブレードを向けて威嚇する。

 正也は苦笑しながらそれを止めるが、男に聞く事は変わらない。


「俺の質問に応えていたら、その間は生きてられるから、素直に答えてろ。…続きは?」

「ああ、んで…魔導具が、そのお嬢ちゃんが持ってる様なMBMやさっき言った護衛の専用機や、金持ちの傭兵団や一部の傭兵が持ってる汎用機だな。他にも武器の換装用の専用武器なんかもある。アンタの動きを止めた魔法具は、影に魔針を打ったら動きだけを止められる物だ」

「影にって事は、ココにある位の影でも問題は無いって事か?」

「ああ」


 正也の問いに男は頷く。


「それで、効果時間と解除法は?」

「それは使用者の魔力強度と相手の魔力強度の差に比例する。だから、最低でも俺とアンタの魔力強度の差はさっきの5分弱の分は有るって事だ。そこから分でも秒でも効果時間を考えればいい。…解除法は誰かに針を抜いて貰うか、一瞬だけでも相手より多くの魔力を垂れ流しにすれば可能だ」


(魔力には魔力強度とかもあるのか?端末が使える様になったら調べられたら調べないといかんな)


「それと、嬢ちゃんの手首に填めたのも、同じように動きを止めるだけの物だ。…これが結構使い勝手が良くてな?警戒されてる相手には無理だが、それ以外の奴には填めたが最後、鍵を使って外すまでは自分から動けん。…まあ、嬢ちゃんが変な力を持ってたから無駄に成っちまったがな?これは本来動物や家畜を動けなくする為に考案された魔法具だ。人に使う場合は騎士団の連中が犯罪者を捕まえる為に使ってるのが殆どだ。その所為で価格もかなり高めだ。この更に上にも人には使ったら違法になる奴もあるが、普通は高くて手が出せん。買う奴は魔物を使役する魔族や動物を騎獣にする奴らだろ」



(変な力ってのはオーラの事だろうな。これは運が良かったと見るべきだな。もし、俺が填められてたら、俺は如何にもできなかったし、セイラでは咄嗟の対処に不安が有るからな。…危うく攫われそうになったのはヤバかったが…)


「さっきの質問はこれで答えたが、他に無かったらもう解放してくれ。…どうだ?」

「後二つ。魔法の事を教えろ。それに、俺が使ってなかったって分かったんだ?」

「それも常識なんだが…まあいいか。魔法は使う時必ず魔法陣を用いて、その魔法に応じた現象を脳内で処理してから魔法陣に送り、そして作った魔法陣から出すんだ。

 だから、身体強化の魔法も使う時はその箇所に極小でも魔法陣が現れるし、攻撃の魔法なら、魔法陣から現象が出てくる。…本当に知らねえのか?」

「魔法陣の出し方は?」

「魔力を篭めた箇所に自動的に出てくる。」

「篭め方は?」

「人それぞれだ。俺の場合は意識したら勝手に出てくる。……こんな風にな!」


 大人しく話していたと思ったら、急に男は魔法陣を出して頭で「ふん!」と頭突きで魔法陣を発動させて攻撃してきた。

 その攻撃は先ほどセイラの服を破いた風の鎌鼬だ。

 その鎌鼬が、正也とセイラの間に入り、セイラは咄嗟の事でオーラの糸の拘束を緩めてしまって、正也も突然の事で行動できず、男二人の拘束が解かれ、すかさず距離を置かれてしまった。

 そして、先ほど予定がどうの言ってた奴が手を上に向けてから、魔法陣を出して光が辺りを包み込むと、それを合図に二人の姿が消えてしまった。


「…くそ!後は金の事だけだったのに。…セイラ。場合に由ったらこの魔物が食材になるかもしれんから、オーラで圧縮しといてくれ」

「分かったのです!…それと、近場の町は何処か聞けましたか?」

「ああ、ココが王都リルカルってとこらしいから、一旦そこに行ってみよう。金の事は門番に聞けば解かるだ」

「はいです。…それにしても、私の胸を見た男はそこに行ったんでしょうか?」


 正也が地図の一点を差してこれからの事を言うと、セイラもさっきの奴らの事を思い出し、頬を膨らませて不満げに言った。


「まあ、何処に行ったかはともかく、俺らがこれから行くとこに居るかどうかも分からんから探しても無理だろ。もう今から移動は眠いのもあるから遅いし、明日の日の出で町に向かおう。…セイラはそれでいいか?」

「私は正也ちゃんについて行くのでどうでも良いです。…キチンと世話をしてくださいね?」

「ハハハ…了解、お嬢様」

「うむ。よきにはからえです」


 そう言った漫才的な事を言いながら、体感で2時間おき(双方の時計が使用不能に成っていた)に見張りを交代しながら夜が更けるのを待ち、朝になって行動を開始する事になった。

(正也は魔法を使ってみようとしたがどうやっても上手く行かず、町で調べることにした)


 


 

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