【勇者】
小さく広がるマンジュリナが住んでいた焼け消えた町。
また奥には、比べものにならないくらいのエルメス領土の貴族の街が広がっていた。
あそこまで被害はなかったようだ。
『今回の襲撃は世でさえも気付かなかった世の失態だ。 言い訳はしない、たくさんの命が失われたな』
悲しみに満ちた王の目は 遠く 遠くを見つめていた。
うつるように 一層落ち込む
ついには自身が拒んだ言葉を吐いてしまった
『陛下...。私には魔力がないのです』
『...何を言っている?』
王はゆっくり顔をこちらに向ける
ポカンと開く小さな口
そこから言葉を吐く
『そちは先程国を救った。 この状況で王におふざけか?』
体中 異常な鳥肌が浮かび上がってきた
見れば怒り狂った王の目。
『いつかは分かりません。 でも私の先祖は魔力があった。 陛下、記録に残っているはずです。 ここで悪事をはたらいた者がいたことは』
王は聞くと、怒る目は穏やかな目に戻り マンジュリナに近づいた。
『そちは下の雑貨屋かね?』
予想外な王の言葉。 一瞬怯んだが 返事を返す
『はい。 親戚の家娘として迎え入れられましたけど』
なるほど という表情のあとに
『大きく残っておるぞ。 だが悪事ではない。
雑貨屋は勇者として名を刻んでおる』