第六章 「あとがき」
時々、オレはボンヤリと漆黒の森の前に佇むことがある。けど、もう黒猫が現れることはなかった。きっと、運命の輪はオレではなく別の運命を辿り始めたんだろう。
オレはもう漆黒の森に入ろうとはしなかった。そう決意した。意地でもあった。……ただ、ブラックゾーンが訪れるたびに思い出す。
今頃、彼女は目を覚まし、そして死者を導いているんだ。そして、ブラックゾーンが過ぎれば、また眠ってしまう。
毎年毎年。同じように――。
日を追うごとにオレは確実に大人になっていく。段々と、「このままじゃいけないんだ」って考え出して、無邪気な思いも忘れてしまう。そんなオレを見て、みんなはきっと「立派になった」って口を揃えるだろう。でも、時々泣きたくなる夜があるんだ。以前は門番を封印したシールボックスの蓋を開けてしまおうか、と思ったこともあった。彼女にまた会えるんじゃないかと、そう勘違いして。
キミは、眠りながらどんな夢を見ているんだろう。
再び目覚めたとき、どう思うんだろう。
エンジェルに笑顔で挨拶して、そしてあの地下室へと向かう。死者を導き、さよならを言う。
いつしか、オレはキミの顔すら思い出せなくなるんだね。
多分、キミも……。
またキミに巡り会うだろう、運命の輪に導かれし者に、オレはこの物語を残す。