表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛闇  作者: 満月氷
1/5

<恋人同士のお話し> ある日の夜のこと

「ユウくん、今日はなんにんころしたの?」


「う〜んとね、ふたりだけだよ」


「すごーい!ふたりも!カナもはやくユウくんのおてつだいしたい!」


「ちがうでしょ?カナちゃんはお嫁さんになって、ぼくをたすけるんだよ?」


「うん!ユウくんのお嫁さんになっておてつだいする!」


「うん。ならなきゃころしちゃうからね?」


「大好きなユウくんにだったらころされたっていいもん!」










今思えば子供にしてはなんて恐ろしい会話なんだろうか。

でもあれは本心からの言葉であって後悔なんてしてないし今もその気持ちは変わらない。



「カ〜ナ〜ちゃん!」


「ユウくん!」



ユウくんが来てくれるのはいつも夜遅く。

わたしの家は村から離れた山奥の小さな家なのにユウくんは毎日わたしに会いに来てくれる。



「ユウくんっ!おなかにたくさん血がついてるっ!だ、大丈夫!?」


「あっごめん!すっかり忘れてた!この血は僕のじゃないから心配しなくても大丈夫だよ」



よ、よかったぁ・・・。

いや、良くないことなんだろうけど、わたしにとっての一番はユウくんだけ。

こんなわたしは狂っているんだろうけど、そうとしか思えないんだから仕方がない。

そのユウくんが怪我をするなんてそんなの、そんなの・・・・・・。



「ごめんね。早くカナちゃんに会いたくて着替えてくるのを忘れて来ちゃった。・・・僕が怖かったよね?」


「ううん。・・・わたしは、ユウくんが怪我した方がもっともっと怖い・・・。・・・怪我、しないでね?」


「・・・うん。僕は強いからなかなか怪我しないんだけど、カナちゃんが悲しむなら絶対に絶対に怪我しない」


「本当・・・?」


「うん。ただカナちゃんもどんな軽いことでも怪我しないでね」



その言葉に私は不自然にならないように指を背中に隠した。



「うん。わたしはそんなことしたりしないよ!」



大丈夫。ばれてない。



「じゃあなんで今手を背中に隠したの?」



・・・ばれてました。

ユウくんはなんでもおみとおしみたい。



「カナちゃんのことで知らないことなんて僕にはないよ!ほら、手をみせて!」



うぅ〜・・・。出来れば見せたくなかったんだけどなぁ。

そのほうが出来る女って感じがするし・・・。



「…なんで指先が怪我してるの?」



ユウくんの顔から表情が消えた。

ユウくん。わたしだってユウくんのことで知らないことはないよ?

だって今何を考えているかわかるんだもん。



「ち、違うよ?今日は村の人からやられたんじゃないよ!これは私がドジしちゃったの!」


「・・・本当、に?嘘はついちゃダメだよ?」



「嘘なんかじゃないよ。今日は・・・・・・これ作ってたの」



わたしはいつユウ君が来てもいいようにと懐に入れておいたものを取り出す。



「これ、・・・・・・手袋?」


「グローブでもいいよ。これを早く渡そうと焦っちゃって指にさしちゃったの・・・。ユウくん、人を殺すときに手に何もつけないでしょ?それで捕まったら嫌だし・・・。それに、ユウくんの手はいつも冷たいから・・・心配になる」



わたしはユウくんの手を握りながら答えた。

ユウくんの手はいつさわっても冷たい。

ひんやりしてて触ってもらえるとすごく気持ちいいけど、やっぱり暖かくしてくれないとわたしが不安になっちゃうから。



「ユウくんがいつかいなくなっちゃうと思っちゃう。わたし、ユウくんがいなくちゃ、嫌だよ・・・」



ユウくんはわたしの全て。

もしユウくんに出会えなかったら今のわたしはいない。

・・・・・・わたしの大切で、大好きな恋人。

わたしの前からいなくなったりしないで・・・!



「カナちゃんっ」



おもむろにユウくんがわたしに抱き着いてきた。

優しくて暖かくて、わたしが苦しくない程度に強く抱くのでとても心地よい。



「カナちゃんは僕のお嫁さんになるんでしょ。僕はそれは楽しみに待ってるんだからカナちゃんから離れるわけがないじゃないか!それどころか毎日一日中側にいたいくらいだよ!」


「ユウくん・・・」


「逆に僕は殺し屋だから・・・、カナちゃんが僕から離れるんじゃないか毎日不安だよ」


「あ、ありえないよっ!大好きなユウくんから離れたくない!」



ユウくんから離されないようにわたしもユウくんを抱きしめ返す。



「ユウくんが殺人してても変わらない!だってこんなにもユウくんがすごく好きなんだもんっ!」


「カナちゃんっ・・・!」



そのままわたし達は何度も唇を重ね合わせた。

ユウくんが好きすぎてどうにかなってしまいそうだった。

いや、狂っちゃってるんだけどね。

たぶんユウくんもそうだったのかな?



「ユ、く・・・んっ・・・・・・!だ・・・・・・すきぃ・・・!」


「僕も、だよ・・・カナちゃん・・・!」



結局その日のうちにユウくんにグローブを着けてもらうことはできなくなっちゃった。

まぁ、いっか。







******







次の日の朝方。

ユウくんがまた仕事に行ってしまう。

わたしは早起きしてユウくんのために朝ごはんを作ってあげた。



「早くお嫁さんに来てよ〜・・・。そしたら一日中ずっと一緒にいられるのに・・・」



ユウくんがわたしの隣にぴったりくっついてくるので、…ちょっぴり恥ずかしいけど、あ~んして食べさせてあげてる。

ユウくんも嬉しそうに食べてくれてわたしもすごく幸せ!



「だってユウくんは生まれたときから本部で暮らしてるからいいけど、わたしが本部で暮らすには18歳にならないといけないんでしょ?あと半年の辛抱だよ」


「近いからこそ待てないよぉ・・・。もう十三年も待ってるのに・・・」


「それだったら私だって十三年だよ?」



わたしだってずっと待ってるんだから!



「ねぇユウくん。・・・今夜は、これる?」


「・・・難しいかもしれないけど、絶対に会いに行く!明日は一日中休みだから、カナちゃんに会って元気をもらうんだ!・・・待っててくれる?」


「うん!待ってる!わたしもユウくんのパワーをもらうだけで元気になれるもん!」



今夜も待ち遠しいなぁ・・・!







9/15、間違いを修正しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ