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06





 パーティを組んでいるとはいえ、昇格試験はそれぞれ個人対象によるもの。三人はそれぞれ試験内容が異なっている。


 また、パーティにもランクが存在している。ただし、パーティのメンバーが全員Bランク以上でないとパーティにはランク証はつかない。


「ゼロとリュイの試験内容はどういうものなんだ?」


「俺は近くで出るっていうウルフの討伐。つっても討伐隊がいるから、それに協力ってとこだ」


「わたくしは薬草採取ですわ。満月にしか咲かない“月の雫”を同行者と共に採取せよ、です。シキはどういうものでした?」


「それが……」


 ぴらり、とシキは二人に内容が見えるように紙を翻す。


 そこには“パーティランクC『ステラ』の依頼の補助をせよ”と書かれている。その下には集合場所と集合時間。


「依頼の補助の依頼の部分が不明なのは怖ぇな。まあ、お前がやられることはねえと思うけど、下手に俺らの力がバレると不味いことになりそうだ」


「少なくとも、特限スキルは使用禁止ですわよ」


「了解」


 特限スキル。正式名称は特殊限定スキル。


 最強種へと転生を果たしたプレイヤーだけが使用できる特殊スキルで、使用すれば一発で最強種だと発覚する。そして、その能力はどれも強力かつ凶悪なのだが使い勝手がいいため本人達は抵抗なく使用していた。


「とりあえずオレは行く。そろそろ集合時間のようだしな」


「気をつけてけよー」


「また宿でお会いしましょう」


 二人に見送られ、シキはギルドの待合室を出て行った。


 人通りの多い王都の道をうまく人をよけながら歩き、集合場所の中央広場噴水前に着く。噴水横の時計はちょうど集合時間三分前を示していた。


 時間の概念はシキ達が知っているものとほとんど変わらないが、時計の表し方だけが何時何分ではなく、何の刻何の時という言い方になる。


 たとえば、9時半の場合は、9の刻30の時といった言い方になる。


「パーティ『ステラ』か……面倒な奴がいなければいいんだが」


 シキはゼロとリュイ以外とパーティを組んだことがない。


 ストーリークエストもシキはパーティクエストに当たったことがないため、ソロもしくはゼロとのコンビで終了していた。元々集団行動することが苦手なのもあり、ゼロとリュイも同じだったために3人でのパーティになっていたのだ。


 多少のわくわく感もあれば、集団行動しなければならないというげんなり感もあるという矛盾を今のシキは抱えている。


「あれ? シキさん?」


「……フィン?」


 声がするほうに視線を見れば、金髪碧眼の美少年とその取り巻きともいえる一行がいた。


「こんなところでどうしたんですか?」


「ギルドの昇格試験だ。ここであるパーティと待ち合わせしてるんだが……」


「……もしかしてそのパーティって『ステラ』ですか?」


「え? そうだが、なんで……もしかして」


「……パーティ『ステラ』代表のフィンです。昇格試験の試験官に任命されました」


 一瞬にしてフィンの顔が温和な美少年から冒険者としての顔に切り替わる。シキもそれに対応するかのように背筋を伸ばす。


「昇格試験、受験者のシキです。本日はよろしくお願いします」


「はい、こちらこそ。さっそくですが、うちのメンバーを紹介します。とはいってもみんなシキさんの知ってる人なんですけどね」


 苦笑しながらフィンが指さす先にはシキも知っている男たちが並んでいた。


「東門の前で依頼人と待ち合わせしてるんで、道すがら説明しますね」


「ああ」


 シキは置いて行かれぬようフィンと並んで歩く。後ろから突き刺さる野郎どもの視線は気にしないようにして。


「依頼はここから東に二日ほどかかる距離の村まで護衛なんです。その途中の道で最近盗賊が多く出るみたいで、ギルドにも護衛依頼が多発してるんです」


「多発してる護衛依頼を昇格試験にするギルド……」


「習うより慣れろ、ですよシキさん」


「ちょっと意味違うだろう、それ」


「そうですか?」


 (というか、本当にこいつは愛されているんだな。さっきからすごい殺気だ)


 殺気で首の後ろがちりちりする。


「オレの役目は?」


「基本的には何もないと思ってくれていいです。ただ、たまに攻撃し損ねたりとかする場合もあるんで、その時フォローしてくれれば」


「了解、試験官様」


 さらに歩くこと数分。王都の東にある東門の前に数台の馬車と商人と思われる者達が待ち構えていたように並んでいる。


「これはこれはフィンさん、今日もよろしくお願いします」


「カイエンさん。こちらこそ、いつもありがとうございます」


 見た目二十代後半のノーフレームのメガネをかけた、いかにもインテリといった感じの男が前に出てフィンに握手を求める。お互い笑顔で握手を交わす二人に、シキの後ろにいた面々の殺気が膨れ上がる。


「そんな風に殺気向けて大丈夫なのか? 依頼人だろう?」


「いいんだよっ。あいつ、いっつも俺らに依頼頼むお得意様とか言う奴だけど、隙あらば俺のフィンに手ぇ出そうとしてる奴なんだから!」


 クロスの言葉を皮切りに、今度はフィンが誰のもかと言う口論が始まる。


 (う、うざい……フィンの奴、本当にこれだけ言ってるのに気付いていないのか? それともあえて知らないふりしてるとか……もしそうだとしたらアカデミー賞モノだ)


 後ろでは討論会のような口論。前では商人とフィンの和やかな会話。間に挟まれたシキは面倒くさそうに大きなため息をついた。





今回は短めです。スローペースですいません。


感想ご指摘いろいろとありがとうございます。

一人一人しっかりきっちり読ませていただいております。

後日きちんと返信させていただきます!

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