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 ソファに座るシキの周囲にわらわらと色とりどりの色彩を持つ小さな子供達が集まって固まっている。シキが紅茶を飲もうと手を伸ばそうとするも、子供たちが邪魔で身動きが取れない。


 そんな子供達はシキを主と仰ぐ幻獣達であり、シキの【ホーム】を守る最強の守護者である十二天将達だ。外見は幼い少年少女だが、レベルは全員1000前後でありシキが契約するのに一番苦労した者達だ。


 (なんか、好感度が限界突破してる気がするのは気のせいか……)


 十二天将全員と契約するプロセスも他の契約幻獣達に比べて遥かに長い。そして何より戦闘時に協力してもらうためには、十二天将それぞれに好感度が存在しており、その好感度を一定以上上げないと契約しても戦闘に協力してもらえないという気難しい難易度の高い幻獣なのだ。シキは何その乙女ゲーな幻獣、と思いつつ、変な所でコレクター気質があり、一人と契約するとどうしても十二天将全員揃えたいと思ってしまったのだ。マスタークラスに昇格してから半年かけて、リアルで就職活動をしながら全員揃え、好感度をMAXまで上げたのはいい思い出だとシキは思っている。


「おいこら、十二天将共。シキが動けねえ状態になってんだろうが。少しは遠慮しろ」


 ゼロがそう声をかけると、十二天将達はへにょんと眉をさげてシキから一歩引く。ようやく動けるようになったシキは少し冷めてしまった紅茶を飲みほし一息ついた。


「……すまなかったな、お前達。五百年間も放り出してしまったようで」


 シキがそういうと、十二天将の中でも主神にあたる天乙貴人が前に出てくる。長い栗色の髪を結いあげて不安そうに見つめてくる美少女の姿に、シキはすまなそうにしながら彼女の髪を撫でた。


「決してお前たちとの契約を解除したわけじゃないんだ。少々イレギュラーが起きて、この五百年会うことができなかった」


【主様……長き時をお待ち申し上げておりました。我ら十二天将、これからも主様のために……】


「ありがとう」


 十二天将達は貴人の言葉を皮切りに一斉に頭を下げる。


【あの、主様……】


「どうした?」


【その、誠に申し訳ないのですが……もう一度主様に触れてもよろしいでしょうか……?】


「んなっ!?」


「ゼロ煩い。もちろん、いいぞ。貴人だけじゃなくて他の奴らも」


 そう言うと、十二天将達の顔と目が輝き一斉に抱きついてくる。シキは目を細めて全員の背中を宥めるように叩く。女性の天将達には髪を撫でるおまけつきだ。


 (平常時は可愛い子供だが、戦闘時にはこれがまたイケメン美女勢ぞろいになるから不思議だな……)


 十二天将は普段は子供の姿で全員存在している。戦闘時でもそれは同じで、好感度を一定以上にあげて認めてもらった場合のみ本性でもある大人の姿へと変化して戦闘に協力して強大な力をふるってくれるのだ。十二天将の中で最初に変化を起こしてくれたのは騰蛇だった。最後に手に入れた最強の凶将でありながらも、一対一の勝負に勝ったことから好感度は最初から高めだった。そして事あるごとに戦闘時に召喚して好感度を高めて行ったら最初に変化をした。隣室から壁をドンッと叩かれたほど夜中に叫んでしまうくらい嬉しかった。


 (しかし、感情の浮き沈みというか、喜怒哀楽がはっきりしているものだな……現実になるとこうなるのか)


 屋敷の前で再会したとき、我先に抱きついてきたのは最初に契約した玄武だった。ゲームの中では玄武は、好感度は高いくせに感情をあまり見せないキャラクターだとシキは思っていた。


 (玄武が最初に契約した十二天将だから、付き合い自体は一番長いか……)


【主、我々はこれからどうすればいいのかね?】


「騰蛇?」


 シキが視線を移すと、戦闘時でないのに騰蛇の姿が本性に戻っていた。


 赤銅色の髪に褐色の肌、鋼色の瞳を持つ美丈夫。


【これからもここを守ればいいのか?】


「……そうだな。ここにいつつ召喚に応えてくれるとうれしい。さすがにお前達を連れ歩くと目立つ」


「確かにガキ十二人は目立つしな……リルや玉藻みてぇに獣型なら連れ歩けねえこともないが」


【出来れば日替わりで我らを傍に置いてくれると嬉しいのだが。無論、ここの守りを第一と考えて、だ】


【主様、騰蛇の言うようにお願い出来ませんでしょうか……お傍に置いていただけませんか……?】


 騰蛇と貴人の願いに、シキは日替わりで一人くらいなら支障はないと思って許可しようとした矢先に発言したのはゼロだった。


「ガキの姿なら許可するけど、本性は却下だ」


「……ゼロ、何故お前が答える」


「あ? いくら契約した幻獣といえども他の男をお前の傍におけるか!」


「少し黙ってろ」


「ぐはっ!」


 手元にあった本をゼロの顔に投げつける。


「一日起きで一人くらいなら構わない。ただし人目につかないところでだ。十二天将は幻獣としても有名だからな。正体がばれてお前達が狙われても困る」


【承知した。では最初に誰を呼ぶ?】


【あたいだよね! あたいを呼んでよ主様!】


「太裳……」


【俺っすよね? 当然主は俺を選ぶっすよね!?】


「白虎……」


 第一次十二天将誰が一番最初に選ばれるか選手権勃発。


「愛されてんなー、お前。まあ、一番愛してるのは俺だけどな」


「うわっ……!」


 向かい側から体ごと引っ張られ、自然とシキはゼロに抱きかかえられるような形になってしまう。つまりは向かい合って座り形に。


【あーっ! ずるいっすよ、ゼロ! 主は俺のっすー!!】


「ふざけんな。脳天ブチ抜くぞ」


【ううっ……ゼロの目がマジっす……】


「白虎は猫科の生物ですのに、どうしてか耳と尻尾のついた犬にしか見えませんわね相変わらず」


「わりと本性見せてくれたのは後半だったけどな」


「一度懐いたら離れないタイプという奴ですわね」


 延々と勝負がつかなかったため焦れたゼロがくじ引きをつくり、1から12の数字を引いた者から順番に召喚されることになる。その結果。


【なんで俺が最後なんすかぁ……主と同じ風属性なのにぃ……】


 12と書かれた紙を握り締め、白虎が意気消沈しているがそれを気にする者はおらず、各々納得し彼を残して再び館の外の決められた配置場所に戻るのだった。








 元々の依頼を完遂するため、必要なヴェグニスラピスを採掘しアイテムボックスに仕舞いこみ、さらに念のためいくつか倉庫にも放り込んでおく。その他にもある程度、今までなかった採集採掘出来るアイテムを倉庫に仕舞っておいた。


「さて、これで依頼終了だな。街に戻るか」


 館に戻り予め設置してある転移陣の上に立つ。直後、見える光景が和モダンなものから汚れた白い壁へと変化する。木造りの扉を開けて外に出ればすぐそこには王都に入るための城壁門が見える。


「いつも思うんだが、なんで公用の転移陣は街の外にあるんだろうか……」


「ゲームではそのまま中に入れましたわね、そういえば」


「俺としちゃ、なんでこの転移陣は帰還する時にしか使えねぇのか疑問なんだが」


「そういやそうだな。出向いた街や村を認識する度に転移陣が起動してるから、普通は直接移動が出来るはずなんだが……確かにこっちに戻るときにしか使ってないな、転移陣」


「その辺りもゲームと現実の仕様の違いというところでしょう」


「今度試してみるか。マッピングはちゃんとしてるし、上手くいけば直接移動出来るかもな」


「いえ、それはやめたほうがいいかと思いますわ」


「リュイ?」


「元々転移陣を使用するという認識がないのかもしれません」


「だが、こうやって公用の転移陣があるじゃねえか。他の街にもあったぞ?」


「ですが、使用頻度が低すぎます」


「……忘れられてるんじゃないか、コレ。確か500年前にでかい戦争が起きて技術がほとんど失われたんだろ? 転移陣もその一つなのかもしれない」


「あり得ない話じゃねえな。もしそうなら、仮に転移陣が周知の事実になった時面倒だな。特に俺が」


「だな」


「ゼロは自分で転移陣描けますものね」


「【陣作成】スキル持ってるんだから仕方ねえだろ」


 スキル【陣作成】とはその名の通り魔法陣を作成するもので、ゲーム内ではお楽しみスキルの一つであった。そのスキルを会得すると、まず自分で魔法陣を作成する。そしてその魔法陣に名前と効果をつけて運営側に提出し、運営側が採用すれば公式の魔法スキルになる。公式採用されればレアアイテムが与えられるため、デザインなどに自身のある一部のプレイヤーが嬉々として公式採用目指して日々努力していた。だが、どういう基準で採用されるのかが公開されておらず、単純な魔法陣でも公式採用されていたケースがあったため、最終的には余裕があるプレイヤーの暇潰しのようなものになってしまったのだ。


 ゼロはそんなプレイヤーの中でも比較的珍しく、いくつか作成した魔法陣を公式採用されていたプレイヤーでもあった。さらに、転移のための魔法陣を作成し公式用ではなく個人用のための魔法陣として運営側に提出。彼自身、お遊びのようなものだったと後日語ったのだが、これが採用されて個人用転移陣の使用が認められたのだ。当然、公式採用ではないのでレアアイテムは与えられなかったが。その他、個人用の魔法スキル用魔法陣を所有しているゼロであるが、どれもがえげつないためシキとリュイは使用を控えさせたことがある。


「ゼロ、そのスキルで新しい魔法は作れないのか?」


「……その発想はなかったな。試してみるか」


「あら。そしたら将来きっとゼロの名前は歴史に残りますわよ」


「それは面倒くせぇな」


 苦笑しながらも目を輝かせる彼にシキは目を細める。


「ゼロ、お前企画職とか向いてそうだな。新しいもの作るの好きだろう」


「わかるか?」


「目が輝いてますもの。どんな魔法が出来るのか楽しみですわ」


 そんな会話を交わしつつ、王都の門をくぐる三人だった。





気がついたら前回から二ヶ月経ってました……申し訳ない……orz


と、いうわけで十二天将は基本幼児と幼女になりました。戦闘時だけ美男美女になります。まあ、十二天将が必要になる戦闘なんぞ当分出てこないけどね!

幼児で幼女な彼らとほのぼのならあるかもしれませんが。


次回はお留守番だった王道・フィン達と繰り広げる王宮編です。

ここから怒涛のようにBL要素突っ走って行く予定。


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