表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/24

17




 谷間を抜けて奥へと進むと、数多くの竜が生息しており、ゼロ達の目にもカラフルな色合いが見て取れた。


「すげえな……」


『この谷には一部を除いた竜以外、すべての種族が生息している。そして、あの神殿に我らが竜王陛下がおられる』


 視線の先には真珠色の壁をした神殿。遠目にもかなりの大きさに思え、ゼロは周囲に立つ竜達の大きさに合わせて作られているのだと悟る。


 (人間との交流もあるみてぇだし、人と竜のどちらにも対応しているっつーことか)


 神殿の入り口には色違いの竜が門番のように立っている。その二匹は、大地に下りてきたリーガルに首を垂れた。その様子に、ゼロは目を細める。


 (随分と位の高い竜なんだな……それじゃあいつらが縮こまるのも無理はねぇか)


 ゼロの視線は手錠をつけられ、箱型の牢で運ばれているフィオリースへと向けられる。その周囲には同じように手錠を付けられている取り巻き竜達がいる。しかし彼らはすべて人型で、魔力が封じられているようで力なくへたり込んでいる。


「親の躾が悪かったのか、周囲の環境が悪かったのかわかりませんが、ああいう子にだけは育てたくありませんわ」


「リュイ」


「アレはその両方だ。先代陛下の孫ということもあり、親も周囲もアレを甘やかし過ぎた。今代の陛下や我らがあれほど苦言を呈していたというのに、聞く耳を持たずであった」


「っていうと、あんたらはアレをどうにかしたかったってことか」


「アレとその周囲をだな。ゆえに、今回のことはある意味我らにとっては僥倖ともいえる。表立ってアレとその周囲を排除出来る」


 満足そうに微笑むリーガルに、ゼロは彼がいかにフィオリース一味を排除したがっていたか理解した。そんな彼の後ろをゼロとリュイはついていく。所々興味を惹かれるものがあるが、説明を聞くのは後回し。今はただシキに会うことが先である。


 最奥の一番大きな扉を開けると、またしてもカラフルな色合いを持つ者達が並んでいる。竜は人型になると各種族の色を身体のどこかに持つ。大体が髪の色であったり、眼の色であったりするが、ゼロの感覚でいえばそれはNPCキャラであり、シキのような竜族プレイヤーは皮膚に種族の色が文様として浮き出るタトゥータイプだ。


 人型になる竜達が立ち並ぶ、謁見の間とでもいうべき部屋。一つ高い壇上は薄布で覆われており、ゼロ達にはシルエットしか見えない。跪いて報告するリーガルに倣って跪くべきかとも思ったが、ゼロはあえて立ったままでいた。いつでもどこでも攻撃が出来るように。


「陛下。谷にてフィオリース以下数名が騒いでいた件ですが、やはりあの者は人里に下りて村人に被害を与えていた模様」


リーガルの言葉にその場がざわめきだす。そのほとんど「やはり……」や「先代のお心を踏みにじるとは……」などフィオリースに怒りを向けるものばかり。


「現在、封じの錠をかけた上で静寂の間に」


「そうか……皆のもの、下がれ」


 その言葉に、リーガルと壇上の脇に控えている腰に剣を差している男以外の姿消える。


 途端、薄布の向こうから出てきたモノに突撃された。


「ぐっ……!」


「会いたかった、会いたかった、会いたかったわお父様~~~~ん!!」


 ほとんど身長の変わらない、それでいて服の上からでもわかるくらい筋肉質の黒い塊に突撃され、彼はうめき声を上げて後ろに倒れた。胸元に顔を摺り寄せて、ひたすら「お父様お父様」と繰り返す声は高くて野太い。


 (……オネエ?)


 現実世界でもゼロには同じタイプの友人が数人いた。今、彼の胸元にすりついているのはそれとまったく同じタイプだと確信。だが、それ以前に。


「俺はガキ作った覚えはねえぞ」


「んまっ! ひどいわお父様ったら。あたくしを忘れてしまうなんて。アートルムよ」


「……は?」


「だ・か・ら、アートルム。お父様達に倒された後転生して、お二人の子供になった闇竜のアートルム。それがあたくし」


 ゼロは倒された体を起こし、改めてアートルムと名乗るオネエ系の男を見る。


 黒髪に黒い瞳。


 目元には泣き黒子。


 黒で統一され、所々装飾のついた服。


 指先の爪は丁寧に整えられ、神殿の壁と同じような真珠色に染まっている。


「……嘘だろ」


「うふっ、それなら最後にこれならどうかしら」


 緩くウェーブのかかった襟元の黒髪をかきあげると首筋が露になり、ゼロはそこにある刻印に目を瞠った。


 二振りの交わるカットラスの中央にアイパッチをしたスカル。


 それはゼロ達三人が初めてパーティを組んだときに登録したシンボルマーク。当時、現実世界で海賊映画が流行っていたことや、ゼロの海賊職を極めようとしていたこともあったため、ありきたりで他の登録パーティと重なって却下されると思っていたが、逆に皆が避けていたためにあっさりと通ったという経緯がある。


 この刻印を持つのはパーティメンバーである三人と、アイテムであり養い子認定されたアートルムだけ。運営から与えられた際に、アートルムの首筋に刻印が刻まれ【アヴァロン】所属だと証明されたのだ。


「……悪夢だ」


「でもこれが現実ですわよ、ゼロ。俺様×オネエとか新しいジャンルではありませんか! しかも義父×息子! 逆も可!」


「そこの腐女子自重しろ。取り合えず、お前がアートルムなのはわかった。で、シキは今どこにいんだ?」


「さっきユンちゃんに連れてくるように言ったから、すぐに来るわ」


 同時に、部屋の扉が開いてメイド服らしき服装をした女性とシキが入ってくる。


「「シキ!」」


「ゼロっ、リュイっ」


 小走りによってくるシキの身体を抱きしめ、無事を確かめる。


「あの馬鹿共に何かされてねえか!? 襲われたっつってたぞ!?」


「襲われたには襲われたらしんだが、どうも寝起きだったものだから記憶がない」


「……お前、寝起き悪ぃからな」


「下手すると暴れますものね」


「そうよ~。お母様ったら暴れて岩牢の壁を破壊してくれちゃったもの」


 頬に手を当てて困ったようにため息を吐くアートルム。


「……誰だ?」


「今の竜王。で、アートルムだ」


「……悪夢だ。オレの癒しだった小さい黒竜を返せ」


「もう、お母様ったら。あたくしもう大人だから小さくはなれなくってよ?」


「……これが竜王でいいのか?」


「陛下は公私の使い分けをしっかりなさる方ですから。それに、今は我々しかいませんし」


「でも、まさかあの小さいアートルムが竜王になってるとは思いもしませんでしたわ」


「そうねぇ……あたくし、お父様達が消えてしまってとても悲しかったわ。お散歩から帰ったら消えてしまっていたんですもの」


「それは……」


「あたくしそれでようやくわかったの。お父様達の元に行く前に殺めてしまった命達のこと。残された者はこんなにも悲しかったのねって。だから、あたくし決めたの。今度は人を守る存在になろうって。そのためにもっと強くならないとって」


 そしてアートルムは偶然にも人に紛れていた先代の竜王に発見され、竜の谷へ連れてこられて修行を重ねた。結果、希少種でもある闇竜の強さが前面に出て竜王の地位につけるほどになる。


「いつかきっとお父様達に会える。その時、あたくしはお父様達に誇れるあたくしでありたいって、ずっと思っていたわ。そんな時を夢見ていたの。まさかその夢が叶うとは思っても見なかった……あのクソガ、いえフィオリースには感謝しないとね」


 にっこり笑うアートルムに、ゼロは目を細めてぽんぽんと彼の頭を撫でた。


「よくがんばったな」


 アートルムは一瞬目を瞬かせ、くしゃりと顔を歪めてまたしても突撃するかのようにゼロに抱きつく。倒れそうになるのを踏みとどまったものの、衝撃が押し殺せず座り込む。しばらくの間、謁見の間には嗚咽の声だけが響いていた。












 夜の帳の中、ゼロとアートルムは互いに酒を酌み交わしていた。そのつまみとして、二人の前には用意された食べ物が並べられている。


 夜更かしは美容に悪いと、リュイはさっさと宛がわれた部屋に引っ込み、シキは許容量を超えたため酔ってゼロの背を枕に眠っていた。そんないつ崩れ落ちるかわからないシキの身体を抱きかかえ、肩に頭を押し付け腰を抱いた状態で固定する。


「お父様ったら、本当にお母様が好きねぇ」


「こいつはまったく気づいてねえけどな」


「小さいあたくしだって気づいたっていうのに、お母様ったら」


「つーか、なんでお前シキを母親認定なんだ」


「気がついたらそう認識していたんですもの。ゼロお父様、シキお母様、リュイお姉様って」


 掲げたグラス越しに窓の向こうの月を眺め、揺れるさまに目を細めて喉を潤す。


「魔王たるお父様が唯一勝てないお母様。あたくし達竜族にとって絶対無二の存在。真の王にして始祖竜こと竜帝陛下であるお母様」


「仕方ねーだろ、先に惚れたほうが負けだ」


 ゼロは喉を鳴らして笑い、シキの髪に口付ける。


「アートルム」


「なあに?」


「今から俺がすることは見なかったことにしとけ」


「仕方ないわねぇ」


 くすくす笑うアートルムを尻目に、ゼロはグラスの酒を飲み干し、シキの頬に手を滑らせてからその桜色の唇に己のそれを重ねた。ゆっくりと、口移しで酒を飲ませていくと、不意にシキが瞼を震わせる。やばい、と思って唇を離したと同時にシキが目を開ける。


「……ゼ、ロ?」


「あー、シキ、あのな」


 どんな言い訳をしようかと考えていると、シキはふにゃんとした笑みを浮かべてゼロにキスを仕掛けてきたため彼の動きが止まる。


「ゼ、ロ……もっと」


「っ!?」


 とろんとして潤んだ瞳。


 僅かに開いた誘うような唇。


 酔って上気した薔薇色の頬。


 そのどれもがゼロの欲を誘い、今すぐに貪りつくしたくなる。


「……アートルム」


「ダメよ、お父様」


「ちっ……シキ、お前まだ寝てろ」


 手でシキの目を覆えば、すぐに寝息がゼロの耳に届いて、再び彼の肩にシキが頭を預けた。完全に寝たのを確認して、ゼロは大きなため息を吐いた。


「こいつ、マジで性質悪ぃ……」


「まだ時期じゃないわ、がんばってお父様」


 すっかり見違えた養い子の応援に、ゼロはもう一度大きなため息をつくのだった。






BL要素があんまりなかったので、ここらでちょっとそれっぽいの入れてみました。あとは新キャラ、竜王アートルム。

わりと彼(彼女?)のことは予想していた方がいらっしゃいました。まあ、わかりやすい伏線でしたしね。

アートルムは最初からオネエ系でいこうと思ってました。下手な女子より女子力高いオネエサマです。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ