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 訓練場の中央に銃弾の着弾の音と、同時に放たれる魔法の爆音が轟く。


「闇の焔に抱かれて滅せ・ヘルバースト!」


 深淵の闇より召喚された闇の焔がとぐろを巻いて上空へと飛び、降り注いでは爆発を起こして行く。


「ぎゃー!! ゼロ先生少しは手加減してくださいー!!」


「しかもなんでそんな上級魔法を高短縮詠唱(ハイカットスペル)で出来るんスか!!」


「俺の実力だ!」


 魔法の詠唱の仕方には四種類ある。


 正式にすべての呪文を詠唱する全詠唱(オールスペル)


 一部の詠唱を省いて短縮した短縮詠唱(ショートスペル)


 ほぼ詠唱を必要としない高短縮詠唱(ハイカットスペル)


 詠唱しない無詠唱(ノンスペル)


 短縮詠唱はエルフや魔族、王宮に召し抱えられる魔道士であれば本人のレベル次第だが、上級魔法まで使用可能。高短縮詠唱は中級がギリギリのライン。しかしそんな有能な魔道士でさえ、無詠唱は初級魔法がやっと。魔法に特化した魔族でさえ、下級魔法がやっとという世界で、完全な無詠唱が出来るのは魔を統べると謳われる【魔王】だけだ。つまりそれはゼロのことで。


 その気になれば彼はどんなランクの魔法でさえ詠唱を必要としない。さらに転生時の特典である特殊限定スキルとして【多重詠唱】を与えられている。同属性・他属性問わず同時に魔法を発動できる魔道士なら垂涎もののスキルだ。


「まだまだ行くぜー。其は海原荒れし波・ダイタルウェイブ」


 今度は荒れ狂う波が出現し、生徒や教師たちを押し流して行く。叫びも波に浚われて言葉になっていなかった。


「俺らを殺す気かー!!」


「鬼畜教師―!!」


「どS―!!」


「なんとでも言え。ごめんなさい、もう追いかけませんと土下座するまで俺はやるぞ」


 愛銃に魔力を再装填して数々の魔法弾を撃ち出して行く。ゼロの持つ銃『ディアボロス』はそれ自体が魔法を発動するための媒体になっており、魔力を込めるだけで任意の魔法が発動するようになっている。ただし制限がかかっており、魔族プレイヤーのマスタークラスしか使えないハイスペックアイテムで、なおかつクエストクリアに寄る報奨品で一点物。つまりはゼロしか持っていない武器なのだ。普通の銃弾も装填可能なので、極々普通の銃としても使用可能。


 水浸しになっている所へ雷の魔法を撃ちこむ。すなわち水に雷が伝導して周囲に広がる。結果、感電。


 さすがにそこまでされるとこれ以上の気力はなくなり、傷の浅いメンバーがゼロの目の前でそろって「ごめんなさい、もうしません」とぷるぷる震えながら土下座するのだった。


 以降、ゼロは学院で教師をしている間、全校生徒及び教師たちから別の意味で魔王の肩書を付けられることになるのだった。












「ここがゼロの職場ですのね」


「なあリュイ。ゼロの邪魔になるだろうから、オレたちは行かない方がいいんじゃないか? それにリュイは依頼が入っていたはずだろ?」


「そうですわね。指名されてるし比較的簡単な依頼だけど依頼料高くてお得だから断らなかったのですけれど!」


「オレ、何気にリュイがお金大好きだってわかってた」


「金は天下の回りもの!」


 拳を高く握り締めて言う言葉じゃないとシキは思う。誰もが見惚れるほど神秘的な美しさを兼ね備えたハイエルフなのに、その唇から零れる言葉はとても即物的だ。


「ゼロがちゃんと講師やってるのを見て笑ってやろうかと思いましたけれど、時間がありませんもの。代わりにシキがしっかり見てきてくださいね」


「え゛っ」


 手を重ね合わせてにっこりと微笑むリュイに逆らう術を今のシキは持っていなかった。まるでドナドナの仔牛ように引きずられ、学院の受付にて手続きをされ、ゼロが出てくるまで受付前で待っているしかない。


 数分後、廊下の奥から苛立ちを隠していない様子で多くの生徒たちに付き纏われたゼロが出てくる。しかし、その互いの金瞳が合うと彼は口元を綻ばせ、甘さを含ませた声でシキの名前を呼んだ。


「ゼロ、わたくしもおりますのよ?」


「あ? 悪ぃ、シキしか目に入ってなかった。つーか、お前仕事あんだろ。さっさと行け、さっさと」


 まったく悪びれた様子を見せず、追い払うかのような仕草をするゼロに、リュイの頬が引き攣る。


「あー、リュイ。ゼロの仕事っぷりはオレがしっかり見ておくから仕事行って来い。ワイン買い足しておくから」


「仕方ありませんわね。仕事があるのは事実ですもの」


 ふう、と一つため息ついてリュイは一言二言何かをゼロに耳打ちし、ゼロが頷いたのを見て学院を出て行った。


「シキ」


「ん?」


「案内するからついてこいよ」


「ああ」


 シキは手招きするゼロの隣に並び、一緒に歩きだす。その光景に、周囲の生徒たちは異様なものを見たとばかりに表情を引き攣らせているのだが、シキは見ないふりをした。聞いてしまえば、後々面倒なことに関わりにならなければならないという予感がしたからだ。


「ゼロ、ここで魔法を教えているって言っていたな」


「ああ。魔法というか、魔法による戦闘だな。あとは前帝国史だな」


「前帝国史?」


「俺達がプレイしていた時代のことだ。まだ王国だった時代の歴史。あの時、大体俺らがプレイしていたのは、β版合わせて二百年前後。この時代では戦乱の時代と言われ、詳細がわかっていねえんだよ」


「そこにその当時を生きていたとされるゼロが現れ、ギルドに所属してるとくれば依頼が来るのは当然か。魔法も使えるしな」


「そういうことだ。俺としちゃ、報酬が高くなきゃやりたくねえ依頼だ。面倒くせえ」


「お前、家庭教師とかしたことないのか?」


「ない。俺、人に教えるの苦手だし」


「そうか? オレにいろいろ教えてくれたじゃないか。結構わかりやすかったぞ?」


「あー、それは、まあ、いろいろと」


 言葉を濁すゼロに、シキは首を傾げる。


「……気にすんな」


「あ、ああ」


 ぽん、とシキの頭を軽く叩いてくるゼロの行動は明らかにおかしいのだが、これ以上は聞いて欲しくないという空気を出しているので、シキは口を閉じた。


「話は変わるが、お前の魔法戦闘にこの学院の生徒たちはついていけるのか? お前、魔法だけじゃなくて体術もかなりのもんだろ」


「一応ちゃんと考慮はしてる。さすがに死人出すわけにはいかねえし」


「ふうん」


「シキが来てくれりゃ、魔法剣士志望の奴に当てるんだけどな」


「無理だ。オレも人に教えるの苦手」


 他愛もない会話から、学院内のことに関することまで話し合う二人の空気は柔らかい。しかし周囲にいた生徒達がゼロを見るたびに廊下に張り付いて道を開ける様子に、さすがのシキも耐え切れず、自分より頭一つ分高い彼の顔を見上げて問いかけた。


「ゼロ、お前この学院の生徒たちに何をやったんだ。すごく怯えてないか?」


「いろいろとやかましかったことがあったからシメた」


「…………死人は出てないんだよな。じゃあ、いいか」


『確かめる所が違います!!』


 それまで二人の会話を聞いていた生徒達が、どこかずれたシキの突っ込みに、一斉に突っ込むのだった。






どSと鬼畜と魔王はゼロの代名詞です。

仲間に愛されてはいるけど、ある意味最弱なのがシキです。

天下無敵のお嬢様風女王様がリュイです。



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