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『うっかり邪神(ヤクザ)を舎弟にした箱入り姫の極道スローライフ〜絶品ご飯で神様たちを餌付けして城下町の事務所で暮らします〜』  作者: 月神世一


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EP 5

軍資金10万円と、消えた栄光

「あ、お待ちください!!」

オークの軍勢を一瞬にして氷の塵に変え、オークロードを美しい氷像に仕立て上げた銀髪の青年——フェンリル。

彼がポケットに両手を突っ込み、気怠げに歩き出そうとしたその時、村長を先頭に生き残った村人たちが一斉に地面に這いつくばった。

「フェンリル様! お命を救っていただき、本当に、本当になんと御礼を申し上げればよいか……っ!」

村長の老人が、涙と鼻水で顔をグシャグシャにしながら、震える手で布に包まれた何かを差し出してきた。

「これは、我ら村人が新天地での開拓のためにと、なけなしの金を出し合って貯めていたものです。……全財産ですが、今の我らにはこれぐらいしか……っ」

フェンリルはピクリと眉を動かし、ダルそうにその布包みを受け取った。

中を確認すると、そこには女神ルチアナが適当に流通させたせいで大陸の共通通貨となっている、最高額紙幣——1万円札が、なんと10枚も入っていた。

「……10万円?」

フェンリルはシワシワの五千円札が入ったポケットをポンと叩き、布包みの中の諭吉(1万円札)たちを見つめた。

その瞬間、極寒に冷え切っていた彼の銀色の瞳に、突如として『CR異世界王道トラックでドン!』のレインボーフラッシュが眩しく反射した。

「マジかよおっさん!! ありがとな!! これだけあれば、羽根物どころか、新台の『トラックでドン!』のラッシュ突入まで全ツッパできるじゃねーか!!」

先ほどまで絶対零度の覇気を放っていた神様はどこへやら。

フェンリルは10万円をぎゅっと抱きしめ、100点満点のクズな笑顔を浮かべると、村人たちの感謝の言葉を背に、ルナミス帝国の歓楽街へ向かって音速で駆け出した。

「待ってろよ、レインボーフラッシュ!! 女神ハーレム確変は、この狼王(俺)がいただきだァァァッ!!」

***

——数時間後。

ルナミス帝国、国境都市の巨大なパチンコ店。

「……リーチ! 女神リーチ! 激アツ演出! トラック来たァァッ!! 轢かれろ! 轢かれろ主人公ッ!!」

フェンリルは、汗だくになりながら『CR異世界王道トラックでドン!』の台のレバーを握りしめていた。

村人から貰った10万円は、すでに9枚目の諭吉が台に吸い込まれようとしている。

液晶画面の中で、主人公がトラックに轢かれる……と思いきや、間一髪で猫を助けてトラックが急ブレーキをかける。

画面に大きく【セーフ!】の文字。

「なんで避けるんだよバカヤローッ!! 轢かれて異世界転生しろよ!! チート能力貰えよ!! なんで通常大当りなんだよチクショォォォォッ!!」

フェンリルは台を殴りたい衝動を必死に抑え、最後の1万円札を投入口へ突っ込んだ。

サクサクサクサク……。

無情にも、最後の諭吉は銀色の玉へと変わり、そして次々と台の奥へと消えていく。

フェンリルの脳内に流れていたレインボーフラッシュの確定音は、いつしか『ピー、ピー、ピー……』という、心停止を知らせるかのような虚無の音へと変わっていた。

「……ごふっ」

最後の玉がアウト穴に吸い込まれた瞬間。

フェンリルは口から魂のような真っ白な煙を吐き出し、パチンコ椅子の背もたれに力なく崩れ落ちた。

財布の中身は、フレアから借りた五千円と、村人から貰った10万円、合わせて10万5千円。

そのすべてが、異世界転生トラックのラッシュに敗北し、消滅した。

神話最強の狼王は、ただの『一文無しの敗北者』として、眩しすぎるパチンコ店のネオンの下へ、トボトボと放り出されるのだった。

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