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『うっかり邪神(ヤクザ)を舎弟にした箱入り姫の極道スローライフ〜絶品ご飯で神様たちを餌付けして城下町の事務所で暮らします〜』  作者: 月神世一


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EP 4

俺が、何だって?

空間の温度が急激に下がり、雨上がりのはずの地面に真っ白な霜が広がり始める。

それは、大自然の頂点に立つ『神』の、純粋にして絶対的な怒りだった。

「…………笑えねぇな」

ずぶ濡れだったフェンリルの銀髪から、チリッ、と冷気が立ち昇る。

先ほどまで村を包み込んでいたオークたちの下劣な笑い声と炎の熱気が、嘘のように掻き消えた。

あまりの異常事態に、オークロードは巨大な棍棒を構えたまま、豚顔を引き攣らせて後ずさる。

『な、なんだ!? 貴様、ただの人間では——ッ!?』

「あ? 俺が雑魚?」

フェンリルがポケットからゆっくりと右手を引き抜いた。

その指先から零れ落ちた冷気が、地面に触れた瞬間。

ピキッ……ピキピキピキィィィィン!!!

パチンコ台の激アツ確定音……ではなく、大気を凍らせる鋭い氷鳴りが戦場に響き渡る。

フェンリルの足元から爆発的に広がった魔法陣から、鋭い氷の牙と冷気を纏った巨大な狼たち——『氷狼ひょうろう』が、無数に這い出してきたのだ。

その数、オークの軍勢を遥かに凌駕する数百匹。

「俺が、、何だって?」

銀色の瞳を極寒に冷え切らせたフェンリルが、オークロードを見据えて静かに問う。

その瞳を見た瞬間、魔物の本能が『絶対に逆らってはいけない上位の存在(神)』であることを完全に理解してしまった。

『あ、あ、あ……っ』

オークロードの喉から、言葉にならない恐怖の呻き声が漏れる。

棍棒を持つ手がガタガタと震え、巨体が情けなく縮み上がっていた。

フェンリルは咥えていたマルボロを指に挟み、ダルそうに氷狼たちへ顎をしゃくった。

「喰い散らかせ」

アオォォォォォン!!!

氷狼たちが一斉に遠吠えを上げ、圧倒的な速度でオークの群れへと襲い掛かった。

それは戦闘ではなく、一方的な『蹂躙』だった。

オークの分厚い皮膚も、粗末な鎧も、氷狼の牙の前では紙切れと同義。噛み付かれた端から対象は凍りつき、次々と粉々に砕け散っていく。

数十匹いたオークの軍勢は、ものの数十秒で美しい氷のオブジェ(の残骸)へと変わり果ててしまった。

『ヒィィィッ!!』

たった一匹残されたオークロードが、ついに武器を投げ捨て、フェンリルの前にドスンドスンと両膝をついた。

豚の顔を地面に擦り付け、涙と鼻水を撒き散らしながら必死に命乞いを始める。

『お、お許し下さい! フェンリル様!! どうか、どうか命だけは——!!』

「言っただろ?」

フェンリルは、土下座する巨大な魔物の王の頭に、ポンと冷たい手を置いた。

「笑えねぇなって」

フッ——。

フェンリルが短く息を吹きかけた瞬間。

絶対零度の神の吐息がオークロードを包み込み、悲鳴を上げる間もなく、その巨体を『巨大な氷の彫像』へと変えてしまった。

太陽の光を反射してキラキラと輝くその姿は、皮肉なほどに美しい。

「……ふぅ」

フェンリルは軽く肩を回すと、瞬時に氷狼たちを霧散させた。

そして、何事もなかったかのように村長の方を振り返り、いつもの気怠げな声に戻って口を開いた。

「おっさん、怪我ねぇか? ま、これで道も通れるようになったし、俺は急いでるから行くわ」

パチンコ屋の新装開店(抽選)に行きたかっただけの男は、村を救った英雄の顔など微塵も見せず、再びポケットに両手を突っ込んで歩き出そうとする。

「あ、お待ちください!!」

ポカンと口を開けて呆然としていた村長と村人たちが、ハッと我に返り、慌ててフェンリルの足元に駆け寄って完璧な土下座をキメたのだった。

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