表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『うっかり邪神(ヤクザ)を舎弟にした箱入り姫の極道スローライフ〜絶品ご飯で神様たちを餌付けして城下町の事務所で暮らします〜』  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/25

第二章 クズ狼ともやし炒め定食

金の無心と、最低の神様

ポポロ国の城下町、路地裏にひっそりと佇む『料理屋・深淵』。

その日の昼下がり、夜の営業に向けて仕込みの準備をしていたリアナたちの耳に、重厚な鉄扉が開く音が届いた。

カランコロン、という可愛らしい来客鈴(リアナが後から付けた)の音とは裏腹に、入ってきた足取りはひどく重々しい。

「……姉ちゃん、頼む。金貸してくれぇ……」

「はぁ!?」

カウンターで昼間からジョッキを傾けていたフレアが、素っ頓狂な声を上げた。

そこに立っていたのは、ずぶ濡れになった銀髪のイケメン青年だった。

耳にはじゃらじゃらとピアスをつけ、口元には火のついていない『マルボロのアイスブラスト』を咥えている。

凄まじい顔面偏差値の高さと気怠げな色気を放っているが、その出立ちはどう見ても『雨の日に捨てられた大型犬』である。

彼こそが、神話の時代に大地と本能を司った三調停者の一角——『狼王フェンリル』であった。

「ちょっとあんた! 帝国の貴族令嬢の家で、ヒモニートやってたんじゃないの!? なんでそんなずぶ濡れなのよ!」

「……追い出されたんだよ。女の家で三日三晩、寝ずにFPSゲームのランクマッチ回してたらガチギレしやがってよぉ……。俺の荷物、全部窓から雨の中に放り投げられたんだぜ? 信じられるか?」

「信じられるわよ! 完全に自業自得じゃないのこの駄犬!!」

フレアが青筋を立てて怒鳴りつけるが、フェンリルは全く悪びれる様子もなく、濡れた銀髪をバサッと掻き上げた。

「もう俺には、パチンコしか残されてねぇんだ……。だから姉ちゃん、金くれぇ」

「どの口が言ってんのよ! 神の威厳はどこに置いてきたのよ!?」

そのあまりにも堂々としたクズっぷりに、店の奥で包丁を研いでいた男が呆れたように鼻で笑った。

「チッ。相変わらず、どうしようもねぇクズだな、フェンリル」

「あァ? 誰だてめぇ、俺に説教たれようって——」

凄んで振り返ったフェンリルは、アルマーニの高級スーツを着こなしたインテリヤクザとバッチリ目が合った。

そして、そのヤクザの背後に渦巻く『神話級の絶望ダークマター』の残滓を感じ取り、咥えていたタバコをポロリと落とした。

「——は!? て、てめぇはデュアダロス!? なんで邪神がこんな娑婆に出てんだよ!? しかもなんだそのヤクザみたいな格好!」

「おう。まぁ、色々あってな。今のアッシは、最高に美味い飯を食わせてくれる『お嬢』の舎弟(用心棒)ってワケだ」

デュアダロスはニヤリと笑い、ヤクザらしからぬ手つきで布巾を洗い始める。

フェンリルは完全にパニックに陥った。

世界を滅ぼしかけた絶対悪が、エプロンをつけてグラスを磨いている。過労で死にそうだった不死鳥が、昼間からビールを飲んでくつろいでいる。

なんだこの空間は。自分がゲームをしている間に、世界線でもズレたのか?

「あ、あのぅ……」

混乱するフェンリルの耳に、鈴を転がすような優しい声が届いた。

厨房の奥から、フリルのエプロンを着た亜麻色の髪の少女——リアナが、不思議そうな顔でひょっこりと顔を出したのだ。

「いらっしゃいませ。お客様、ずぶ濡れですよ? お風邪を引いてしまいますから、タオルをどうぞ」

「え……あ、おう。サンキュ」

手渡されたふかふかのタオルの良い匂いに、思わずドキッとするフェンリル。

(なんだこの可愛い子!? ここ、ルナミス帝国の歓楽街よりレベル高ぇぞ!?)

バトルジャンキーにして最強の遊び人であるフェンリルのチャラいアンテナが、ピコンと反応した。

しかし、フェンリルがリアナにちょっかいを出そうとした瞬間、デュアダロスとフレアがものすごい形相で間に割って入った。

「おい駄犬。お嬢に気安く触れようとしたら、次元ごと真っ二つにするぞ」

「リアナに手を出したら燃やすわよ、このヒモニート」

「お、おう……なんだよお前ら、過保護かよ」

二柱のガチギレ具合にドン引きしつつ、フェンリルはふと、リアナの存在に首を傾げた。

そういえばさっき、姉ちゃん(フレア)に金の無心をしたとき——。

「あのぅ……パチンコって、なんですか?」

リアナが、純粋無垢な瞳をパチパチと瞬かせて、フェンリルを見上げてきたのだ。

その瞬間、ヒモニート神の瞳に、パチンカス特有の怪しい光が宿ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ