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無知のアレリア  作者: せきち
第一章「メリアリード編」
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第七話「盲人と英雄」

(ワシ)は昔、王都で真の英雄と言われていてな」

「はぁ」

「魔術師単独で、魔族を20と4体討伐して歴代での最大討伐数を記録した、まさに最強の英雄だったんだよ」


王都にある、ある酒場での事だった。

メリアリードの3人は王都で仲間をもう一人募集しようと、仲間を酒場を周って勧誘していた。


「爺さん、すごいな。さすが英雄だ」

「だろ」

「おい、アレリア。次の酒場にいくぞ」

「あ、はーい。じゃあな、爺さん」

「ん?…おう」


カレアがアレリアに呼びかけ、メーデル合わせた3人がその酒場を後にする。


酒場の扉を勢いよく閉めて、しばらく歩いたのちカレアが、アレリアに問う。


「…アレリア」

「ん?」

「お前、もしかして今のおじいちゃんを勧誘しようとした?」

「あぁ、最強の英雄だったって言ってたよ」


カレアは呆れたようにアレリアの頭を掴み髪をわしゃわしゃした。

女っぽい髪型にしてるアレリアの髪がぐしゃぐしゃになる。


カレアより、身長が低いアレリアは少し上を向きながらムキになる。


「何を…」

「アレリア、ああ言う感じのおじいちゃんは大体ほら吹きだから、勧誘はやめよう」

「……でも、最強の…」

「英雄になって、生還したやつはいない」


え、それは初耳だ。

一瞬固まって、アレリアはポツリと呟く。


「それは…、知らなかった」

「あぁ、言ってなかったからな」


アレリアは打って変わってしゅんとした。


英雄たちは今も戦っているのか、それともどこかで屍となっているのか。

誰も知る由のないことだ。


「へぇ………」

「………」


少しの間。


カレアは少し反省したようにアレリアに謝る。


「ごめん、もう少し早くするべきだった、この話」

「うん」


また、少し間があく。


「…カレアは」


アレリアの言葉が一瞬つっかえる。


「…カレアは死ぬの、怖くないのか」


アレリアは元々あまり生に執着はない。

かと言って、死にたくもない。


「…怖くないなんてことは、ないよ」

「だよな」


最近、初めて生きてて楽しいと思えるようになった。


カレアとメーデル。

二人を生かすためだったら、「見えない魔術」を使っても、身体が勝手に再生するということがバレても、二人から敬遠されてもいい。


二人は家族だ。

俺にとって、たった二人の大切な人間だ。

その仲間の、俺も心は人間だ。


…いや、人間じゃないな、心も。


アレリアが口を開く。


「俺は、生まれた時から家族がいなかったから…」

「俺らもだよ」


カレアの横にいる、メーデルが話に入ってきた。

カレアの肩に腕をかけて、話し始める。


「俺らも孤児だ、それぞれ別の理由だけど」

「…知らなかった」

「だろ、言ってなかったからな」


二人とも、生まれた時から親がいない。親戚に引き取られて過ごしていたらしい。


「俺らが守れるのはこのパーティだけだ」


その言葉は、アレリアに深く刺さった。

二人の言葉は真っ直ぐな、本当のことだ。


だけど俺は嘘をついている。

俺には親という存在を持てる生き物じゃないんだ。


「メーデル、カレア………」

「ん?」


俺は今の姿のまま、二ヶ月前に生まれたばかりなんだ。


俺は、

俺は、


人間じゃ、ないんだ。


「………次の酒場に行こう」

「おう」


アレリアは二人の後ろ姿を追いかけて歩き始める。


心が締め付けられる。

どうやら、こういう痛みの治癒は俺の身体の管轄外らしい。


ーーー


結局、冒険者の勧誘はできなかった。

そしてその日の夜。


宿での事だった。

ちょうどアレリアは明日の服を用意していた時だった。


「アレリア!ちょっと来て!」

「ん?」


メーデルとカレアがこちらに手招きをする。

不審に思いつつも、アレリアは二人の方による。


「…なんだ?」

「プレゼントでーす、じゃじゃーん!」


メーデルが囃し立て、カレアが後ろから一つの杖を取り出した。


大きい。

1メートルはゆうに超えるサイズだ。


「おぉー、でかい」

「だろ。これをアレリアにあげます」

「え、まじか」


このサイズの杖となると、8000ヘルトはする代物だ。

そう簡単に買えるはずがない。

冒険者なら尚更だ。


「どこから出てきたんだ、これの金」


と言いつつ、出所はわかっている。

勿論、竜討伐の報酬だ。


だとしても、8000ヘルトは冒険者にとってかなり高い値段だ。


「この前の竜討伐のご褒美だよ」

「おぉーありがとう」


杖があると、魔術のコントロール精度が自分の手と比べて段違いによくなる。

強くなることに直結するのだ。


「もともと、王都に着いたら買う予定だったんだよね」


にっこり笑うメーデル。

ずっしりとしたその杖には、なにか責任感を感じさせるような何かがあった。



そして次の日。


「儂は20と6体の魔族を…」

「2体増えてるぞ、爺さん」


「真の英雄爺さん」がいる同じ酒場を巡っても誰もいない。

アレリアはおニューの杖を持ち、辺りを巡った。


しかし、やはり2日目も勧誘は難航していた。


「うーん、やっぱりそう上手くいかないね」

「酒場には冒険者という名の飲んだくれしかいないし」


舗装された王都の大通りを歩きながら、メーデルとカレアがぼやく。

アレリアも心を折られかけている。


明日は任命式だ。

タイムリミットが近い。


それまでに仲間を募らなければ、近接担当が一人だけの、か弱い英雄パーティが生まれてしまう。


「まぁ最悪、俺だけでもどうにかなるよ」

「んなわけ」


うちのパーティ唯一の近接、メーデルが謎に胸を張る。

カレアがそれを一蹴する。


正直、メーデルは普通の剣士二人分に匹敵する実力を持っている。

それほどまでにメーデルは才能と実力を併せ持っていた。


だが、魔術師ばっかり楽をして前衛を任せっきりというのはよくないことだ。


メーデルがさっきとは打って変わってぼやく。


「でもさ、このままじゃ見つからないと思うんだよ」

「まぁ、確かにそうだけど」

「うーん…」


3人は悩んだ。

悩んだ末にこんな事を考えている暇があったら歩き回って勧誘した方がいいことに気がついた。


そしてまた少し、また少しと時間が過ぎていく。


夕方になった。

辺りはすっかり暗くなって、冒険者がぞろぞろと王都の中に入ってくる。


「よーし、こっからが仕事だ」

「だな」


冒険者は、夜に酒場に集まりやすい。

夜が狙いどきだ。


「行くぞ!アレリア!カレア!」

「おーう!」


そして3人は夜の酒場へ駆けて行った。


ーーー


「…………」


結果は惨敗だった。


昼からいろんな酒場を回ったが、逆にそれが仇となり、王都の全ての酒場を出禁になってしまった。


流石にこれは想定外だった。


「こんなはずじゃ…」


メーデルが追い出された酒場の前で、呻き声を上げる。

アレリアもその横で、頭を抱えながら神に祈っていた。


二人とも、放心状態だった。

カレアはそんな二人をみてため息をつく。


「じゃ、宿に帰ろ。メーデル、アレリア。明日は大事な日なんだから」

「…はーい」


渋々帰路を歩く二人。


数歩歩いたのち、目の前を、目を瞑って小さい杖を持ち、地面に当てながら歩く二人組が通る。


盲人だ。

白髪の女と、黒髪の男。


アレリアは聞いたことはあるものの、見るのは初めてだったので通り過ぎる様子を少しの間眺めた。


ちょうど、すれ違った時だった。


ぬるり。という気配。


「ん?」


声だ。

耳元で声が聞こえる。


「君、人間?」

「………え?」


心臓がドクリと、跳ねる音がする。


後ろから声。

あの盲人だ。


女の、白髪の方だ。


不意に後ろを振り返ると、その女が俺の方を見て言葉を続ける。


「明らかに…」

「あー、すみません。妹が」


その白髪の女の肩を、黒髪の男が掴み、話を遮る。


「好奇心旺盛な子なんです、すみません魔術師さん」

「あぁ、いえ…」

「さぁ、いくよ。リオン」


女の盲人の方はいかにももどかしい顔をして、男の盲人の方に返事をする。


「…わかった」


そういうと、二人は酒場に向かって去って行った。


心臓の音はまだやまない。

なんだ、あの女は。


なんで、なんで、俺を知ってるんだ?

今まで誰にもそう思われたことはないのに。


盲人だから、他の感性が優れているのか?


あと、あいつの気味の悪い気配はなんだ?

あの、ぬるり。という感じ。


他の人間にはない、何かを感じる。

誰だ?俺と同じ境遇の生物だったりするのか?


様々な憶測を立てながら、アレリアは前に振り返る。


カレアとメーデルが立ち止まり、アレリアを待っていた。


「さ、行くよアレリア」

「…ん」


再び、歩き出す。


心臓の音はやんだ。

落ち着いてきた。


あの女、見たところ見た目はアレリアも歳は下だ。

連れの男の言う通り、好奇心旺盛なだけのかもしれない。

変な気配も、気のせいなのだろう。



ん?


何かが引っ掛かる。



女の発言じゃない。

もっと他のこと。


なんだ?


さっきの二人の言動。仕草。

どれだ?


何がおかしい。


あ。


あいつだ。

あいつ、あの男だ。


あの男なんで、


「なんで…俺が、魔術師って….」



再度、アレリアは後ろを振り返る。


盲目の二人の姿は人混みの中に消えていった。


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