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無知のアレリア  作者: せきち
第一章「メリアリード編」
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第六話「火葬」

メリアリードの今回の依頼は引越しの手伝いだった。


とはいっても100mぐらい先の建物に荷物を移動するだけだ。


メーデルは重い荷物担当。

カレアも風魔術で持ち上げられるため重い荷物担当。

アレリアは筋肉が足りないので軽い荷物担当だ。


アレリアが問う。


「仲間を増やすのか?」

「うん、王都でいい人がいたら、盾役か戦士が欲しいね」

「なるほど」


カレアが風魔術で荷物を慎重に持ち運びながら言葉を続ける。


「アレリアも、魔族と戦うために戦力は増やしたいと思うでしょ?」

「たしかに」

「たしかに」

「お前が言い出したんだろ、メーデル」


メーデルもアレリアと声を合わせて会話に入ってきた。

それをカレアは冷たくあしらう。


木製のいかにも重そうな棚を軽々と持ち上げているメーデルをみると、やはり剣士なんだなと思う。


ーーー


「よし着いた。これで任務終わり!」


メーデルは棚を依頼主の新居に丁寧に配置して、腰に手を当ててため息をつく。


やっぱり、いくら剣士でもこの重さの荷物を何往復も持ったら疲れるらしい。

アレリアなんて、移動だけでクタクタだ。


「ありがとうございました。報酬の6000ヘルトです」

「はい、受け取りまーす」


現在、メリアリードの所持金9000ヘルト。



「じゃ、今日は光の魔術の説明するね」

「わかった」

「はーい」


不定期に行われる、カレアの移動しながら魔術勉強会。

メーデルももはや立派な生徒の1人だ。


今回はアレリアの「後天性魔術」の光魔術発現が本当なのか確かめるためにもこの授業をしている。


「光の魔術は特殊でね、現在詠唱が解明されているものは三つしかない」

「三つ?それだけか?」

「うん」


カレアは人差し指を近くの低木にむける。

詠唱。


光線(ラ・ルーシャ)


無音。

カレアの杖の先から現れた白い光は瞬く間に低木を貫通して、地面に着弾する。


速い。

ものすごく速い魔術だ。


「速いな」

「だろ。大体の雑魚魔獣相手だったらこれだけでも致命傷になる。他の属性魔術と比べても遜色ないし、なんならトップクラスで強い魔術なんだよ」

「なるほど」


確かに、この速さだったら反射で反応するのも難しい。


「そして次、治癒(ラ・レイ)。これは治療用の魔術。これを覚えてるだけで、魔術師から回復役にもなれるよ」

「へぇ」

「あともう一つ、防護(ラ・クト)ってのがあるんだけど、俺はこれを使えない」

「使えない?」


魔術は詠唱さえ覚えていればだれだって使えるはずだ。


使えない?

どういうことだ?

魔力消費が大きいのか?


「なんでだ?」

「いや、単純に魔力操作が難しいんだよ」

「あー」


本当に単純だった。

詠唱しても、魔力がすぐに霧散して消えるらしい。


光魔術は使えるだけで、魔術師、回復役、盾役全てをこなせる、オールマイティな魔術だということがわかった。


そして盾だったら水とかの魔術で代用が出来るので、実質カレアはチームの大体の役割を担っていることを今実感した。


「これらの光魔術の長所は、とりあえずこれあったらなんでも出来るところで、短所は光魔術を使った応用魔術ができないところ」

「なんでだ?」

「他の魔術と違って、光はまた別の部類なんだよ。まだいまいち解明されていない魔術だから、規定の詠唱以外の使い方がわからないんだ」

「良くも悪くも使いずらいってことか」

「そ」


あと、光魔術は治癒が1番発現しやすいので、治癒しか使えない人は神官とか聖女になって生計を立てていくらしい。


だから結構光線の魔術を扱えるカレアもすごいってことだ。



多分、世界的にみてもカレアは強い部類の魔術師だろう。

魔族ともいい勝負するのかもしれない。


ひたすらに感心するアレリアと、メーデルであった。


「一応さ、治癒の詠唱してみて」

「俺がか?」

「うん、念の為もう一度」


アレリアは自身の右手に魔力を込める。

詠唱。


治癒(ラ・レイ)


…何も起きない。

やはり、「後天性魔術」ではなかったのかもしへない。


ただの思い違いか、とカレアは肩を落とした。

怪訝とした顔でアレリアが尋ねる。


「…なんでさせた?」

「…いや、なんでもない」

「何だお前」



ーーー


そして、一ヶ月に渡る長い旅も終わり、メリアリード3人はようやく王都に着いた。


「でけぇ」

「だろ」


目の前にある城壁を見て、興奮するアレリアと、何故か自慢げなメーデル。


「………」


カレアはその後ろで呆れながら2人を見つめていた。


王都リオールドはここ200年何の内乱も起きずに、魔族との境界線が割と近いにも関わらず平和そのもの。


厳格な国王と、その忠臣により永くこの都市は守られてきたのだ。


3人は南門から王都に入る。

すごい活気だ。王都の南側には冒険者の憩いの場がたくさんあるので、大体の冒険者はここで毎日を過ごすこともある。


「じゃあ今日はとりあえず宿を探してどこかに泊まろう。任命式が三日後だからそれまでは観光だね」

「任命式?」

「うん、魔族と戦うために集められた冒険者は英雄って呼ばれるんだ。英雄任命式は冒険者たちを鼓舞したり無事を祈るために行われる儀式のこと」

「へぇ」


アレリアの問いに答えるカレア。

この国は未だ伝統に縛られていて、わざわざ国王自らの手で任命式をしないと魔族の領域に入れないっていう面倒くさいきまりがある。


今回はおおよそ25組のパーティが招集されたが、わざわざ来るのはおおよそ15組くらいだろう。


死ぬ可能性がある場所に自ら行きたがらない冒険者もいて当たり前だ。


そんな危険を冒してでも冒険者が魔族のいる北へ進むのは訳がある。

元々北部を統一していた、王都に続く第二の都市、セルベールは巨万の富を蓄えていたという。


現国王は、魔族を撃退し最北のセルベールの城跡を見つけ、富を持ち帰ってきたものにその全ての財産を受け渡す、というエサを放り込んだ。


それに食いついたメリアリードたち冒険者というわけだ。


「なかなかに面白い旅になるぜ、これは」

「そうだな」


メーデルが新しい語尾を使い始めた。

これはいつものことなのでアレリアは軽くあしらった。


アレリアも、メーデルの扱い方がわかってきたようだった。


ーーー


そして、王都の北門付近で。


王都の北側は南側より活気はなく、人も少ない。

衛兵の駐屯地として機能しているらしい。


あたりは常にシーンとしていて、まさに魔族への恐怖の象徴だ。


「ヴィアルムいないかなー」


「竜巻」の魔族フェリオンは、王都前の門の近くで待っていた。


門の前にいる衛兵3人は既にフェリオンの横で肉塊になっている。

声を上げるまもなく、落下死したのだろう。



滴る血を避けながら、城壁にもたれかかるフェリオン。


約束だとここで落ち合う予定だった。


忘れちゃったのかな。あいつそういうとこ適当だし。


しばらく待つと、


「お、久しぶり」


門から、両目を閉じた黒髪で長身の男が入ってくる。

フェリオンはそっちを向いたのち、白い目を輝かせて、近くに寄った。


「ヴィアルム!久しぶり」

「うわこれお前?衛兵たち殺ったの」

「うん、魔族だーって騒がれるの嫌だからさ」


足元の肉塊を見ながら呆れたようにヴィアルムと呼ばれた魔族は一言詠唱する。


火葬(フ・リート)


すると、目の前の肉片三つが、鎧ごと溶けてなくなった。

ものすごい火力だ。


「火葬」のヴィアルム。

それがこの魔族の名前だった。


フェリオンが、おー、と歓声を上げる。


あっという間に灰になったそれらは、フェリオンの竜巻によって飛ばされてった。


「これでよし」

「ありがとー」

「人里に来たら人間は殺したらダメなんだよ、フェリオン。殺意を向けるのもダメだ」

「はーい」


こいつ話聞いてるのかなと思いながら、ため息をつくヴィアルム。


話が終わったフェリオンはヴィアルムと一緒に王都の中に堂々と侵入する。


任命式の準備とかで衛兵が駆り出されているので警備は薄くなっている。


故に魔族2人はこんな簡単に入れる。

あまりの人気の少なさに意気消沈しているフェリオンはヴィアルムに問う。


「そういえば、ヴィアルム。どうやって魔族とばれずに人間と生きられたの?魔力はともかく、目はどう頑張っても直せないよ」

「あ、、そうそう、人間がいるところだと俺らは盲人として暮らさなきゃいけないんだよ」


フェリオンの知らない単語が出てきた。


「モウジン?」

「うん、ずっと目を瞑っている人のこと。大体の人間がそれで気ぃ使ってくれるから。俺らは人間に擬態しながら王都で過ごすんだよ」


ふーん、とわかったのかわからないのかどちらかわからない顔で頷くフェリオン。


「天才だね、ヴィアルムは」

「だろ」


そういうと、人間のふりをした魔族2人は建物の影へと溶けていった。

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