第五話「討伐!!!!!!!!」
ザンッ!
岩鱗竜の鱗をメーデルの剣が叩き切る。
メーデルの緑のローブが翻る。
「カレア!無事…」
「グラルルルルルルルァァァァァァ!!!」
メーデルの声が遮られ、激昂した竜は、狂い叫ぶ。
「ぉわっ!!」
メーデルは竜のはためかせた翼の風圧で吹っ飛ばされる。
地面に転がりながら、メーデルは地面に剣を突き立てて、綺麗に立ち上がる。
右脚が切り離され、バランスを崩しながら
こちらに突進してくる岩鱗竜。
右脚を切られ、右手を潰され、首元に穴が空いてもその闘志は衰えない。
「グルフルルルルルルルル………!!」
再び、身体から岩の鱗が伸びる。
ハリネズミみたいに伸びた鱗は弧を描き、標的をカレアとアレリアのみに絞る。
何故、この2人を狙うんだ?
体勢を立て直していないメーデルの方を狙うべきだったのに。
いや、2人にじゃない。
1人に集中している。
「俺?」
「逃げろ!アレリア!」
アレリアにだ。
カレアがアレリアを横に押しだすが、間に合わない。
これは、まずい。
ザシュ
「あぁあ゛ぁああっ!」
くそっ、水の盾が間に合わなかった。
刺すような痛みが身体全身に感染していく。
アレリアの脇腹から血がぼたぼたと溢れる。
鱗の一つが刺さってしまった。
「アレリア!」
カレアは鱗の伸びる勢いのまま、地面に叩きつけられるアレリアをみて、声を上げる。
くそっ!くそっ!
攻撃を喰らってしまった!
しかも、かなりの深手だ!
岩鱗竜は、メーデルとカレアなんて見向きもしない。
ただ、全力でアレリアを殺す魔獣となっていた。
「カレア!治癒を!」
メーデルがアレリアの脇腹に伸びる一本の鱗を叩き切り、脇腹から思いっきり引き抜く。
「痛っ!」
「治癒!」
アレリアの悲鳴。
カレアの詠唱。
そして、アレリアの身体の傷口はみるみる回復…
「……しない」
「え!?」
岩の鱗を剣で対処しているメーデルがもう一度問う。
「なんだって!?」
カレアが自分でも何が起きたかわからない、と言わんばかりの困惑した顔を見せながら言った。
「アレリアが、治癒されない」
「いや、出来た」
突然、カレアの目の前で、地面に倒れていたアレリアが起き上がる。
カレアがメーデルの方向からさらに振り返る。
「はぁ?」
「前を見ろ、カレア」
アレリアのローブは血で汚れているものの、その内側の傷口は完全に回復していた。
アレリアは走り始める。
それを見届けたメーデルの叫ぶ声が聞こえる。
岩鱗竜の魔術は全てアレリアに向かっている。
アレリアは全力で走りながら攻撃をかわす。
「何でか知らんけど、ヘイトは全部アレリアに行ってる!!カレア!魔術撃ちまくれ!」
「……了解!」
我に帰ったように立ち上がったカレア。
杖を握りしめ、詠唱する。
「光線」
「おらァ!」
カレアの光線が竜の顔に直撃し、メーデルが首元に剣を突き刺す。
いい連携。
「メーデル!とどめ!」
「待って、剣抜けない!」
「はぁ!?」
メーデルが首元に突き刺した剣はびくとも動かない。
魔術のリソースが裂かれていても、上位種の竜だ。もちろんそう簡単に殺させてはくれない。
そして、メーデルの不運は続く。
「グアアアァァア!!!」
「…マジかマジかマジかああぁ!!!」
竜は咆哮と共に翼をはためかせて、その場で飛び上がった。
まだ首元には剣が刺さっていて、それを掴んでるメーデルごと竜は飛んでいる。
「メーデルーーー!!!」
「カレア!アレリア!助けて!」
叫ぶカレア。
情けない悲鳴をあげながら宙ぶらりんなメーデル。
もう結構な高さまできた。
ここから落下したら骨折どころじゃ済まないだろう。
「まかせろ、メーデル」
アレリアの声。
アレリアに岩の鱗が狙わなくなり、アレリアもようやく自由に動けるようになった。
カレアとアレリアが目を合わせて合図を交わす。
魔術師2人相手に空中戦は悪手だ。
何故か。
「光線」
「水の槍」
理由はこれだ。
射程距離は竜よりも人間の魔術の方が長い。
二つの魔術が竜の両翼を根本からへし折る。
「グアアアァァア!!!!」
すると、竜はなす術なく自由落下していった。
そしてメーデルの声。
「なーいす」
メーデルは空中で体勢を整える。
両手で刺さったままの剣を握る。
そして、
「グオ」
ズドオオオォォォォォォォォォン!
辺りに爆音が響き渡る。
砂煙が辺りに舞う。
メーデルが地面に向けて振り落とした剣は、竜の首の拘束を振り払い、岩鱗竜の首を切り落とした。
竜の首が地面にゴロゴロと転がる。
「ふー…」
一息ついたメーデル。
片手を腰に剣を持つ方の手を上に掲げ、決めポーズをする。
そして叫ぶ。
「討伐!」
パーティ名「メリアリード」
上位種魔竜 岩鱗竜、討伐!
「ありがとうございます!お陰でしばらくは安泰に暮らせそうです!報酬の20000ヘルトです!」
「やったー」
メーデルとアレリアがウキウキしながら報酬を受け取る。
麻袋の中に、金貨20枚。
本当の20000ヘルトだ。
「いやー、よかったよかった」
「だな」
メーデルとアレリアはほくほく顔で金の入った麻袋を抱き抱える。
よかった。
「見えない魔術」からだんだん距離を取れている。
だんだん自分が人間に近くなってる気がする。なんとなくだけど。
でもなんで、あの岩鱗竜は俺だけを狙ってきたんだ?
メーデルを狙われたらまずかった場面でわざわざ1番離れていた俺を狙う意味がわからない。
やはり、俺の出自に問題があるのか。
竜を狙わせる何か、特別なものが俺にはあるのか。
自分のことが、1番わからない。
竜から負った深手のことも、カレアがちょうどよく治癒してくれたお陰でバレずに済んだ。
これからはカレアを信用して、もっと戦いの前線に行ってもいいのかもしれない。
一方、カレアも何か考え事をしていた。
おかしい。
深手を負ったアレリアを治癒しているときのことだ。
明らかにアレリアは俺の魔術で治癒してはいなかった。
アレリアの傷口から俺の魔力の流れが感じられなかった。
アレリアは何の疑問にも思ってなさそうだった。
つまり、アレリアは無意識で自分自身を治癒した。
「後天性魔術」というものがある。
アレリアは魔術を習い始めてから、新たに光魔術を習得しかけているのかもしれない。
今度、また聞いてみよう。
双方の解釈が微妙にすれ違う。
そんなこんなで、竜を討伐したメリアリード。
王都までは残りわずかの距離だ。




