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無知のアレリア  作者: せきち
第二章「竜王編」
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第三十話「攻めだ!」

一方、リエルアたちは。


「リエルア!無事か」

「ん、大丈夫!」


暗闇の森の中で、獲物を構えていた。


創剣(カレ・トリア)

「くるぞ!」


ガサッ。

木が揺れる音。


上だ。


二人の上方向から、槍が五本降ってきた。

エーリの魔術。


「構えろ、リエルア」

「おう」


カルトがすぐさま腕を振り上げ、槍を全て大盾で叩き落とし、霧散させる。


「…引きこもりめ」


強い。

盾役は、魔術を除いた飛び道具の対処に優れているのも特徴の一つ。


カルトの筋力も相まって、カルトの持つ大盾はもはや鈍器になっていた。

エーリに対する、完全なるメタだ。


故に、エーリは暗闇の中から二人を殺そうとただ遠隔で魔術を発動することしかしなかった。


リエルアとカルト。

お互いに遠距離攻撃ができない。


遠くから攻撃されると手も足も出なくなる。


「リエルア、無事か」

「うん、ありがと」


カルトは相変わらず、リエルアに過保護な男だ。

いちいち、リエルアの安否を確認してくる。


リエルアもそれを母性のようなものだと認識している。

だからこの二人は本物の親子みたいな感じだ。


「…どうする、カルト。なんか案ある?」

「ない、な」


二人は辺りを見渡す。


詠唱が聞こえる方向も、よくわからない。

どこから襲われているのかも、どこに注意を向けたらいいのかもわからない。


とにかくエーリを暗闇の中から引っ張り出さないと、話ににもならないということだ。


「おーい!!正々堂々勝負しろーーー!!!」


リエルアが両手て口の横に当て、叫ぶ。


カルトは慌てて耳を塞ぐ。

そうだった。

こいつの叫び声とか、泣き声ってめっちゃ大きいんだった。


カルトが耳を塞いでたにもかかわらず、キーンと耳鳴りがする。



エーリがもし、プライドが高いやつだったら出てきてくれるかもしれない。


森の中に、リエルアの声が響き渡る。


二人は辺りの暗闇をキョロキョロ見渡し、エーリを探す。


「…お前らに時間をかけるわけにはいかないんだ。早く兄上に助太刀しにいかなくては」


声が聞こえた。

エーリだ。


兄上っていうのは、きっとメーデル達が戦っている魔族のことだろう。

魔族に兄弟とかいるんだ。


「なら、遠くからの攻撃をやめてみろよ」


カルトが声が聞こえた方向を向き、言葉を吐き捨てる。


捉えた。あいつのいる方向を。

カルトは自身の大盾を構え、リエルアの前に出る。


万が一の時のためだ。


「じゃあ、そうしようかな」


後ろ?

声が後ろから聞こえた。


さっきまで前方向にいたはず。

じゃあこの一瞬で背後に移動したのか。


声の方向は背後の暗闇。


「構えろ」

「了解」


リエルアとカルトは後ろに振り向き、お互いの得物を構える。


「………」


意識を、前だけに集中させる。

背後も警戒しながらひたすらに待つ。


………



………



…ガサッ


音。

後ろだ。


「後ろっ!」


リエルアが斧槍(リーフェ)を構え、背後に足を伸ばして振り返る。


カルトも一瞬遅れて後ろを振り返る。

大盾を構えながら振り向くのは力がいる。


また背後に移動したのか、あの魔族。


「いるか!?リエルア」

「…いない!」


音の元にリエルアに叫ぶカルト。

しかし、帰ってくるのは困惑した声。


…何かがおかしい。


一瞬、振り返るリエルア。

何を思ったのか、こちらに向かって顔を青くして叫んだ。


「危ない!カルト!」

「…は」


危ない?

何が。


魔族だ。

エーリだ。


攻撃は、背後から。


「ぁぐっ!」

「釣られたな」


熱い。

痛い。


後ろからの声。


足元を見ると、下腹部に剣が突き刺さっていた。

赤い。


刺された。

背後からの、エーリの剣に突き刺されたのだ。


カルトは罠にかかったのだ。

リエルアがこちらに方向転換し、叫ぶ。


「カルト!」

「大丈夫、大丈夫だ」


脳内で、すぐさま情報を補完する。


カルトは、罠にかかって後ろを振り返った。

そして背中からエーリが攻撃してきた。


今は剣が身体を貫いた状態。

なるほど、…爪が甘いな。


「突き刺さない方がいいんじゃないか?」

「…?何を…」


カルトは上半身に突き刺さる剣の先端を両手で掴み、身体を横に強く揺らす。


想定外の行動に、思わず背後のエーリが叫ぶ。


「嘘だろっ!」


剣を強く掴んでいたエーリは、離すのが一瞬遅れ、カルトの横揺れをもろに食らう。

剣に身体を弄ばれ、横に向かって吹っ飛んでいった。


「ぅがっ!」


ドン!


エーリはその勢いのまま、近くの木の幹に激突し、地面に音を立てて落下する。


「今だ!リエルア!」

「わかった!」


カルトは自身の体に刺さった剣を抜いて、筋肉で止血をする。

なんでこんなことができるんだ?


意味がわからない。


「カルトの仇ぃーー!!」


リエルアはすぐさま地面に横たわるエーリに近寄り、斧槍(リーフェ)を振り上げる。


因みに、カルトに命の別状はない。


創剣(カレ・トリア)


リエルアの得物を振り落とす先に、両手剣がバッテンの形で二本現れた。


ガキン!


大きな金属音を立てて、リエルアの攻撃は弾かれた。


「くっそ」


攻撃を弾かれ、腕が一瞬麻痺したリエルア。

両手がじぃーん、と痛む。


そんなガラ空きの下腹部目掛け、剣先が飛んでいく。

地面に倒れ、苦悶の表情をしているエーリがこちらを見て嘲笑う。


「詰みだ」

「詰みじゃないし」


リエルアは少し笑い、地面を強く蹴る。

3メートルほど飛び上がる。


どんな脚力だ。


剣をかわした勢いで斧槍を再び構え、地面のエーリに標準を合わせる。


再び、目を合わせる二人。


「マジか」

「喰らえや」


リエルアは勢いよく得物を振りかぶる。

目線はエーリに合わせたまま。


どんな動きをしようと対応してみせる。


創剣(カレ・トリア)


エーリの手のひらから勢いよく剣が生える。

そしてそれを掴み、両手で構える。

攻撃を受け流す体勢だ。


斧槍と創剣が激突する。


ガキン!


火花が散る。

エーリの眼前で二つの得物は衝突。


「ぐっ」


強度よりも創る速度を優先した創剣は、その攻撃に耐えられずに刀身が真っ二つに割れた。


リエルアがニヤリと笑う。

その勢いのまま斧槍を振りかざす。


「っら!」


舞う血飛沫。

エーリにようやく一撃入った。


左肩から右腰にかけて、大きな傷跡ができた。


「ぎぃっ!」


エーリは下唇を噛み、叫ぶのに耐える。

痛い。


リエルアは休む暇を与えずに再び刃先をエーリに向ける。

エーリの詠唱。


創剣(カレ・トリア)!」


両手をリエルアに掲げるエーリ。

手の甲から二本の剣が勢いよく生える。


「ぅあっ!」


リエルアはギリギリ、腰を曲げて剣先が頭に衝突するのを耐えた。

思わず肺から空気が漏れた声が出た。


リエルアの姿勢が崩れる。

エーリの攻撃は命中しなかったが、相手の追撃は免れた。


ここから、引くか攻めるか。


「………っ」

「っぶないな!」


リエルアは叫びながら斧槍を構え直し、突きの体勢をとった。

槍の部分で攻撃してくるつもりだ。


「………」


エーリも剣を両手で構え、いつでも逃げか攻撃ができるように神経を研ぎ澄ます。


エーリの上半身の傷も癒えてきた。

比較的浅い攻撃で良かった。


「………」

「………」


少しの沈黙。


どうする。

逃げるか。


もう一度、暗闇に逃げて体制を整えるか。

それとも、攻めか。


逃げか、攻めか。

逃げか攻めか。

逃げか攻めか。


「……」


額には汗が光る。

エーリは大きく息を吸う。


そして、叫んだ。


創剣(カレ・トリア)!」


前に踏み込んだ。

エーリは自身の右手にあった剣をリエルアに向けて投げる。


「やばっ」


リエルアも突きの構えをしながら、剣を斧槍で弾く。


エーリは今、詠唱をしていた。

リエルアが剣を弾いてる今は剣を創り出してるはず。


つまり今攻撃はない。

攻めなくては。


「逃げろリエルア!」


後ろから声。

カルトだ。


逃げろ?

なんで。


リエルアは視線をエーリに戻す。


「は」


リエルアの目の前には、剣を一本両手で握りしめたエーリ。

すぐ近くに迫ってきていた。


再び、背後のカルトから声が。


「詠唱は嘘だ!」


魔術は詠唱をしても、魔力を込めなければ発動しない。

さっきのエーリの大声詠唱は攻撃を認識を一手遅らせる、ブラフだったのだ。


エーリの剣先がリエルアの腹に当たる。

それと同時に、リエルアの斧槍の槍の先端がエーリの胸に当たる。


「……っ!」

「…ははっ」


エーリは静かに笑う。



攻めか、逃げか。



エーリは一歩踏み出す。

お互いの獲物が、お互いの腹と胸を貫いた。


「っがあっ!」

「…っぐぐぁ!」


お互いにうめく二人。

エーリは剣を握りしめた両手に全ての力を込めて、前に押し出す。


「ぁがっ」


リエルアも負けじと、槍をさらにこちらに押し込む。


「ぐぎぁっ」


痛い。

再生が追いつかない。


血が、身体からたくさん出ている。

エーリの頭に、また自分の声が。



逃げか攻めか。



エーリは口から血を吐きながら、ガラガラの声で笑い、叫んだ。


「攻め!だァ!!」

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