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無知のアレリア  作者: せきち
第一章「メリアリード編」
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第二話「目的地」

その日、夢を見た。

周りは草原で囲まれていた。


「アレリア!走れ!逃げろ!」


どこからか、声がする。

メーデルの声だ。


「おい追いつかれるぞ!」


カレアもいる。


何に追いかけられているんだ?

何で2人はこんな焦って走っているんだ?


「…ぇ」


後ろから殺気を感じた。


たくさんの足音が聞こえた。


振り返る。


「は?」


そこには猪の魔獣で溢れかえっていた。

こちらへ、全速力で向かってくる。


「はぁ?」


アレリアは慌てて足を前に走らせる。


「おい!アレリア!」


カレアの声。

迫る足音。

速くなる心音。


「くっそ…」


何かを決心したアレリアはこちらへ向かってくる魔獣たちに腕を向ける。


水波(スレ・フト)!」


…何も起きない。

魔術が発動しない。


慌ててアレリアは別の詠唱をいう。


爆発(ルク・セルク)!」


何も起きない。


火焔(ル・ナーシャ)!」


何も起きない。

後ろから、「ダメだ逃げろ!」と叫ぶメーデルの声が聞こえる。


魔獣が近づいてくる。

パニックになる。


あ…氷塊(ス・レクトム)!」


何も起きない。


見えない魔術(シャ・ラーム)!」


何も…


いや、消えた。


魔獣100体ほどの大群が。

たった一つの詠唱だけで。


不意に口から漏れた詠唱一つで、ここまでのことが出来るなんて。



しばらくしてから我に帰ったアレリアは後ろに振り向く。


「2人とも!倒し…」


誰も、いない。

2人ともそこにはいなかった。


「…え」


さっきまでいたのに、さっきまで…


え、どうして。なんで。


「カレア?」


返事はない。


「メーデル?」


返事はない。


誰もいない。

そこにはだれもいなかった。


アレリアはひとりぼっちだった。


ーーー


目が覚めた。

内容はよく覚えていないけど、悪夢を見た気がする。


上をみる。すぐ近くに床がある。


「…………?」


おかしい。

寝た時は二段ベットの上の段だったのに、起きたら下の段にチェンジしていた。


寝ぼけていたのだろうか。


「お、アレリアおきたね」

「……あぁ」


横には上着を羽織るメーデルがいた。

アレリアは寝ぼけながら返事をする。


「おう、今日は村から出る日だから荷造り終わらせときなよ」

「…………わかった」


あれ、もうそんな時期?

でも何となく空気が少しあったかいような気する。


まぁ、いい。

早く準備を終わらせなくては。


準備が終わると、冒険者3人は村から出て、北に進み出した。


「よーし、目的地は王都だ!いくぞー!」

「おー」


メーデルの呼びかけに、カレアとアレリアが棒読みで返答する。

テンション差が激しいチームだ。


王都、リオールド。

この大陸で1番大きな都市で、国王がいる。

また、冒険者が1番多い街としても有名で、王都近くで魔獣の被害やらなんやらが起こることはほとんどない。

大量の冒険者によって周辺の魔獣はすでに狩り尽くされているからだ。


まぁ、ひたすらに平和な都市ってことだ。


アレリアたち一行は、王都よりさらに北の、魔族たちの領土に攻め入るために収集されたパーティの一つだった。



まず、魔族っていうのはどんなやつかということを説明しよう。


魔族とは簡単にいえば、魔術を扱うのに特化した、人間と敵対している種族の総称だ。


姿形も人間と酷似していて、遠目にみたら人間と見間違えてしまうそう。

魔族の判別方法は、大きく分けて二つある。


一つ目は目だ。

魔族は目の黒目の白目の色合いが反転している。

とりあえず、目に異常があればそいつは魔族と思っていい。


そして二つ目、それは魔力の違い。

魔力というのは魔術師がもつ魔術を使うためのエネルギーで魔力を消費して人間は魔術を発動する。


魔族は魔力を消費しないで魔術を発動できる。


また魔族は人間には使用できない魔術を使用することができるらしく、致命傷でなければある程度の傷は自然治癒できるという能力を持っている。


自然治癒。

アレリアと共通点を持った種族だ。


様々な面で魔族は人間に優っておる。

唯一勝ることは、人間より魔族の個数のほうが圧倒的に少ないところだ。


この情報はアレリアが目覚めた時から所持していた数少ない記憶の一つだ。


そんな魔族たちの領土の侵攻を食い止め、領土を奪還するのが、アレリアたちメリアリードの旅の目的だった。


元々、メーデルとカレアはもう1人か2人仲間を募る予定だったらしく、アレリアがその枠に入った形だ。


「どのぐらいかかるか?」

「王都まで、頑張っても一ヶ月かなー。路銀もすくないから馬車を使えないし」

「残金はいくら?」

「6000ヘルト」

「少ないな」

「だな」


この世界のヘルトの価値は1ヘルト=1円なので、まぁまぁに少ない。

ちなみに1000ヘルトで金貨。100ヘルトで銀貨。10ヘルトで銅貨である。


「だから近くの村とかで、依頼をこなしていくしかないねー」

「大変だ」


カレアのぼやきにアレリアがため息ながらの返事をした。


こんな旅を続けていると自分はただのなんの変哲もない人間だと思うことが出来る。


いいことなのかもしれない。

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