表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無知のアレリア  作者: せきち
第二章「竜王編」
29/32

第二十七話「予期せぬ日常」

「…何もわからん」

「同じく」


アレリアたち一行は、森の中をただひたすら北に進んでいた。


古代魔族エニルトの領地の南の端っこにある街、それがエルトーンだ。


アレリアたちはさっきそこで起きた大乱戦を超えて、ここまできたのだ。

なんか理由はわからないが魔族たちから見逃され、今に至るというわけだ。


「とりあえず、エニルトっていうボスの魔族は味方なんだよね?」

「うん、そのはず」


リエルアの質問にアレリアが頷く。

すると、リエルアは歩きながら両手を腰に当てて、ため息をつく。


「じゃあ竜を護衛につけてくれればいいのに」

「いや、俺らに危害を加える奴がいないんじゃない?」

「ん?」


話に入ってきたカレアの反論に、リエルアが首を傾げる。


「魔力が、生き物の魔力が辺りから全く感じないんだ。多分、ここの魔獣とかは全部狩り尽くされてるんだと思う」

「へぇー…、なんで?」

「そりゃ……、なんでだ?」


結果的に、何もわからないということがわかった。


まぁ、天敵がいないのはいいことだ。


魔族の言う通りに動くのは癪だが、少しでも違うことをすれば「岩壁」の魔族に殺されるかもしれない。

あいつ、バカ強えぇしバカ怖い。


「今日はここら辺で野宿にする?」

「うん、そうしよう」


辺りはすっかり暗くなった。

今日は何だか、情報量の多い1日だった。


何度も命の危険あったが、よく生きていた。

改めて、安心する。


アレリアは集めた枝に火をつけようと、右手を前に出す。


「…てかさ」

「ん?」


メーデルの呟きに、全員が振り返る。


「あの街で休ませて貰えばよかったんじゃね?」

「いや、無理無理無理無理」

「あの魔族たちと同じところで寝るのは怖いって」


ーーー


場面は変わり、街の教会。

石造りの、ライラが守っていたところだ。


そのライラの亡骸を前にして、エーリとディレンが座りながら暗闇の中話し合っていた。


「兄上、あいつらを逃してよかったのですか」

「まぁ良くはないな」

「だったら何故…」


怒り始めようとしたエーリを目線だけで制止するディレン。

その目線は、ただひたすらに冷たかった。


「………っ」

「……あのな、エーリ」


視線だけでも、エーリを圧倒する何か。

思わず、息を呑む。


ディレンはため息をついて、話を続ける。


「ライラの仇を晴らすのは私たちではないのかもしれない」

「…かもしれないって、…兄上!」

「…悔しいのか、エーリ」


思わず立ち上がるエーリ。

そして、またもや制止するディレン。


「私もだ」

「…………兄上は、何がしたいのですか」

「報いを待っているんだ。大丈夫、報われるのはきっと私たちだ」


再び、暗闇の中で椅子に座るエーリ。

わからない。


信頼すべき主人(主魔族?)のエニルトとの関係は悪くなった。

今唯一味方なのは、自身の兄だけのはずだ。


だけど、兄は自分のことを理解してくれない。

兄が何を考えているのかが、全くわからない。


怖い。200年生きていようと、姿見と同じで精神面も未熟なままだ。

エーリは何もすることが出来なくなった。


顔を下に向けて、呟く。


「……私は悔しいです、兄上」

「そう案ずるな」


対して、ディレンは顔を上げて、無を見つめる。


暗い。

虚無。

そこには何もない。


そして、呟く。


「案外、近いかもしれないぞ」

「……?」


ーーー


そして次の日。


水の塊(ス・ライト)

「おぉ」


カレアとメーデルの目の前には、一つの小さな水の塊。


光線(ラ・ルーシャ)


カレアの詠唱。

無音で光線が発射される。


眩しいその線は宙に浮かぶ水の塊に直撃する。


曲がった。


そして、屈折した光線は勢いを殺さずに近くの木の峰を貫通した。

木からは軽く、ジュウ…という音がする。


「…おぉ!!!」

「おおおおおおぉぉぉ!!!!!」


少し遅れて、カレアとアレリアが歓声を上げた。

その声に釣られたのか、残りの三人がカレアたちの方に近づいてきた。


「何があったの?」

「出来たぁ!やった!フォウ!!」


カレアは飛び跳ね、荒れ狂い、まるで正気を失っているようだった。

それほどまでに喜んでいた。


アレリアが代わりに説明する。


「今、カレアが「光線」を水で屈折させたんだ」

「…おぉ!すごい!」

「だろぉ!?」


メーデルの賞賛に明らかに早く食いつくカレア。

いつもの5割増しでテンションの高い。


光線の屈折。

これはライラとの戦闘から得た発想だ。


水の塊をいい感じに配置して、形作って、空中に浮かばせる。

それがキツかった。


おそらく、同時に屈折できるのは3、4回くらいだ。


だが、これが戦闘中に成功すれば必ず相手の意表をつける。

カレアは新たな戦闘手段を身につけたのであった。



五人はまた、道なりに北に向かって歩く。


「……そういえば、エニルトのことだけど」

「うん」


アレリアの話に、カレアが相槌を打つ。


「あいつ、光魔術を使っていなかったか」

「…え、マジで?」

「うん。リエルアとカルトに「治癒」していた」

「………魔族って光魔術使えるんだ…」


光魔術の原点は、信仰心からなるものだ。

教会で信仰している女神様を慕うことによって、人類は「治癒」や「光線」。より優れたものは「防護」を使えたりする。

当時はそれを「女神様の御加護」と呼んでいた。


だが今は、光魔術と呼ばれていて魔術の形態も解析されて信仰なんてしていなくても光魔術を扱える。

しかし、それでも光魔術の詳しい起源は誰も知らない。


魔族が光魔術を扱えないと言うのは、誰も光魔術を専門に使う魔族を見たことがないことから出来た話だろう。

だが、たった今その常識は崩された。


エニルトが何故光魔術を扱えるのかは知らないが、どこかしらの神を慕ってたちするのだろうか。

それとも、古代魔族は謎に使えていたりするのだろうか。


カレアはそれを聞いて、こくこくと頷いた。


「へぇー、不思議なやつもいるもんだねぇ」

「浅いリアクションだな」

「まぁ、敵じゃないんでしょ?そいつ」

「だな」

「じゃあ気にしなくていいよ」


そういうものなのだろうか。

まぁ、今は多分敵になるようなやつもいないし、ただ単に何も考えないで北に向かえばいいだけだ。


「…最近肉食ってないなー」

「魔獣もいないしな」


ため息をつくカレアにアレリアが返事をする。


魔獣の肉は決して旨くはないが、それでも肉は食いたいものだ。

身体がタンパク質を求めている。


やはり、魔獣がいない地域というのも良いことばかりではなさそうだ。

竜め、許さぬ。


「…人間の領土にいた頃が懐かしいなぁ」

「弱音を吐かない」


久しぶりに訪れた日常。

これが続くのはあと何日ぐらいなのだろうか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ