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無知のアレリア  作者: せきち
第一章「メリアリード編」
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第一話「メリアリード」

この世界には魔術というものが存在する。

炎、水、風、土、そして光の五つで分類分けされていてそれぞれに基本技と応用技がある。


また人にはそれぞれランダムな数の属性だけ操ることができ、水属性だけ使えることもあれば、五つの属性全てを使える人もいる。

まぁ、それらは才能の部類だ。

生まれた時から魔術を扱える人もいれば、一生魔術を扱えないものもいる。


ちなみに後者が圧倒的に多く、世界で魔術師と名乗っているものは1割程度しかいない。



アレリアは、顔が女っぽい少年だった。

アレリアはその魔術を扱う魔術師になった。


その日は、雪がたくさん降っていた。

雪原の中に、3人の冒険者たちがいた。


「アレリア!後ろの奴ら任せた!」

「ん」

「グルルル……」


その3人の冒険者の周りを狼みたいな魔獣が囲む。

その魔獣は背中を丸めて、声を荒げて威嚇してくる。


剣士はアレリアに指示を出して、自身は前方の敵に切り込んでいった。


「カレアはアレリアのサポートを!」

「了解」


アレリアは右手を魔物に向ける。

目の前には7体の魔獣。


詠唱をする。


火焔(ル・ナーシャ)


アレリアの右手から青い炎が吹き出し、魔獣を襲う。


辺りの雪と目の前の吹雪が溶けて、ジューという音がする。


狼たちは悲鳴を上げながら炎から逃れようと必死だ。

これは強い魔術だが、狼たちにとってそれは致命傷ではない。


「くぅっ」

風の渦(リ・ラーム)


ぼやいたアレリアの後ろから飛び出してきた、カレア、と言われた男も魔術師だった。


杖を掲げ、アレリアの炎に向けて風を起こして、炎の威力を上げる。


逃れようとした狼たちもそれらに焼かれ、全滅した。


「ありがと、カレア」

「おう」


2人は剣士の援護に入ろうと、後ろを振り向く。

だが、もう手助けは要らなかったようだ。


「アレリア、カレア!終わったよー!」


吹雪の奥に、剣をしまいながらこちらに手を振ってくる剣士、メーデルが見えた。


魔術師2人が魔獣を処理している間に、メーデルは10体の魔物を切り伏せ、全滅させた。


1人で、だ。

魔術師2人ははしゃぐメーデルを尻目に、遠い目をした。


「…やっぱあいつ化けもんじゃね?」

「今更」


カレアのか細い声をアレリアが一言で一蹴する。


「まぁそうか」


ため息をついたカレアはメーデルに手を軽く振り返し、メーデルの元へ向かう。


ブーツで雪を踏んだ時のぎゅむって音が心地いい。


「2人とも、ナーイス!」

「いえーい」


こちらに近づいてくるメーデルとグータッチする。


パーティ名「メリアリード」。

メンバーは、剣士メーデル、魔術師アレリア、魔術師兼、回復役のカレアの男3人チームだ。

ちなみにアレリアの顔が女っぽいのもあって、周りからは男2人で女1人のパーティだと思われてる。


元々アレリア以外の2人パーティだったが、ひょんな出来事でアレリアが加入していまのメリアリードに至る。


カレアはアレリアに魔術を詳しく教える師匠のような存在で、アレリアの使える魔術の大体がカレアからの受け売りだ。


ちなみにアレリアの適性属性は、炎と水で、

カレアの適性は、光と風と水だ。


また、剣士メーデルはまだ19歳ながら大人顔負けの剣の実力を持ち合わせている。

そして性格がまだ子供っぽいのが残念ポイント。


「アレリア、今日何食いたい?」

「肉」

「俺もー」


メーデルの質問にアレリアとカレアが答える。

この3人、仲がいい。


なんだかんだこのパーティが3人体制になってからすでに一ヶ月が経過した。

並大抵のことで喧嘩したりはしない。


「お、着いた」


しばらく雪原を進むと、吹雪の奥には大きめの村が広がっていた。

ここまでの道のり30分。


「魔獣退治完了しました」

「ありがとう、冒険者様。ここら辺の敷地に入られると厄介だからね。早めに対処してくれて助かったよ」

「いえいえ」


依頼人はアレリアの方を向く。


「お嬢ちゃんも、よく頑張ってくれたね」

「男だ、俺は」


3人は依頼人の村長の家に入り、報酬のお金をカレアが受け取る。


「はいこれ。報酬の4000ヘルト。今日ももう遅いんだから、どうだい?うちに泊まっていく?」

「あぁ、もう宿をとってあるんで大丈夫です」

「ならいい。いつまでこの街に滞在する予定だ?また依頼したいことがあってね」


カレアが窓の外の吹雪を眺めながら、返答する。


「雪が一通り止むまではここで過ごすことになると思いますよ」

「じゃあ、次もよろしく頼むよ」

「はーい」


村長の家の扉を閉めて、少し歩く。

吹雪の勢いは未だ健在でここしばらくはこの村に住む羽目になりそうだ。


「寒みぃー」


凍えるメーデルはため息をもらしてぼやく。


「あぁ」


アレリアが同じく寒さに震えながら返答する。


ーーー


近くの酒場で飯を済ませ、冒険者一行は宿についた。


宿のベットは二段ベットと普通のベットの計三つのベットだった。


ジャンケンで一位になったアレリアが二段ベットの上層で寝て、残りの2人が下で寝ることにした。


「じゃ、おやすみ」

「また明日」


全員が眠りについた頃、アレリアは何故か眠れずに、二段ベットの上で固まっていた。


「…………」


もう随分前の話だ。


一ヶ月前のこと。

アレリアが「メリアリード」に入ってすぐのこと。


アレリアはカレアに魔術を教わっていく過程で二つ、気づいたことがあった。


一つ目は、人間には時間が経てば傷が治る、なんて能力は一切ないらしい。


回復役、という役職があるのだ。

まず普通の人間は自然回復しない。


なぜか、俺は人間にはできない自然回復を使えた。


こっちはあまり経験したことはないためどういう条件で使えるのか、何で使えたのかはあやふやだ。


おそらく、重症を負ったら発動するのだろう。


そして、

二つ目は、アレリアが生まれてすぐに魔獣に放ったあの魔術。

アレリアが人里に着くまでに何回も放ったそれは、


見えない魔術(シャ・ラーム)?なんだそれは?」

「いや、ただの興味」


これは過去の記憶だ。

今でも鮮明に覚えている。

アレリアの問いに、カレアは一言で答える。


「ないね」

「え?」


断言したぞこいつ。


「俺はこの世に存在する魔術の詠唱はすべて知っている。その『シャ・ラーム』ってやつは魔術の詠唱形態からして存在してはいけないものだ」

「…そう…か」


結局その時は、「なんとなくそう思っただけ」といってその場を逃れた。

そして俺はメーデルとカレアの前であの魔術を使わないこと、そして深い傷を追わないことを決心した。


「その魔術を…」


一ヶ月前のカレアの声で再生される。


「その魔術を使えるやつは、まず人間じゃないね」


人間は自然回復をしないし、あの魔術を使えない。


真っ暗なベットの上。

自分の手を見つめる。


俺は、人間じゃないのかもしれない。

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