第十一話「なんかいい感じに」
「はぁ、はぁはぁ」
「大丈夫か、アレリア」
「なんとか」
メリアリードの3人は、近くにあった家の影に隠れて戦況を読むことにした。
息切れをするメーデル。
こんなメーデル、見たことない。
相当体力を消耗したのだろう。
「今は誰かが足止めしてくれてるみたいだから、今のうちに」
カレアは右手をメーデルに掲げる。
そして顔を隣に向ける。
「そっちも大丈夫か?」
「…ギリギリね」
カレアは近くにいるもう一つのパーティに話しかけた。
先ほどアレリアと会話をした戦士リエルアともう一人の盾役だった。
「二人だけか?」
「…さっき三人やられてね、もうどうしようもないよ」
「…そうか」
カレアはメーデルに治癒をかけて、ため息を一つ。
カレアが問う。
「…どうする?」
「どうするって逃げようよ」
「…あんたたちは?」
カレアの目線の先には、リエルアと盾役の二人。
二人はお互いに顔を見合わせる。
「敵討にいくよ」
「あぁ、負け戦だな」
二人は頷き、立ち上がる。
カレアはその二人を慌てて止める。
「まぁ、まて。治癒だけでさせてくれ」
「…感謝する」
カレアの治癒を施し、体の傷を癒す二人。
その顔は覚悟で決まっていた。
少し、大通りを覗き、状況を確認する。
誰かと戦っている。
盾役が話し始める。
「あれは、多分王宮魔術師だ。足止めしてくれてはいるが、多分いつか負ける」
「私たちが加勢したら、勝機がまだあるかもしれない」
リエルアが言葉を付け加え、頷く。
アレリアは悟った顔の二人を見つめて、何も言えずにいた。
この二人に、何か言葉をかけることができないほどにはアレリアは恵まれていた。
人間とは違ったのだ。
カレアが一瞬、考えるように目を瞑った。
次の言葉を、メーデルとアレリアは察していた。
「…わかった、俺も行く」
「俺も」
「俺も」
メリアリード全員が返事をした。
リエルアと盾役も頷き、5人は魔族を殺す作戦について考え始めた。
ーーー
一方、王宮魔術師と魔族の戦闘は。
「火葬」
先制攻撃は、ヴィアルムの火葬だった。
魔術師たちは危機をさっしたのか、離れ出す。
どういう技術かは知らないが王宮魔術師は3人とも空を飛んでいる。
風魔術だろうか。
しかし、一人の魔術師が魔術に当たってしまった。
狙われた王宮魔術師の一人の片腕が赤く光る。燃えた。
この炎は対象が死ぬまで消えない。
「火葬」を詠唱したが最後、もう生き残ることはない。
対処方法は二つ。
一つは水魔術での消化。
そして二つ目は、
「防護」
「はぁ!?」
自切だ。
光魔術、防護。
魔術や物理攻撃の防御に優れている。
形状は薄い円形で足場にしたり、使える幅が広い。
なんと、王宮魔術師は自身の燃えている腕を肩のあたりから防護を腕のど真ん中に出現させ、燃えた腕を自切した。
防護によって止血されたその断面図は、見ているだけで恐ろしい。
燃える腕が地面に落下し、王宮魔術師は一言詠唱。
「治癒」
次は自切した腕を一瞬で治癒。
すごい。
まず人間にできるレベルじゃない。
魔族でも、この速度の回復は厳しいだろう。
ヴィアルムは呆れたように叫ぶ。
「なんだこいつ!」
「水の塊」
ヴィアルムの目の前にいた魔術師は体の周りに水を纏う。
自分の身体からは決して離れることのない、水の鎧だ。
火葬の条件として、可燃性の下地が前提なので、燃えない水の下で火葬をしても何も起きないのだ。
他の二人の魔術師も水の鎧をつける。
「火葬は厄介だからな。封じさせてもらった」
「…それはどうかな?」
冷や汗をかくヴィアルム。
しまった。
「火葬」が防がれることを想定していなかった。
ヴィアルムはほぼほぼ一撃必殺の魔術を扱える反面、応用が出来ないという難点がある。
炎魔術自体、応用が効かないものだ。
全属性の魔族の中で、最弱なのは炎魔術を扱う魔族だろう。
そこまでに、炎魔術は弱い。
…となると、仲間に頼るのがいいだろう。
ヴィアルムは横を向き、助けを呼ぶ。
「フェリオン、手伝えるか?」
「待ってこっちも厳しい!」
フェリオンは他二人の魔術師を同時に相手にしていた。
いくらフェリオンの「竜巻」が魔術師に対して有利だとしても、この戦況は厳しい。
「光線」
「竜巻」
フェリオンの竜巻は光線を掻き消し、さらにサイズを大きくする。
それは今までの竜巻のサイズをゆうにこえていた。
周りの建物を巻き込み、レンガや石、木材が宙に舞う、異様な状況になった。
王宮魔術師も、ヴィアルムも、遠くから見ていた冒険者たちもしばしその様子をただ見ていた。
両手を上に掲げ、竜巻の制御をするフェリオン。
そして、
「なんか、いい感じに死ねーー!!!!」
両腕を振りかざし、フェリオンはその竜巻の中にある元々家だった残骸を全て魔術師たちにぶつける。
小さく、王宮魔術師二人の悲鳴が聞こえる。
「防護」
ドオォォォォォオン
轟音が鳴り響き、辺りに砂煙が舞う。
見事に全弾命中した。
「竜巻」
その砂煙をフェリオンの竜巻がかき消す。
「…………」
そこには身体中に木片が突き刺さり、全身から血を流して倒れている王宮魔術師二人の姿があった。
ヴィアルムと交戦していた魔術師が、その変わり果てた姿をみて、一瞬絶句する。
「…ッ」
「よーし、あと1人」
フェリオンは顔を瓦礫の山から最後の魔術師に向けて、右手を構えた。
ーーー
「…盾役と剣士、そして俺が炎の魔族を、戦士、そしてアレリアが風の魔族を殺そう」
とある家の影。
カレアが目の前の4人に指示を出す。
この中にいるのは、
盾役、カルト
戦士、リエルア
剣士、メーデル
魔術師兼回復役、カレア
魔術師、アレリア
だ。
「今外で、冒険者か誰か知らないけど魔族たちと交戦してるから、早く加勢しないと」
「おう」
カレアも軽く頷き、言葉を続ける。
5人はそれぞれの獲物を構える。
「絶対に、2人の魔族を共闘させないように。風魔術は、炎魔術とは特に相性がいい」
「了解」
2人の分断。
それが出来ない限り魔族2人を殺すことはできない。
「………」
作戦会議が終わった英雄一同は、家の角から大通りを覗き込む。
リエルアは、その様子を見て絶句する。
「…全滅してる…」
「…マジか」
戦士の視線の先には、全身が黒く、「火葬」で炭化した王宮魔術師の姿が。
魔力切れだ。
あの魔術師の「水の鎧」は使う魔力消費量が多かった。
いくら王宮魔術師でも、2人の魔族相手に交戦するのは厳しかったそう。
「次は俺らの番か」
「いや、まだ負けが決まったわけじゃない」
盾役の皮肉にカレアが軽く笑いながら相手をする。
ここにいる全員、ここで死ぬ気はない。
逃げる気もない。
ただ、勝つ。
それだけだ。
カレアはリエルアに耳打ちする。
「じゃあ、戦士はすぐに風の魔族に向かって攻撃して。俺は炎の方に「光線」を撃つから。それで分断しよう」
「了解、アレリア。しっかりついてきてね」
リエルアは獲物の槍と斧が複合したやつみたいなのを握りしめながら、アレリアの方を向く。
「あぁ、リエルア」
アレリアは今、なんの感情もない。
ただ無心に魔族を殺す。
全員で生還する。それだけ。
不意に、アレリアの口から言葉が漏れた。
「勝つぞ」
「おう」
誰かが返事をした。




