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無知のアレリア  作者: せきち
第一章「メリアリード編」
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第九話「竜巻の魔族」

身体が動かない。

杖の先が魔族に向かない。


俺は、なんであいつをまだ人間と認識してるんだ。


「下がれ!魔術師!」

「え」


アレリアの後方から別パーティの剣士が飛び出て、魔族に向かって一直線に飛びかかる。


「っし!」


メーデルもそれに続いて剣を抜き、魔族に横から斬りかかる。


二人とも、速い。

一瞬にして魔族の首元に剣を突き立てた。


そして、その勢いのまま、剣を振り落とす。


「おぅらあああぁぁぁ!」

竜巻(ア・カルフル)


魔族の詠唱。


地面から突風が巻き上がる。

舗装のレンガもろとも、二人の剣士は上空に打ち上げられた。


剣士二人の速度は決して遅くなかった。

少なくとも、アレリアの目には追えなかった。


剣士二人の姿を見極め、詠唱をして発動するまでの時間がある。

魔族という生物はなんなんだ本当に。


あの魔術は人間にできる芸等じゃない。


「まずいまずいまずいぃ!」


再び暗くなった空に打ち上げられるメーデルと、もう一人の剣士。

二人は落下しながら悲鳴を上げる。


「オーラス!」


後ろから別パーティの声がする。

オーラス。

もう一人の剣士の名前かもしれない。


メーデルとオーラスは空中でろくに身動きが取れずにジタバタしている。


このままじゃ衛兵の二の舞だ。


アレリアのカレアの目線が一瞬、目の前の魔族から空中のメーデルたちにずれる。


「よそ見だめだよ」


魔族の声。

その右手はこちらに向いている。


しまった。

なんで目を離した。


カレアが慌てて詠唱をするがもう遅い。


竜巻(ア・カルフル)

光線(ラ・ルーシャ)ァ!」


アレリアの隣にいるカレアの姿は遥か後方に吹っ飛んでいった。


カレアの杖が宙を舞い、カランカランと音を立てて地面に落ちる。

光線の詠唱が間に合わず、光の魔力が辺りに霧散する。


「ぉああ゛っ!」

「わああっ!」


後ろに並んだ冒険者たちに勢いよく衝突し、カレアはうめき声を上げる。

冒険者たちも驚いたような声を上げる。


あ、これどこかしらの骨が折れたな。

すっげぇ痛い。


ギリギリ、カレアを回避した冒険者の一人がカレアの顔を覗き込んで、問う。


「どうした!?何があった!」

「…魔族が、風の魔術を使う魔族がいる!急げ!」

「…わかった!」


カレアは自分に「治癒」の詠唱をして、折れた肋骨を治療して立ち上がる。

杖を回収しに、前線へ向かう。


その間に、魔族フェリオンを囲う冒険者の陣形が出来上がっていた。


「オーライオーライ!」


アレリアは剣士二人の落下地点を予測し、その真下に大きな水の塊を生成する。


よし、このくらいあれば落下死することはない。


「うわああああああ!」


悲鳴を上げながら振ってくる剣士二人。


ざっぱーん


と、水音を立てて水の塊の中に浮かんだ。


よし、成功した。

剣士二人とも、5体満足だ。


だけど、溺れてるように見える。


水の塊を解除する。

その場に倒れるオーラスとメーデル。


二人とも、こんな状況でも剣を離さない。

剣士というのはやはり覚悟が決まっている。


「っはぁはぁはぁはぁ…」

「メーデル、無事か」


口から霧散した水の魔力を吐き出すメーデルはこちらに親指を上に突き立て、「大丈夫」サインをする。


「っありがとアレリア」

「感謝する、魔術師」


オーラスも一礼をして、魔族に向かって走り出す。

アレリア、メーデルもそれに続く。



一方、竜巻の魔族、フェリオン。

それぞれの杖を構える魔術師に囲まれていた。


「…多くない?」


この魔族はようやく状況を理解したみたいだ。

詠唱。


光線(ラ・ルーシャ)

水の槍(ス・レイド)

土の棘(シム・ラーム)

火焔(ル・ナーシャ)

水波(スレ・フト)


様々な魔術が一斉にフェリオンに襲いかかる。

フェリオンは一歩後ろに下がりながら詠唱をする。


竜巻(ア・カルフル)


自身を覆い被すほどの大きな竜巻。


なにをしている?こいつ。

自ら逃げ場を潰したぞ。


風で炎魔術は止められても、光線やら土の魔術は止められない。


「は?」


いや、違った。

止められた。


魔力が霧散していく。

竜巻に魔術が衝突した瞬間に魔術がその術式をまるごと剥ぎ取られるように、霧散している。


全ての魔術が竜巻の前では、無意味だった。

魔術師の一人が悲鳴を上げる。


「はぁ?ズルだろ!」

「ドンマイドンマイ」


そう言いながらフェリオンは魔術師たちに肉薄し、「竜巻」を地面に向けて発動する。


速い。

大抵の魔術師じゃ、この速度を目で追えない。


情報が脳に伝わっていても、身体が動かない。


「ばいばい」

「ぉがぁっ!」


竜巻の餌食になった魔術師が地面に頭から勢いよく衝突。

断末魔を上げる。


頭から血を吹き出しその場に倒れる。

ぐりん、と白目をむいて顔からは生気が失われていた。


死んだ。

こんなあっさりと。


少し遠くから眺めていたアレリアは少し立ち止まる。

目を見開き、鼓動がどんどん強くなっていく。


あれはダメだ。

まだ人間が戦っていい相手じゃない。


フェリオンは、その勢いのまま再び「竜巻」を出そうと、冒険者たちに手を向ける。


「まずい!」


メーデルがそう呟き、アレリアを追い越す。


それに続いて近接職がそれぞれの獲物を構えて襲いかかる。


ダメだ、そう呟こうとしたアレリア。


さっきの二の舞になってしまう。

竜巻に巻き込まれて、再び死人が出るかもしれない。


しかし、アレリアの予想に反して、剣士たちは横から回り込んでそれぞれ斬りかかる。


「お前の魔術、一方向にしか攻撃できねえだろ」

「…正解」


魔族はその右手を地面に向ける。


竜巻(ア・カルフル)

「あ゛あぁ?」


フェリオンは自分を竜巻で上空にかっ飛ばし、斬撃をかわす。


しかし、下に向けていた右腕が犠牲になり、右腕の第二関節より上が切断されたフェリオン。


「痛ったぁー」


空の上で、血が吹き出す右腕の切断面を眺める。


このくらいなら、1分もあれば完治するな。


そんなことよりも、この近接職たちがうざったい。

竜巻は魔術師相手には強くても、近接相手には割と弱い魔術なのだ。


やっぱり、ヴィアルムに頼ろっかな。

うん、よし。そうしよう。


ここで死ぬよりマシだ。

プライドの為に命を捨てる覚悟も勇気も、私にはない。


フェリオンは南門の方向を向いて、思いっきり叫ぶ。


「ヴィアルムーー!!!!!助けてーー!!!!!」


ーーー


「ヴィアルムーー!!!!!助けてーー!!!!!」


…なんか、嫌な声が聞こえた。

フェリオンの声だ。

冒険者たちとフェリオンの戦闘を遠くの家の屋根から眺めていたヴィアルム。

やっぱり、1対20は厳しかったらしい。


冒険者の上空を竜巻で飛行しながら、逃げ回るフェリオンを見て、ヴィアルムはため息をつく。


あいつはヴィアルムの平和な、人間に溶け込む生活を終わらせた。

全く、迷惑にも程がある。


大きなため息をつく。


そして屋根から飛び降り、フェリオンのいる大通りに向けて歩き出す。


「行くかぁ」


瞑っていた目を開く。

どこまでも白い、フェリオンと同じ目だった。


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