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63.前世との縁を切っても、全てがなくなるわけではない

 昼休み、アイリと火渡くんと三人でお弁当を食べながら昨晩の話をした。


「そんな感じで縁を切ってきたよ」

「ハサミで切るんだね」

「縁切りの魔法がかかってたらしいけど、この世界の魔法って仕組みがよくわかんないんだよねえ」

「向こうとは法則が違うからな」


 元の世界でも、みんながみんな魔法が使えるわけではない。

 でも、こっちはそれより更に少しの人、わずかな場でしか魔法やそれに類するものが使えないらしくて、どんなものか調べるのも難しい。


「ま、いいんじゃない。エミリはもう聖女じゃないんだしさ」

「そうだねえ。全部覚えてるから、ピンとこないんだけどさ」

「わかる。俺もたまに炎出したり、身体を炎化させそうになる。出ねえし、ならねえんだけどな」

「ついね」

「そういうのも、少しずつなくなっていくんだろうなあ」


 火渡くんは手をグーパーさせた。


「うん。私もきっと聖女だったことも旅をしたことも忘れるんだと思う。でも、その分だけ学校のこととか、みんなで遊びに行ったこととか、違う思い出を増やせたらいいと思うよ」


 アイリがニコッと笑って、火渡くんに寄り添った。


 食べ終えて教室に戻ると、ルイは部活の友達と昼を食べていて、リオンは見当たらなかった。


「真野くんなら、図書室って言ってたよ」


 他の友達と食べていたアコが教えてくれた。


「ありがと。ユウキは?」

「例の先輩とランチデート」

「いいなー」


 私も恋人未満♡の先輩とランチデートしたい。


「エミリだってしようと思えば宇佐くん真野くんとできるでしょ」

「三人で食べるとルイとリオンが喧嘩始めちゃって、デートって感じじゃなくなりそう」

「でも最近二人はあんま喧嘩してなくない?」

「たしかに……今度誘ってみようかなあ」



 ユウキと分かれて図書室に向かうと、リオンとケントが図書準備室でお弁当を食べていた。


「よーお、元聖女様」

「元黒魔術師と元魔王は何してるの?」

「昨晩の話をしていた。あと総一郎が持ってきたハサミのことも」

「やっぱ気になるよね、あれ……」


 ケントは朝起きてすぐ、皐月先生に連絡したらしい。

 互いに覚えてることを確認してから学校に来たそうだ。

 やっぱり結構いい感じなんじゃん。


「まー、ルイも言ってたけど、忘れるよりは覚えてたいよな」

「ああ。前世がなくてもエミリを好きになる自信はあるが、少しでも多く覚えていたいしな」


 ケントとリオンと話しているうちに昼休みが終わった。

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