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59.普通の出会いと普通の恋

 次の日は文化祭の明け休み。

 朝のベッドの中で、二度寝するかさっさと起きるか悩んでいたらスマホが震えた。


「はいはい。ルイ、どうしたの?」


 朝一から電話してきたのはルイで、なんかあったのかな。

 あ、でも時計を見たら九時過ぎだ。別に朝一じゃないや。


『や……エミリは、どうしてるかと思って』

「ウケる。勇者も不安になるんだね」

『ばっか、なるっつーの。でも俺が不安そうにしてたらエミリたちはもちろん、町の人とか魔族に脅かされる人たちが余計に不安になっちまうだろうが』


 そうだったんだ。

 ルイとの付き合いは前世含めると二十年近いはずだけど、そんなの知らなかった。


「そうだったんだねえ」

『あとほら、好きな女の子の前でダサいことできないし』

「ダサくないよ。かっこいいよ」

『……ありがと』


 電話の向こうのルイはどんな顔をしているだろう。

 見たいけど、かっこつけて見せてくれないんじゃないかな。

 今さらどんな顔でも気にしないのに。


「ルイは前世でかっこいい勇者してたけどさ、別に今がかっこ悪いわけじゃないじゃん」

『そうかな』

「うん。運動会のときとか、プールとか、文化祭とか、かっこよかったよ」

『……そっかあ』

「ルイは、前世のことがなかったら、私のこともう好きじゃなくなる?」


 返事はない。

 まあ、それならそれで仕方ないんだけど。


『エミリは強情だし気が強いし、たまにすげー馬鹿だけどさ』


 なんか罵倒された。


『でも、好きだよ。明るくて頑張り屋で、負けず嫌いでうつむかないエミリのこと、ずっとずっと、俺は好きだ』

「それって、普通じゃないかな」

『普通!? 俺の渾身の告白を普通だと!?』

「ごめんて」


 ルイの勢いについ笑っちゃう。


「そうじゃなくて。知り合って、互いのいいところや悪いところを知って、それで相手を好きになるのって、どこの世界でも普通のことなんじゃない? たぶん、前世とかあるほうが普通じゃないよ」

『……それは、そうかも』

「それがきっかけかもしれないけどさ、別に今はそれだけじゃないって思ってるし」

『なんだかなあ』

「えっ」

『俺、ずっとエミリに背中押されてるわ。前世でも、今も』

「そうかなあ」

『そうだよ』


 電話の向こうでルイが笑った。


『ありがとう、エミリ。腹くくった。あとで、どうしたらいいか真野さんに聞こう』

「うん。こっちこそ、電話くれてありがとう」


 電話を切って、もう一人の名前に触れた。

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