52.選べないけど、それでも
二日目の午後はリオンと二人で周る約束をしていた。
「謎解きに行ってみたいのだが、いいだろうか」
「もちろん」
「人混みがすごいから、手をつないでもいいかな」
見上げたリオンは昨日のルイと同じような、緊張した顔で私を見ている。
差し出された手は大きくて節くれ立っていた。
前世のリオンの手を見たことはないけど、たぶん、いきなり戦わないで手を取るべきだったんだろうなあ。
「いいよ」
手を重ねると、そっと握られた。
握り返すとリオンの肩が跳ねる。
「……行こうか」
「うん」
並んで謎解きの教室に向かった。
入り口でカードをもらって、書いてあるヒントを元に言葉を集めて行くらしい。
「えっと……まずは体育館、かな」
リオンについて体育館に向かう。正解だったらしくて、文字の書いたシールを受け取った。
そんな感じで何カ所か回って、一時間くらいでゴールできた。
「リオン、すごいねえ」
「何が?」
「すらすら解いてたでしょ」
「……前世で出題側だったからな」
「ふふ、そうかも」
ダンジョンや迷宮の奥底に、歴代魔王の遺品が隠されてたっけ。
リオンも、あの魔王の椅子で、自分の品をどうやって隠すか考えていたんだろうか。
そう考えるとちょっと面白い。
「僕も考えたが当時の側近……総一郎の方が楽しそうに考えていたな。いかに勇者たちを騙そうか」
「ほんと酷い目にあったよ」
「サキュバスと炎の魔族は考えるのが苦手だとぼやいていた。……それがいまや教師を目指している。分からない物だな」
「……そうれはそうね」
笑いながらあちこち見て回る。
途中でアイスを買って分けたり、人力コースターが意外と早くて悲鳴を上げたり、普通に文化祭を満喫していた。
夕方になる頃、校内放送で文化祭がもうすぐ終わると流れた。
「リオン、戻ろうか」
「ああ。……エミリ、僕とまわって楽しんでもらえただろうか」
「もちろん、楽しかったよ。ありがとう、一緒にまわってくれて」
「……それは、あいつより、ということだと思ってかまわない?」
リオンはいつになく真剣な顔をしていた。
だから、私もちゃんと答える。
「どっちがかは選べないな。どっちも楽しかった。たぶんリオンが思うより、私はリオンのこと好きだよ。ルイより好きとかじゃなく、リオンのこと好きだよ。でもルイも好きだ。どっちかとか、どちらかだけ……っていうのは、ごめんだけど今は選べないな」
「そうか。わかった」
リオンは頷いて歩き出した。
「別に急かすつもりも、今すぐ選ばせるつもりもない。ただ……うん、文化祭で僕もはしゃいでしまっただけだ」
「ふふ、いいよ。あとで後夜祭もいこうね」
「ああ。仕方ないから馬鹿勇者も誘ってやろう」
手を強く握った。
同じくらい握り返されて、ゆっくり引かれた。
教室に、ルイを迎えに行こう。
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