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37.たぶん、あなたが差し出すそれに、見合うものが返せないの

「やはり、足が早い方がモテるのだろうか」


 帰り道、リオンがスタジアムを見上げながら言う。


「んな、小学生じゃあるまいし」


 そう返すと、リオンはムスッとした顔で私を覗き込んだ。


「エミリは、足が早い方が好みか?」

「勇者は足が早い方がいいよ、そりゃ。でも別に同じクラスの男の子は気にしない。それに、リオンにはリオンでいいところあるから、そこでルイと競わなくていいよ」

「……手をつないでも?」

「えっなんで……まあ、いいけどさ」


 リオンは嬉しそうに目を細めて私の手を取る。

 大きくて、節くれ立っていて、ちょっと汗ばんでいて……男の子の手だった。




 その日の夜、ベッドで寝転がっているとルイから電話がかかってきた。


『今日は応援に来てくれてありがとな。魔王、なんか言ってた?』

「褒めてたよ。あと「足が早い方がモテるのだろうか」って」

『小学生かよ』


 ルイはゲラゲラ笑った。

 でもすぐに声を潜めた。


『あー……あとさ、揉めてたの、見た?』

「うん、見た」

『全部?』

「全部って? ルイが止めに入ってるのは見たよ。そのあと、先生たちも出てきて、大変そうだったから、早めに帰った」


 そう言うとルイは電話の向こうで唸った。


『いや、それがさあ、そういう喧嘩が、何回もあったんだよね』

「えっ、あれだけじゃなかったんだ」

『うん。うちの学校の陸部でも揉めたやついて……でも、普段は大人しい、落ち着いたやつなんだけど』


 ルイは口ごもった。

 私から言えることなんて、何もない。


「あの、ルイ」

『うん』

「今日のルイ、かっこよかったよ」

『ありがとう。えっと、見に来てくれたことも』

「うん。ルイ、疲れたでしょ。もう寝よう。私も寝るから」

『おやすみ、エミリ。またいつか、直接言いたい』


 その言葉を、私はどう受け取ればいいんだろう。

 嬉しくないと言えば嘘になる。

 でも、今すぐまったく同じ気持ちを返すことができない。


「ルイ、ありがとう」


 だから、一言だけ返す。

 それしか、言えない。少なくとも今は。

 ルイは笑って電話を切った。


「ごめん、ルイ」


 スマホを伏せて部屋の灯りを消した。

 この感情を誰かどうにか、してほしかった。

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