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本編

ある日、魔界から侵略者が現れた。彼の者の名は魔王。ありきたりである。


魔王は人間界に城を築き、人間界に対して宣戦を布告する…

私は今までの魔王とは違う!人間などに引けは取らんわ!

本来であれば彼我の戦力を鑑みた上で宣戦を布告するはずであるが、この魔王もまた何も考えずに宣戦布告した。

私は前回の魔王とは違う、選ばれし者だ!人間どもなど簡単にひねりつぶせる!そう、過信していた。

某動画サイトならタグに「こんにちは、死ね」がつくであろう。

ともかく、魔王は人間界と戦争を始めたのである。

かくして、人間界の王は人生で何度目かの勇者募集を始めた。内心やれやれまたか、とぼやいていたが、ぼやきたかったのは事務方も同じである。

というわけで、募集した自称勇者の一行が到着した。

見たところ四人パーティーのようだ。王は威厳のある声で彼らに支度金を与え、送り出そうとした。ちょうどその時、手違いで次のパーティーが入ってきた。また四人パーティーのようだ。

王は怪訝な顔をしながら、大臣に聞こうとした。それより先に、大臣が間髪入れずに不手際の謝罪をしていたのだが、当然のように王は聞いていなかった。

「大臣、勇者パーティーというのは、四人でなければならんのか?」

「そのようなことは聞いたことがございません。冒険者協会に確認をして参ります。」

「そなたらは少し待機していてくれ。」

王は自称勇者のパーティー二組を引き止めたのだった。

静寂と重い雰囲気の中、大臣が急足で帰ってきた。

「陛下、確認いたしましたところ、そのような制限はないとのことです。」

「ふむ、なるほど。では、そこの二組のパーティーを一組にしても何も問題ないな?」

「はは…」

大臣は恭しく答えた。

「そなたらは今から8人パーティーだ。その方が生存率が高くなるだろうからな…」

「え?どちらのパーティーのリーダーがリーダーになるんです?」

一組目の勇者パーティーのリーダーが呟いた。

「世の決定に何か不服でも?」

「め、滅相もございません!」

王のこの一言で自称勇者の8人パーティーが出来上がったのである。

その後、冒険者協会には多人数パーティーを推奨するよう国王からの勅が飛んだのであった。


魔王は四天王を従えていた、地水火風の属性を司る魔物だった。

魔王は人間と戦うために、彼らにそれぞれ砦を与えていた。

しかし、ほぼ同時期に四天王戦死の報告が入った。

「なんだと?!四天王が?!どういう事だ?!」

魔王は狼狽えていた。四天王が撃破されたことにではない。魔王の狼狽の原因、それは四天王に与えた砦の場所である。

もし、仮に四天王の実力を超える勇者パーティーが現れ、四天王の一人を撃破したとしても、次の砦に向かうにはかなりの時間がかかるはずである。

しかし、現に四天王は撃破されてしまい、魔王城の結界も消えてしまっている。

魔王は早馬ではないが、足の速い魔物を派遣し、四天王の砦に向かわせた。

そして、魔王は驚愕の事実を知る。

なんと、砦のあった場所が荒地になっていたのだ。

最初に「こんにちは、死ね」を華麗に決めて見せた魔王だが、あまりの事態に言葉を失った。


そして、魔王城の南側に一組の勇者パーティーが出現した。むろん8人で構成されていた。

物見の魔物から報告を聞いた魔王は笑った。

「そうか、人間どもめ。4人ではなく8人と大所帯で来たか!足りない実力を数で補っていると見えるな!」

今度は魔王城の北側に同じく一組の勇者パーティーが出現した。

「どういうことだ?!なぜ勇者パーティーが二組もいるのだ?!」

しかし、勇者パーティーは魔王城に近づこうとはせず待機していることを聞いて、再び笑った。

「この魔王城が恐ろしくて8人でも入ってこれないか?!」

すると、東西の物見からも同様の報告が入った。その後急速に人影が増えていく様が報告された。

「な、何が起きている?!」

魔王は狼狽えた。いつの間にか勇者パーティーの大軍団に包囲されていたのである。

その数65536人…そして…

「放て!」

その言葉ともに一斉にクロスボウや魔法が魔王城に飛来したのである。

狙いを定めていない分、速射性は早く凄まじい数の遠距離攻撃が魔王城を襲った。そう、魔王城そのものを攻撃しているのである。


「魔王様!このままでは城が崩れます!退避を!」

魔王は部下の魔物に促されるまま外に出た。

そこにはあらゆる攻撃魔法で攻撃され崩落した魔王城の壁、クロスボウの矢の雨で絶命した魔物の屍の山があった。

ここに来て、魔王はようやく四天王の砦で何があったのかを察した…

「魔王が出てきたぞ!火線を魔王に集中させよ!」

すると、クロスボウの矢が魔王に命中した。

「このようなクロスボウの矢の1本食らったとこ…」

次の瞬間おびただしい数の攻撃魔法に晒され、魔王は消し炭となっていた。前口上さえ垂れる事を許されなかったこの魔王に同情を禁じ得ない。

「やれやれ、やっと終わったか。時間はどれくらいかの?」

「は、約2週間かと。」

「もう少し、詰められるかもしれんが、無理はいかんな。」

「はは…」

声の主は国王と大臣であった。


分進合撃…

国王は処理慣れした事務方を巧みに使い、冒険者協会からの依頼をコントロールし、魔王城に65536人の勇者を終結させたのであった。


そして、平和が訪れた…

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魔王「勇者が一人じゃないなら魔王だって一人じゃなくて良いよな」 ナレーター「次回 魔王(で編成された)軍の逆襲!!」 大賢者「総力戦になるからお約束破っちゃ駄目だって言ったのに……(つдT)」
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