地上からの提案
グースさんの死からしばらくして盛山大が私に会いに王宮図書館に来た。
「メアリー、こんにちは!王宮図書館は初めて来たけどここにはたくさん本が置いてあるね。」
「50000000冊以上あります。」
「そんなに⁈」
「えぇ。この国で出版された物は全てこちらに所蔵してあるので。」
「地上だと本もデジタル化されてて誰でもすぐに読みたいものが探せるけど、ここだと探すのも大変だよね。」
「そうですね。本に貼ったバーコードで所蔵場所はある程度分かりますが初めてだと大変かもしれません。ところで今回はどんなご用件ですか?」
人間と世間話をする義理はないので用件を訊く。彼は少し驚いたようだがすぐに気を取り直して話す。
「君への用事だったのにすっかり忘れてた。実は地上から手紙が届いたんだ。その中に君に渡してほしいってものもあって。」
渡された手紙の差出人を見て私は彼を睨みつけた。
「盛山さん、あなたは地上では死んだことになっているはずです。なのにどうしてこの人から手紙がくるのですか?」
「ちょっと待って!僕がビーストピアに来たときに彼に手紙を書いたんだ。宛先はシュアちゃんとシモンさんがチェックしてくれてオッケーをもらったんだけど……。それに彼は僕の友人のなかで一番信頼できる人なんだ。」
迂闊だった。盛山大の身辺調査で血縁者は祖母の黄瀬操しかいなかったから、手紙を出すなら彼女宛だろうと二人にチェックをお願いしたんだった。こんなことなら私がしっかり確認すればよかった。差出人はロボレンジャーのブルーこと青砥駿からだった。
帰宅後手紙を読む。本当は受け取らず燃やしたかったが、私の心情を見越してなのか「絶対に中身を見ること!」と封筒の表に赤で書いてあった。
「メアリー様、突然の手紙お許しください。現在地上では鴨のビーストをロボレンジャーのピンクが倒す映像が拡散されています。幸い小狼さんやlizさんのおかげでビースト全体を悪く言う人は減っています。しかし未だあなたたちへの恐怖心が残っているのも事実です。
ところで以前大さんからビーストピアにはPCなどのデジタルコンテンツがないと伺いました。今地上はデジタル社会です。地上との戦いに勝利するためにはデジタルの知識が必要不可欠でしょう。そこでもしよければ僕に協力させてください。決してあの時の罪滅ぼしではなく、純粋にあなたたちの力になりたいと思っています。 青砥駿」
読み終えた私は手紙を丸めて思いっきり投げつけた。なにが罪滅ぼしのためじゃないだ、お前のせいで私の大事なあの人は……。




