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裏切り者は

 ライオネルの側近であるグースの朝は早い。まずは身だしなみを整える。いつも着けている黒の蝶ネクタイは彼のトレードマークであり、誇りでもある。その後城内の様子を確認しつつ城で働く人たちに挨拶していく。そして朝食のメニューと王の予定を確認し起こしに行く。彼の仕事ぶりは完璧で、他の者たちから尊敬される存在だ。ところが……。


 「グース、正直に答えろ。お前が私たちの情報を地上に教えていたのだな。」

 城内の執務室でグースは王に問いただされていた。

 「ライオネル王、どうされたのですか?執務室へ来るよう言われたので来てみたらいきなり『正直に答えろ』とは。私が内通者だという証拠はあるのですか?」

 「否定はしないのだな。先日私はお前にクマのビーストのべアールに地上に行ってもらうと伝えたな。」

 「ええ、その場にはメアリー様やクシャ様をはじめとする四天王の皆様がいらっしゃいました。」

 「そうだ。だが、実際にはリズに行ってもらった。そしてそのことを知らなかったのはグース、お前だけだ。」

 「!」

 「そして地上のロボレンジャーたちもクマのビーストが来ると思っていた。これがお前が内通者であることの証拠だ。」

 彼は最初こそ涼しい顔をしていたが、証拠を突きつけられ自嘲的に笑って答えた。

 「あはっ。バレてしまいましたか。そうです、地上への内通者は私です。」

 「グース……。どうして……。」

 「どうして⁈お前が私のことをクビにしようとしたからだろ!」

 「なんのことだ?」

 「しらばっくれるな!私は観たんだ!お前や四天王たちが裏で私のことを嘲笑い、私をクビにし新しい側近を雇うと話しているのを!」

 「グース、何を言っている!私や四天王たちはお前のことを評価している。クビにするはずないだろう!」

 「ウソをつくな!だから私は地上側につくことにしたんだ。」

 「……。グース、お前は私のことを信じてくれないのだな。」

 王の寂しそうにいう姿をみて彼はハッとなる。彼がなにか言う前に王が言う。

 「グース、お前の処分は追って伝える。それまで家族と共に王都の外で暮らすがよい。家は用意してある。用事は以上だ、出て行け。」

 彼は執務室を追い出された。


 彼が自分の部屋へ戻る途中、すれ違う者たちが彼を見てコソコソと話しているのに気がついた。彼は自分が裏切り者であることがすでに城内に広まっていて非難されているのだと思い込んでしまった。

 「まずい、このままでは私だけでなく家族にも影響が出てしまう。」

 彼は急いで荷物をまとめて家族の元へ向かった。

 

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