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謁見

 その後のことは速すぎて一瞬に感じた。lizに言われて洋服以外を全て残して彼女と一緒にゲートをくぐるとビーストピアに着いていた。初めての場所なのにどこか懐かしい気がする。私が長官に聞かされていた世界と全く違う。みんな人間と同じ格好をしているし、道も整備されていて野蛮じゃない。しかも彼女に連れられて王宮でライオネルに会ったときにはもっとびっくりした。全然極悪じゃない、むしろ整った顔立ちで優雅な雰囲気を身にまとっている紳士だった。しかも王と一緒にいる女の子もふわっとしててかわいい。

 「はじめまして、紫藤麗奈殿。私はビーストピアの王、ライオネルだ。何があったのかは密偵及びリズから聞いた。突然のことで戸惑っていると思うのでゆっくり話をしよう。」

 王に促され、女の子とリズと一緒に席につく。女の子はメアリーというらしい。しばらくすると紅茶とクッキーが運ばれてきた。いい匂いだけど不味かったらどうしよう、と食べるのを躊躇っているとリズが私の口にクッキーを押し込んだ。

 「お、美味しい!!」

 「でしょ?地上と違ってこっちはちゃんと農業してるからね!」

 なんのことかわからないでいると、それも含めて王が説明してくれた。私の知ってることと全然違うし、反対だった。ビーストピアは敵じゃない、むしろ私たちが破壊している自然を守るために行動しているだけ。昔の私だったら信じられないけど、今は納得できる。

 「私からの説明は以上だ。なにかわからないことはあるかな?」

 王が優しく訊いてくれた。

 「あの、蜂谷くんたちがデビューしたのも作戦の内ですか?それから、社長はどうなったのでしょう。」

 「それについては私が説明します。」

 メアリーが話し始める。

 「まず、蜂谷さんたちですが、オーディションを受けたのは作戦の内ですが、全員がデビューできたのは偶然です。私たちも驚きました。特に蜂谷さんが受かったのはあなたのおかげだと思っています。」

 メアリーが頭を下げる。

 「次にあなたの事務所の社長ですが、始末しておきました。だってどうしようもないクズですから。事務所のタレントに手を出して、なおかつ利用価値がなくなったら捨てる。ほんとサイテーな…

 「メアリー!そこまでよ。」

 lizがメアリーの話を遮る。そして私を抱きしめた。

 「たしかに社長はクズよね。だけど麗奈は愛してたのでしょ。自分で気づいてないみたいだけど、あなた泣いてるわ。」

 彼女に言われて、私が泣いていることを知った。どうしようもない人だったけれど、私にとってはかけがえのない人だった。仕事を得るためと割り切っていたはずなのに、本気になっていたのね。

 私が落ち着くとメアリーは謝ってくれた。lizもだけど、ビーストピアの人って優しい。そしてメアリーからの質問に答えると王たちとの面会は終了となった。

 その後lizの案内で、新しく住む家を紹介された。小さいけれどきれいな家だ。

 「liz、本当にありがとう。あなたがなんで女優として人気があるのか不思議だったけれど、今なら納得だわ。」

 「こちらこそ、あなたのおかげでまた成長できたわ。そうそう、こっちに盛山大さんもいるからよかったら会いに行ったら?」

 「え⁈大さんって死んだんじゃ。」

 「まさか、さっきのクッキーに使ってる牛乳は盛山さんのところのものよ。」

 大さんもこっちにいたんだ。落ち着いたら会いに行ってみよう。

 「それじゃ、私はこれで。また遊びに来るわね。」

 「そういえば、ここに来る前の戦いであなた分身してたわよね。どうやったの?」

 私はlizに訊いた。

 「それは尻尾よ。」

 「尻尾⁈」

 「そう。トカゲのビーストは尻尾を切り離すことができるの。次の尻尾が生えてくるのに時間がかかるんだけどね。」

 彼女は笑った。

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