悲劇
小狼の話の後、しばらく会場内は静まりかえっていた。推しがビーストであることを受け入れられないのだろうか、そう思ったとき、
「あなたたちがビーストであろうが関係ない!あたしは番組を観て、あなたたちから元気をもらった。だからあなたたちをこれからも推していきます!」
最前列の女の子が叫んだ。するとそれを皮切りに、
「私も!今日雑誌を買って読んだら、ビーストだって書いてあってびっくりしたけど、番組でみんなの様子を見て悪いビーストじゃないってわかってるもん!」
「そうだ、そうだ!俺だって雑誌を読んだけどお前たちを応援したいからここにいる!たぶんみんなも同じ意見だぞ!だってアリーナが満席じゃないか!」
客席のいろんなところから蜂谷くんたちを応援する声が聞こえてきた。
「みんな、ありがとう!みんなの声援に応えられるように俺たち頑張るから!ずっとみんなの推しでいられるよう頑張るから!みててね!」
小狼の言葉に会場から拍手と歓声があがる。ここで小狼がマイクを蜂谷くんに渡す。みんな蜂谷くんの言葉を聞こうと静かになる。
「……。それから紫藤さん。この場にいるんですよね?出てきてください!」
呼ばれて私はステージにあがる。なんだろう。感謝の言葉かな、そう思っていたけれど違った。
「紫藤さん、僕たちはあなたを信頼していました。番組でも応援してくれていたし、僕自身も助けられました。だけど!僕があなたにビーストだと打ち明けた次の日にネットに僕たちのことが書かれました。紫藤さんがリークしたんですよね?そして今日あなたは『ロボレンジャー』として僕たちを倒すためにここにきている。そうですよね?」
「違っ
私が説明をしようとしたら客席から「えー!」っとブーイングが響いた。
「ふざけるな!お前、推してるフリをして小狼たちを売ったのかよ!」
「サイテー!そもそもルイたちの弱みを握るのが目的だったとか?」
「帰れ!帰れ!」
会場に帰れコールが響きわたる。私は逃げ出すことしかできなかった。
帰路に着く間も周囲から私への非難が聞こえた気がした。急いで家に着いて驚いた、私の荷物がない。混乱していると社長が入ってきた。
「社長!これはどういうことですか!」
「麗奈、お前は今日でクビだ。この家も今すぐ出て行け!」
「どうして!」
「どうしてって、お前動画見てないのかよ。さっきのライブの映像が生配信されててな。お前の評判は地に堕ちたんだ。そんな奴、この会社にはいらないんだよ!」
社長に映像を見せてもらう。コメント欄は私に対する誹謗中傷で溢れかえっていた。そんな私に追い討ちをかけるように
「そうそう。お前の代わりに新しくこの事務所に入ってくれることになった人がいるんだ。どうぞ!」
入ってきたのはlizだった。社長はlizの肩を抱き寄せる。
「lizさんだ。今日からこの場所にも住んでもらう。」
どうやら社長は私からlizに乗り換えたようだ。
「それなら奥さんにバラすわよ。」
そういうと社長は笑って、
「お前とのことはもうバレてるよ。アイツはお前が事務所を辞めることと慰謝料を払うことで俺のことを許してくれるそうだ。だから慰謝料もよろしくな。」
「なっ。」
「それじゃ、お引き取りください。でないとこれもネットで配信するぞ。」
私は家を追い出された。




