葛藤
次の日、長官から招集がかかり基地に集まった。ブルーは外せない用事があるとかでいなかった。私もブルーみたいに断ればよかった。蜂谷くんたちのファンブックが雑誌のみで発売されることになったから予約をしたかったのに。そう思っていたけれど、長官の言葉を聞いて私はびっくりした。
「みんな集まってくれてありがとう。実はパープルが出演していた番組でデビューが決まった者たちがビーストであることがわかった。」
「えぇー!うそでしょぉ。桃香、ファンだったのにぃ。」
桃香がわざとらしく大声で言う。そんな桃香を無視して長官が続ける。
「ビーストである以上、人々にどんな悪さをするかわからない。奴らは近いうちにコンサートを行う。そこで奴らを倒してほしい。それからパープル、君は奴らがビーストだと知っていたか?」
「……。知りませんでした。」
「そうか。君はロボレンジャーなのだから常にビーストの気配を察知しないとダメだぞ。」
「……。わかりました。」
「では、これで解散。詳細は追って伝える。」
その後はどうやって家に帰ったのかわからない。ずっと目の前で見てきて、彼らの良いところもいっぱい知ってる。そんな人たちを討つなんて……。しかも翌日彼らがビーストかもしれないというネット記事が上がっていた。その記事はトレンド1位となり、多くの人に知られることになってしまった。私は目の前が真っ暗になった。
ライブ当日。ライブ後に彼らを倒すとの長官の指示で私は舞台袖に一人で隠れていた。まだライブは始まっていないし、レッドと桃香もまだ来ていない。長官から通信が入る。
「はい、パープルです。」
「私だ。レッドとピンクだが急遽別の仕事をお願いした。だから君だけで奴らを倒してくれ。」
「は…⁈」
「連絡は以上だ。健闘を祈る。」
「ちょっとまっ……
通信が途切れた。ありえない。どうして私一人で蜂谷くんたちと戦わないといけないの。そう思っていたら、ステージの方から歓声が聞こえた。どうやらライブが始まったらしい。
最初に小狼の声が聞こえてきた。
「みんな、今日は集まってくれてありがとう。ライブの前に僕たちから重要なお話があります!実は僕たち全員ビーストなんです!」
会場が静かになる。
「僕たちは純粋に歌やダンスが好きで、いろんな人に僕たちのパフォーマンスを届けたいと思って、ビーストであることを隠してこの番組に応募しました。5人とも合格できてデビューが決まり、嬉しいと思う反面、自分たちがビーストであることを知ったらファンの人たちががっかりするのではと怖くなりました。ビーストであることを隠してデビューするということも考えましたが、ファンのみんなを欺くことはできないと公表することにしました。」




