告白
最終審査に合格したのは5人だった。1人目はリーダーシップを発揮した小狼。2人目は最終審査まであまり目立たなかったが、最後に素晴らしいギターテクニックを披露した松木哲也。3人目はコワモテの見た目と裏腹に甘い物が好きで情に熱い西表秀。そして蜂谷くんとルイだった。名前の発表後、審査委員長がデビューについて説明する。
「みなさん、合格おめでとう!君たちにはバンド型アイドルとして1ヶ月後、デビューコンサートをしてもらう。担当についてはドラムが小狼、ギターが松木とルイ、キーボードが蜂谷、ベースが西表だ。なおルイと蜂谷のツインボーカルでいく。デビューまで気を抜かないように!」
「「「「「はい!!」」」」」
こうして蜂谷くんのデビューが決まった。
撮影終了後、
「蜂谷くん、デビューおめでとう!!!」
私は彼に駆け寄りハグをする。
「……。ありがとうございます!紫藤さんのおかげです。」
「麗奈でいいわ。蜂谷くんが頑張ったからよ!これからデビューに向けて忙しくなるわね。デビューすればもっとあなたは有名になるわ、よかったわね!」
蜂谷くんの顔が一瞬曇ったように気がしたがすぐに笑顔になる。
「はい!紫藤さんも含め、応援してくださった人のためにも頑張ります。」
失礼します。と言って彼と別れた。
その後、番組としての密着は終わりとなり私の仕事も終了した。だが推しのデビューを最後まで最前線で見届けたい私は毎回練習を見学していた。みんな厳しい審査を勝ち上がっただけあって、楽器もすぐに上達していった。だが、コンサートまであと1週間だというのにメンバーの顔が暗い。練習後、私は蜂谷くんに訊いてみた。
「蜂屋くん、なんだかみんなの顔色が良くないけど何かあったの?」
「……。紫藤さんは秘密を守ってくれますか?」
「もちろん!」
私は大きく頷く。
「……。実は、僕たち全員ビーストなんです。もしファンたちがそれを知ったらと思うと怖くて。」
え、彼らがビーストですって⁈私は言葉が出ない。
「……。やっぱりそういう反応になりますよね。ビーストだということは隠しておいた方がいいですね。紫藤さんも内緒でお願いします。」
そう言って彼は去っていった。
私は帰宅後も彼らのことを考えていた。彼らが野蛮なビーストだなんて信じられない。でも蜂谷くんが嘘をついている感じじゃなかった。もしかして良いビーストもいるの?だとしたら彼らの正体は内緒にしておこう。そう思っていたのに。