意外な真相
「ルイくんは悪くありません!」
そう言ったのは蜂谷くんだった。
「ルイくんは合宿の初日に『お前、良い声してるな。だけどまだ技術が追いついてない。いいか、この合宿中に俺や他のやつの技術を盗め。俺はアレこれ言わない。だけど、お前の歌より良いものを見せてやる。』って僕に話しかけてくれたんです。実際のレッスンの時も僕がやりたくてもできなかったことをルイくんは見せてくれた。だからルイくんは嫌がらせで僕の真似をしたわけじゃないんです!」
私も含め、みんなが驚く。代表で小狼がルイに訊く。
「ルイ、今の話は本当なのか?」
「……。チッ、言わなくていいことをベラベラと。……。そうだよ。前の審査でコイツの歌声を聴いて、俺の隣で歌うのはコイツしかいないって思ったんだ。だが技術がまだまだ未熟だ。だから上達してもらわなきゃ困るって思ってた。でもどうしたらって考えてるところにこの2人が声をかけてきたんで利用しただけだよ。」
「でもお前がやった方法だと蜂谷が落ちる可能性だってあっただろう?」
「そうなったら俺に相応しくなかっただけだ。まあ今ではコイツが落ちるなら俺も選考を辞退するつもりだ。」
ルイが蜂谷くんに笑いかける。蜂谷くんも照れながら笑い返す。
「じゃあ、この件で悪いのは2人だけか。」
小狼が2人を睨みながら、
「俺は仲間を蹴落とそうとするヤツが1番嫌いなんだ。自分の能力を上げる努力をせずに他人を蹴落とそうとするお前らと一緒になんかやりたくない。よく反省しろ!」
2人が項垂れる。その様子はバッチリ撮影されていた。
後日、合格者の投票が行われた。結果蜂谷くんを貶めようとした2人は脱落。合宿でリーダーシップを発揮した小狼、蜂谷くん、ルイは合格となった。特にルイは最初にマイナスの印象がついた後で、蜂谷くんを庇っていたことがわかったため視聴者の支持が増え、ぶっちぎり1位だった。
「はぁ。」蜂谷くんが合格したのは嬉しいが、私は少しまずいことになっていた。ルイの信者と化した視聴者が、あの動画を撮影したのは誰なのかと騒ぎ始めたのだ。幸いネットで撮影スタッフの仕業となっていて、私だとは気づかれていない。しばらくは目立ったことはしないでおこう。
そして最終審査となった。最後は全員でステージに上がり同じ曲を同時にパフォーマンスする。何をするかも自由である。その様子を生配信し、リアルタイムで視聴者に投票してもらい、デビューする人が決まる。
ステージはみんな最高だった。ルイと蜂谷くんは二人でハモりながら素晴らしい歌声を披露してたし、最終審査に残った8人全員が個性を発揮していた。このままみんなデビューできそうな雰囲気だった。そして遂に結果が発表された。