決意
「『私残業しません!』主役、吉村由佳子役の紫藤麗奈さん入られます!」
「よろしくお願いします!」
「しとう、れいな?知らない名前だな。この配役ってlizさんじゃなかったっけ?」
「監督が事前にアナウンスしてただろう、忘れたのか?」
「そうだっけ?それにしても知らない名前だな。これって局の肝入りドラマなのに大丈夫なのか?」
「シッ。声がでかいぞ。なんでも事務所のゴリ押しとロボレンジャーへの忖度でなったみたいだぞ。」
大さんの死の発表と同時に私たちの正体を明かした雑誌とそのネット記事がアップされ、私たちの名前が世界中に知れ渡った。ネットも全世界トレンド1位だったし、雑誌の売り上げも1位を獲得している。まあ、雑誌自体ネット記事の台頭により出版数が減っているから気にするほどでもないけど。それでも日本の農業の事実をスクープした2位の雑誌を大きく突き放して歴代最高販売部数を更新したらしい。それによって私たちはメディアに出る機会が激増した。元々私とあの女は芸能活動をしていたから、各局がロボレンジャーとの太いパイプを狙ってオファーが沢山来るようになった。まああの女は大手事務所の人気アイドルのセンターだから顔出ししなくても売れていたけどね。
この日の撮影を終えて家に帰る。あの生意気なADはプロデューサーに言って降板させたから気分が良い。入浴を終えて晩酌の準備をしていると鍵が開く音がした。玄関じゃない方だからあの人だ!私はバスローブのまま出迎える。
「社長!」
「麗奈、撮影お疲れ様!」
抱きついて熱い口付けを交わす。二人でそのままベッドに向かう。一通りやり終わった後、社長がタバコを吸いながら、
「しかし、お前がロボレンジャーだったなんてな。俺にホクロの位置まで教えてるお前に隠し事があったなんて知らなかったよ。」
「だって最初はヒミツだって言われてたんだもの。」
「拗ねるなって。まあ正体を明かしたおかげでお前を人気女優の仲間入りができたんだからよかったじゃないか。」
「ねえ、社長。私の人気が出たら奥さんと別れて私と結婚してくれるんだよね?そろそろ……。」
私は彼の背中を抱きしめながら訊く。
「うーん。もう少しかな?お前がlizくらい売れたらだな。」
またlizか。彼女は最近女優として人気を博してきた人で、年齢もキツそうな見た目も私と似ている。だけど、正体を明かす前の私にくる役は愛人とか主人公を虐める人なのに対して、彼女はサバサバしてかっこいい主人公。ずっと劣等感があった。でも今なら彼女に勝てる気がする。彼女に勝って、社長と結婚するんだ。