謁見
僕はビーストピアで暮らすことになったが、所長と後輩は地上に帰ることになった。でもここに来たことがバレたら所長たちだって立場が危うい。心配になってシモンさんに訊いたら、
「その点は心配ありません。お二人の身代わりが今地上にいらっしゃるので、ここに来たことは絶対にバレないです。それに戻ってからも護衛をつけるので安心してください。」
すごく自信があるみたいだ。なんでも二人の身代わりになっているのは変装のプロらしい。
「では、そろそろお二人を地上へお返しします。」
「あ、ちょっと待ってください!」
僕は紙と便箋を借りてある人に手紙を書く。宛先はシュアちゃんたちに確認してもらってオッケーをもらった。
「信二、これをこの人に渡してくれ。」
「わかりました。最後に先輩!俺先輩がイエローでも全然幻滅しませんでしたよ?むしろ俺、元々イエローのファンでしたし。」
「な、なんで俺がイエローだって知ってるんだ⁈」
「わかりますよ。何年先輩と一緒に仕事してると思ってるんスか?他の人を守るために自分が真っ先に動く。俺が先輩の尊敬しているところっスから。」
「信二……。」
「この戦いが終わったらまたカレー食べに行きましょう!」
こうして二人は帰って行った。
その後、僕はビーストピアの王様に会うことになった。王様と会うのはシモンさんの家。僕のことはまだ内緒だかららしい。王様に会うなんて緊張する。ロボレンジャーの長官が言っていたように、威張り散らして偉そうな方だったらどうしよう。僕の心配を察したのか、
「大お兄ちゃん、大丈夫だよ。王様、すっごく優しいから!」
「四天王のシュア様がおっしゃっているので本当ですよ。私たちにもお優しい、頼りになる王様です。」
まさかシュアちゃんが四天王だったなんて驚きだ。でも二人に言われて少し緊張がほぐれた。
しばらくして王様がやってきた。かわいい癖っ毛の女の子も一緒だ。
「大殿、ビーストピアへようこそ。それから、モー子殿を守ってくれてありがとう。住んでいる場所が違えど、私にとっては同胞だ。君は私の恩人だよ。」
「いえ、僕はモー子のことが大切だったのでやっただけです。それに僕はロボレンジャーのイエローとして、あなたたちの仲間を傷つけてきました。それなのに恩人だなんて……。むしろ僕はあなたたちの仇です。」
「……。たしかに地上で私の仲間たちはロボレンジャーに攻撃され、重傷を負っている。その点では私たちの敵だろう。だが、君はシュアやシモンがビーストだと明かしても排除しようとは思わなかった。心に宿った憎しみや怒りは消えない。けれど、そればかりに気を取られていては前には進めない。それに、『全部が悪』という者はいないだろう?だから私は君のことを許すし、傷つけるつもりはない。」
なんていい王様なんだろう。地上の偉い人は自分の保身ばかりだし、一度された嫌なことは一生覚えていて、それに囚われる人が多いのに。王様が申し訳なさそうに言う。
「時間が限られているので本題に入ろう。大殿、君にとっては地上の仲間を裏切ることになってしまうが、君の知っていることを教えてほしい。」
僕は『ロボレンジャー』のことで知っていることを全部話す。僕も含めたメンバーのこと基地の場所、使っている武器など、伝えられることは全て話した。すると癖っ毛の女の子が、
「大さん、貴重な情報をありがとうございます。ところで『ロボレンジャー』の長官についてはご存知ですか?」
「うーん、いつもモニター越しでしか見たことがないけれど、50代くらいの男性だと思うよ。」
「モニター越し……。貴重な情報をありがとうございます。」
こうして僕の王様への謁見は終了した。




