助けてくれた人たち
僕はシモンさんの言葉に大きく頷いた。
「わかりました。僕をここに置いてください!」
あまりにも即決だったので、彼もびっくりしている。
「大、これからの大の生活を大きく変える決断なんだぞ。よく考えなくていいのか?」
「はい。どっちみち地上に戻れば僕は逮捕されるでしょう。それにもうモー子には会えない。それならここでシモンさんたちと暮らした方がいいなって。」
「……。そうか。そしたら君に会わせたい人たちがいる。ついてきてくれ。」
シモンさんに連れてこられたのは立派な牛舎だった。そこにいたのは、
「モー子!!!」
「もー!」
ずっと世話をしてきたから見間違えるはずがない。処分されたと思っていたモー子がいた。
「シモンさん、これはどういう」
ことですかと言いかけたとき、前から二人組がシュアちゃんに連れられてやってきた。
「所長と信二……。」
「シュア様、大を連れてきました。」
シュア、様⁈
「間に合ったんだね!よかった。大お兄ちゃん、改めて初めまして!リンドウ・シュアだよ。こっちはシュアのコックさんのシモン。」
「シュア様のコックのシモンです。実は私たちは親子じゃないんだ。嘘をついてごめん。」
そうだったのか。でも見た目が子供のシュアちゃんがシモンさんよりも立場が上って意外だ。シュアちゃんは一体何者なんだろう。
「大お兄ちゃん、シュアたちのことよりもこのおじちゃんたちの話を聞いてあげて。」
所長たちが戸惑っているのをみてシュアちゃんが助け舟をだす。
「盛山君、実は私たちも君に内緒でモー子の世話をずっとしていたんだ。」
「先輩がコソコソ何かをやっているのが気になって後をつけたんス。そしたらモー子を世話していることがわかって。先輩と同じで俺らも生まれた時からモー子を見てきたんで、生きてるってわかって嬉しくて。先輩がいない時に所長と二人で交代で世話をしてたんス。」
「だけど君と同様、それが上にバレてね。『牛の処分に協力してくれたら君たちは罰しない。』と言われたんだ。だけど、私たちもモー子を処分したくなかった。」
「悩んでいたら、あのカレー屋を思い出したんス。あのカレーの材料は絶対昔の農法で栽培しているって思ったんで、もしかしたらモー子を助けてくれるんじゃないかって。そしたらまさかビーストだったなんてびっくりっス。」
「お二人が店に来て話を聞いて、私たちもぜひ協力したいと申し出たんだ。お二人は大のことも心配していたしね。それで君を保護することにしたんだ。」
二人がモー子の世話を手伝ってくれていたこと、僕の心配をしてくれていたこと、全然気づかなかった。とても嬉しい。
「大お兄ちゃん、シュアたちとこっちにきてくれるよね?」
「ああ、逮捕されるからとかモー子に会えないからとかネガティブな理由じゃなく、僕は心からここで暮らしたいって思うよ!」
「大お兄ちゃん、ありがとう!そしてようこそ!」