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嵐の星のもとで  作者: 音頭
序章
6/30

生物融人とは  希望なき悲劇

胸糞表現が出て来ますので、それでも大丈夫だという方は読み進めてください

「ここから遥か彼方の世界。そこに巨大なる方舟(ギガントノア)という世界がある。

その世界はこの世界の1秒が1000年以上、魔素の濃度が1億倍以上と究極の極限世界だ。

蟲類、魚類、鳥類、甲殻類、軟体類、爬虫類、両生類しか生息しない。

そこで日々食い合い生と死を繰り返し続けている。

故にその生物たちは生き残るために進化を強いられる。

しかし、そんな場所であまりにも強くなりすぎた存在は淘汰される運命にある。神の見えざる手によって、排他され、方舟から弾き出され、下の暗闇に落とされる。方舟の外の世界は引力が支配する。無慈悲に暗闇に落とされる。その先は奈落で、一度落ちれば上がってくることは決してない。そのまま下へ下へと消える。


だがこの暗闇を生き残る道に1つだけ抜け道がある。その抜け道を亜空の穴という。一説によるとその抜け道は何かが強引に掘ったような穴だと言う。

その穴はこの世界の何処かに続いている。排他された生物がこの世界にやってきて、人間の姿を模った。

これを種源者と呼び、その子孫を生物融人と言う。その生物融人が住まうのが今の世界だ。


…例えば、害虫ってのがいるな。ゴキブリってのは代表例だろう。

2人に聞こう。外見は人間、中身はゴキブリそんな存在を君たちはどう思う?何も感じないか?

否、気味悪いだろ。生理的に受け付けない人だっているはずだ。」


正直気色悪い。俺は別に苦手ってことはないんだけど、優花とかは虫が嫌いだし、嫌いな人はとことん嫌いだろうし、そんな存在良く思わない人だっているだろう。


「けど、見た目は人間なんだろ。中身なんてばれないんじゃ。」


この話はあくまでも中の正体を知っていた前提の話に過ぎない。


「そうだな。自らが話そうとしない限りは、確かに人間にしか見えない。その本質は究極生物だ。」

「究極生物?」


確かに強いは強いんだろうが、その言葉を使うほどに強いんだろうか?

流石に吹きすぎな気がする。


「極限の環境に耐えうる力を持っている手前、究極生物という表現が最も合う。これから話す起こった悲劇はその究極生物によって引き起こされた惨事であり、希望のない結末を迎えた。そしてその物語はとても胸糞悪い。」


「これは去年あった出来事だ。確か、冬に入るあたりの出来事だった。君らと同じくらいの年代の子が30人くらい強制転移によって、この世界に出現した。誰の手によるものだったのかはいまだに解明されていない。


しかしこれを放っておくわけにはいかなかった。かと言って、我々もすぐに国民として受け入れるわけにはいかなかった。

彼らに敵意がないのか、危険性がないのか、それらをよく吟味しなくてはいけなかったからだ。

そこで、我々は常に危険がないのかを記録するために監視者をつけた。4年間特に何事もなければ、彼らは国民入りになる予定だった。

彼らは初め従順だった。


だが、3か月たった時だった。彼らは凶暴化した。

思春期であった彼らが抑圧し続けたものが暴走してしまったのか、はたまた我々のサポートが気に食わなかったのか、そんな理由も考えられていたが、真実は違った。


監視者の男の中身がばれてしまったんだ。

男は件の種族だった。

そう、彼らの持つ嫌悪感が暴走させてしまったんだ。そこからは良くなかった。監視者に対し、罵詈雑言・暴力、その行為すら行うようになった。ここまではまだよかった。

転移したものに時折持つものが存在する。祝贈(ギフト)、いわゆる与えられた能力だよ。今回も例外ではなかった。

しかしこれが引き金になった。

監視者の男の名はクロカゲ、閣下を近くから支える付き人だ。スターチスが彼の後釜に当たる。

その能力の行使を見た瞬間、彼は観察から排除へと行動を移した。


究極の究極たるところは力だけではない判断もその1つだ。判断が1秒でも遅れれば、それは死に直結する。

体の中の深くの遺伝子に刻まれたかつての記憶、そこに人間としての罪悪感は存在しない。生物の本能だ。全ては1つの目的のために最適化される。


故に彼は即座に判断をした。彼にとって重要なものを守るため、彼らを侵略者と断定し断罪した。

逃げても、足掻いても意味なんて持たない。1人ずつゆっくり追い詰め、殴殺した。そうして10人だけが生き残った。多くの物は間引かれた。」


フライは話し終えた。俺と優花は絶句していた。こんなことされたら、トラウマになるのも仕方ない。耐えきれる自信は全くない。

双葉があんなにも過剰だったのが分かる気がする。


「けど、全員を殺さなかったのは何でですか?」


これは疑問として引っかかっていた。危険だと判断したのだったなら、全員する方が楽なはずだ。不謹慎であるのは承知しているが、好奇心が勝ってしまった。


「危険性と有用性だ。怯えるもの・戦意喪失するもの・絶望するもの、そんな奴らは放っていてもいい。二度と歯向かおうとはしない。使えるものは使うそれだけの話だ。」


「その生き残った10人の子たちはみんな元気なんですか?」


優花が少しだけ晴れた顔をしている。みんな死んでいないことを知って、ホッとしているのだろう。

特に怖い話なんて大の嫌いな彼女らしい反応だった。


「いや、1人を除いてみんな死んだ。彼らがシェアしている家が放火で全焼。みんな生焼け死体に。この話は気味が悪い。希望なんてなく胸糞が悪い。だからこの話は好きじゃない。」


フライは話を終えた。

俺は再び絶句し、優花は口を押さえる。朝一・寝起きからこの話はあまりにも重かった。

何故フライが言いたくなかったのかわかった気がする。



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