表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嵐の星のもとで  作者: 音頭
序章
4/30

家へ

俺たちは今、屋敷の入り口にいる。

あの後、スターチスの先導ですぐに移動した。

そこにはハットを被り、ステッキを携えた紳士がいた。


「フライ様、お待たせしました。」

「ああ。」


ハットのつばを上にあげ、一瞥する。

その紳士は若い青年の容姿をしていた。


「初めまして、私の名はフライ・ベルゼブル。以後お見知りおきを。」


帽子を取り、胸に手を当て、腰をかがめてお辞儀をする。


「ところで、スターチス。君はあのうるさいのを何とかしてくれないか?」


眼を後ろへと向ける。その先には1人の少女と幼女がいた。

少女は頭から頭から2本の角が生え、片方の角が半分にかけており、幼女は額から二本の角が生えていた。


「アル、スミレ、どうしてこちらに。」

「スターチスさん、ごめんなさい。」

「スターチス、たのもー!!」


スターチスはその様子に驚き、少女は申し訳なさそうに、幼女は枝を振り回してアグレッシブさをかもしだしていた。


「スミレ、後にしていただけますか。」

「え~、やだあ。いつもそうじゃん。仕事ばっかで構ってくれないんだもん。」


「そうは言われましても、これは大事なことなのです。どうにか、分かってはいただけないですか?」

スターチスはスミレを説得しようと試みているが、歯切れが悪くとても分が悪そうにしている。


「スミレ、今日閣下は帰ってくることはない。今からやることが終わったら、今日は一緒に帰ったらいい。それならどうだ?」

「うん、それならいいよ!」


間を取り持ったフライの提案をスミレは了承した。


「…。了解しました。」


この様子を見て、スターチスは観念したように諦めた。


「さあ、行こうか。スターチス、予定の通りで進行してくれ。

気にする必要はない。なんか言われたら、私の名前を出せ。そうすれば、私宛に直接クレームが来るか。手紙が来るかのどっちかだ。前者ならガン無視、後者ならシュレッダーにかける。問題は何もない。

責任は私が取ろう。」

「わかりました。」

「というわけで、お前ついてこい。」


フライが指を指してくる。


「え?」

「野宿したいのか君は?」

「いや、そうじゃないけど。」

「ならついてこい。」


何の説明もなかったじゃん!なんか話してるなあとは思ったけど。勝手にそっちの都合で進んでいって…

せめてなんか言ってよ。

文句を言おうとしても、そんな暇なんてなくフライに置いて行かれる。

道を迷ったら、帰ってこれるかの保証はない。見失わないように今はついていく。

ちらりと後ろを見ると、スターチスが将貴を連れて行っている。

どうやら俺たちが向かっているところは違うところらしい。


外に出ると、隣には黒い檻に囲まれた巨大な建物。檻の上には有刺鉄線が敷かれている。

監獄なんだろうか?恐ろしくて、まじまじとは見ることができなかった。


ぶおおおおおお!!!


「うわああ!」


まるで雷鳴のようなけたたましい音が響く。その音に耳鳴りがする。


「ハハハハハ、周りを見て気づいていなかったのか。これは魔導汽車の音だ。」


魔導汽車?音が聞こえた方向を見ると…

(おおお!)

目の前にあったのは、ロマンの詰まった巨大な黒鉄の塊、SLだった。

図鑑でも博物館でも見たことがあったが、動いている実物を見たのは初めてだった。


「今からこれに乗るんですか!?」

「ああ、そうだ。興奮するか?」


これを興奮しないってのは無理がある。まさか異世界に来てから乗れるなんてこんなことあるんだな。

俺はそんなことをしみじみと感じていた。


ガタンゴトンと汽車はレールの上を動き出す。動いてもなお、興奮は冷め切らない。開いている席に座り、窓から外の光景を見る。

汽車は風の如く走り、風景が変わり続ける。

(ん?)

巨大なラッパ状の口がついた建物がある。その建物は他の建物とは違ってひときわ大きかった。

その建物は変わりゆく光景の中でもいくつもあった。


「あの建物は何?」


目の前に座るフライに聞く。


「この国のパイプラインだ。君に魔導の知識が付けばおのずと理解できる。」


パイプライン。そんなにも、あそこは大事なのか。


「降りるぞ。」


汽車が止まると同時にフライに声をかけられた。

フライの後を付いて行って、汽車から降りる。

(何もない。)

今までは街だったのに、降りたところには何もなかった。


「ここだ。」


着いた先にはポツンと2階建ての家が立っていた。


「2階には君の部屋がある。

私は用があるときにしか来ない。ただ、地下には入るなよ。入ったら鬱になるだけだからな。」


地下が気になるが、気にしないでおく。

俺はそのままフライに付いて、中に入っていった。


しばらくすると開けた居間に辿り着いた。

居間には長テーブルと椅子がいくつか置いてあった。

そこに1人の少女が座っていた。それは知っている顔だった。


「優花!」


俺の声に反応して、少女は俺の方を見る。そんなに離れた気はしなかったけど、とても懐かしく感じた。


「正也!」


彼女は椅子から立ち上がり、

彼女は少し涙を浮かべて、抱き着いてきた。


「良かった…良かった。」


俺は初めて見た優花の様子に困惑するが、俺は震えてる優花を受け入れ、腰と肩に手を置く。

(なんか帰ってきたって感じがするな。)

彼女の声・音・匂いがその懐かしさをさらに際立てる。

いつの間にか、フライさんは消えていた。邪魔にならないように気を遣ってくれたんだろう。

でも、どうやってドアを開けずして、出ていったんだろうか?

気にはなるが、今はこの時間を過ごすことにした。


この後は2人で思い出話に花を咲かし、これまでにあったことを言い合って、過ごした。

それは時間を忘れ、2人とも部屋に戻ることもなく日が落ち、寝落ちするまで続いた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ