ドッキリ?
「初見でしか味わえない快感だ。」
エスワードはニコニコしている。
「ドッキリ?」
「ところがどっこい、マジ。」
「マジすか?」
「マジマジ。どうして、そこにオークがいるんだい?」
オーク?指さした先にはスターチスがいた。その姿は確かにファンタジーの世界とかで出てくるオークだ。そんな存在は今までいた場所にはにはいない。
コスプレをしているにしては手の先まで剛毛になっている。その姿は豚男よりかは猪男だった。
それに性格的にかなりの堅物のように感じる。そんな人がコスプレをするとは考えにくい。
確かにここはファンタジーの世界なんだろう。
剣と魔法の世界…ここが異世界なのは本当なのだろう。
何の因果なんだろうか。突如として、異世界に来るとは。
それもクラスメートと共に…。
「痛!」
思いっきり頬をつねる。ここが果たして夢であるのか、はたまた死ぬまでに見てる幻であるのか定かではなかったからだ。現実では刻々と死へのカウントダウンが始まっているかもしれない。
「何やってんだお前?」
将貴に変な目で見られた。
「だって、夢じゃないかって思っちゃって。」
「夢だったら、もっと自分勝手にできるだろ。なんでこんなに体が動かないんだよ。」
マジレスされた。けどそれは一理ある。死ぬ前の幻なら、それはきっと自分勝手で都合の良いものだ。
(そもそも俺こいつとそんなに面識ないし。)
こいつはクソがつくほど真面目で、堅い。融通が利かなく、自分がしたいものを押し通す。
自分の意思を曲げるってのが嫌いな奴だからな。
一匹狼な男で、近づきたいか近づきたくないかで言ったら、どっちかと言えば近づきたくはないタイプだ。
悪い奴ではないことは分かるが…その面倒くさいんだよなあ。
叩かれるから決して本人の前では言わないけど。
「△ってことはどういうことなんですか?」
そんな心の中を知らず、将貴は話を進行させようとする。
「死んでここに来た。」
その返された言葉は手短に収縮されたものだった。
(そっか、がれきの下敷きになって死んだんだ。)
だが、その短かな言葉が確かな真実を教えた。
けど、なんで死んで来たことを知っているんだ?
「死んだことを何で知っているんですか?」
「なんでだろうね。」
はぐらかされた。これ絶対に教えてくれねえじゃん。
「ま、いいいじゃん。転生したってことは君たちにとっては、第2の人生だ。好きに生きたらいい。これは私からの餞別だ。」
生き残っていても、今みたいに2本足で地面を立てるわけではない。
何故かは分からないが、ついている。
俺ら2人に紙が降ってくる。
「「!!!」」
その紙に触れると、ビリビリビリっと電気が走るような感覚を抱く。
今度こそドッキリか?
そんなことを思っていると、大きな違和感に気付く。
「あれ?体が動く?」
先ほどまでの鈍い動きとは違って、身体がスムーズに動く。
この感動は将貴も感じていたようで、手をにぎにぎとさせていた。
「サプラーイズ!はっはっは、その驚いた顔、い~ね。ただこれは有効期限付きだ。それまでに頑張って探すんだな。じゃないと…。」
なんだ?最後の笑顔は?…怖い。
何か薄気味悪さを抱いていた。
「それはどういう?」
「んん?んん。んんう。」
質問しても、ニコニコと頷くだけで決して答えてくれなかった。
これ以上のことは何も教えてくれなかった。