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嵐の星のもとで  作者: 音頭
1章 ギルド参入編
24/33

犯人と冤罪

「ここで何があったんですか?」


荒れ果てた様子から何かがあったかは明らかだ。

分かっているものはひしゃげて転んだ車椅子。車椅子の車輪は曲がり、二度と立ち上がる事はできないだろう。

床に付いた血痕。血の跡はぽたぽたと滴り落ちるようなものだけではなく、べったりと床にへばり付いている。

他には割れた窓。割れた部分の大きさは石でも投げて割られたようなもので、窓のガラスは外へと中へは散らばってはいなかった。

そして、何かの石の破片だ。

なるほど、全く分からん。

フルーレットはこの光景に固まり、絶句。オトハは『あぁ、あぁ。』とうわ言のように呟いて声を出し、頭を抑えてふらついている。


「被害者はフラッド・レイン。彼がひとりでいるところを襲われた。第一発見者は宿屋の主人、下で受付をしていたところガラスが割れる音と耳をつんざく様な音が聞こえ、この部屋を見に行くと、被害者が車椅子から倒れ、血の海に横たわっていたのを見つけた。

今容疑者を特定している最中だ。

君たちに聞きたいのは今日までの彼の様子、変わったところだ。」


事件を説明した後に俺たちのことを聞かれた。

俺たちは疑われている。


「俺たちは逮捕されるのでしょうか?」

「逮捕?いや、君等には犯行の起こった時刻にはアリバイがある。逮捕は何の証拠もなしにはできん。私は昨日の様子を聞いているだけだ。」


(なんだ。良かった。)

俺は胸を撫で下ろし安堵した。


「何も変なことはなかった。そうだよな?」

「うん。何も変わらなかった。」


俺とフルーレットは口を揃えて同じことを言う。少なくとも俺たち2人は常に行動が同じだからおかしな話ではない。


「ああ、あぁ…」


フラッドのことをよく知る肝心な彼女の様子は情緒が安定しておらず、うわ言を呟き続ける。


「なるほど...これからひとつだけ質問をする。この質問に答えたら、君たち2人は解放しよう。」


君たち2人、俺とフルーレットのことだろうが、オトハはどうするつもりだ?


「今はその質問は受け付けん。鷹か鷲は見たか?」


フライさんにしては珍しく、焦っている?

しかし藪から棒にその質問は謎だ。


「そんなものなんて何も…。」


ここでふと思い出す。あの不気味な猛禽を。

ただ、あれは…本当に見たのか、そもそもいたのかも、正直なところ半信半疑だ。


「ああ、十分だ。2人もう戻っていいぞ。」


そうこう思い出しているうちに、突如として俺たちは解放された。


「待って、オトハは?」


もしかして彼女は疑われてるのだろうか?もしそうだとしたら、それは冤罪だ。彼女はなにもしていない。なにもするわけがない。


「ここから先は君たちには知る権利はない。」


フライの顔からは笑顔は消え、冷たい顔へと表情を変えた。


「オトハは俺たちの仲間だ!知る権利だってあるはずだ!」

「アンレイル、お前は彼女が犯人でないと確信しているようだが、その証拠はあるのか?

もし、彼女が犯人だったらてめえ責任取れるのか?

本当に彼女でない確証はあるのか?

状況によってはてめえを逮捕することにもなるぞ?」


ッ…その目は冷たく、体を凍てつかせる。

怖い…俺は口を噤んでしまった。


「でも、同行は任意なんじゃ…。

だってさっき逮捕なんてしないって…。」


震える声でフルーレットは答える。

俺も彼女も脚がガクガクと震えていた。


「任意?何生温いことを言っている?それは君らのところでのルールだろ?

強制連行だ。犯人である可能性があるのなら、見逃すわけにはいかない。無実が証明されるまでは拘束させてもらう。牢には入れん。何もない部屋に拘留してもらうだけだ。」


その回答は無慈悲なものだった。この世界はファンタジーのようなものであるが、しばしば現実が入り交じる。だから元の世界だと錯覚させられることがあるが、今回のことがいい例なのかもしれない。

結局は異世界であり、別世界である。


「「…。」」


俺たちはただ沈黙で答える他なかった。


「さて、オトハ付いてこい。」

「…」


オトハはフライが出ていくのと同時にふらふらと付いて出ていった。

俺たちはその背中を見守ることしかできなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ふかふかのクッション、汽笛の音、ガタンゴトンと車輪の駆動音、周りには制帽の被った人達、私は今どこかへと連行されているんだろう。

けど、現実感はない。そもそも何があったのかも全然分からない。

付いてこいと言われたから、ただ足を動かしただけ…どうしてこうなったんだろう?


「悪いね、これも仕事なんでな。恨まんでくれよ。」

 

隣に座った男が呟く。

そんなこと言われたって…私には何が何だか分からない。

(もう何があったの?何でこうなったの?)

私はキャパオーバーして、理解することが難しかった。

目の前が滲む…それは正しく限界を体が迎えたことを示した。


「着いたぞ。立て。」


言われたままに立ち上がる。

心配も同情もしてくれるものは誰もいない。

そのまま歩き、黒い柵に囲まれた大きな建物の敷地に入っていく。

建物は有刺鉄線の柵で別けられ、境界線が作られている。


ザク、ザク…

芝生を踏む音が耳に入っていく。


「「「!!!!!」」」


耳に喧騒な声が聞こえてくる。顔を上げてみれば、それは有刺鉄線の柵の向こうからギラギラとした目で見てくる。それは舐め回すような目もあれば、にやにやと嘲笑うかのよいな目もある。

その好奇な目が心を追い詰めていく。

(ここって刑務所なんだ。)

それはまるで昔テレビで見たドキュメント番組のような光景だった。

(もうどうでもいいや。)

だが、今の自分にはどうでもよかった。

もう全てが失った気持ちになって、限界が来てしまっていた。


もう私は優花ちゃん達の元には戻れない。

私は将貴君を殺した犯人だと自白をした。

これは全くの嘘だ。

そんなことは一切していない。でも、わたしがあの時いなかったから...彼は死んでしまった。

だから間違いでもない。

私はいるだけで周りを不幸にしてしまう。私は疫病神だ。

これが刑事に言えと言われたとしても、私は存在しない方がいい。


「みんな、ごめんね…。」


私はただ1人殺風景な部屋で静かに泣いた。










投稿遅れてしまい申し訳ありませんでした。

忙しくて、あんまり書く時間が取れなかったことや構成が納得いかなくて書き直したりで、遅れました。

今後もしばらくは不定期になるかと思いますが、応援していただけると幸いです。

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