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嵐の星のもとで  作者: 音頭
1章 ギルド参入編
22/33

異常

俺らに同行するのはリーダーが戦士のレオン・ガルシア、他は僧侶のレイナ・ウォルター、戦士のライアン・クロード、戦士2人の僧侶1人のパーティーで、ランクはⅢ。

まさか2つランクが上の人たちが来るなんて思わなかった。

挨拶を終えて、付いていくとその先は外ではなく、地下の階段を降りて行った。

(そんなとこに地下に続くところがあったんだ。)

看板には受付と宿屋しかなかったが、書いていないとはなかなかの穴場なんだろうか?

降りれば降りるほど薬品の匂いが強くなってくる。

完全に降りるとその先の部屋が明らかになる。


「すげえ…。」


そこは様々な色の液体が入った瓶や光り輝く刃物が奥の棚に立て掛けられていた。

それ以外にも手で触ったらすぐにバラバラになりそうなほどの植物や金属製の小手・盾・鎧、ギラギラと輝く鉱物など様々なものが置いてあった。

その光景に俺たち3人は驚嘆するほかなく、言葉を失った。


「驚いただろ」


レオンさんが俺らに話しかける。

その声で我に返る。


「すげえ、すげえよ!ここって何なんだ。」


俺はこの未知の空間にわくわくが止まらなかった。


「ここは万屋だ。武器・防具・道具すべてがそろっている。まず1つ鉄則だ。クエストに行く前には準備をしておく。手ぶらでは死にに行くようなものだ。」


なるほど、確かにそれは一理ある。しかし問題がある。

(俺、金持ってないんだけど。)

俺たちは一文無しだった。喉から手が出るほど欲しい状況ではあるものの指をくわえてみることしかできない。


「はっはっは、気にすんな!ここは無料のもんさ!地下に行くと金がかかるが、ここはそんなものはない。」


レオンさんの言葉に耳を疑った。何故ならこの高そうなものが全て無料だというのだ。


「あんなぴかぴかな剣も?」

「ああ、立て掛けているだけだから。」


立て掛けてるだけ?どういうことだろう?


「これはすべて商品にならない訳あり品なんだ。だからいいんだよ好きにして。」


ライアンさんも同じように言う。

訳あり?素人目には訳あり品には見えない。っていうか、なんでこんなにも残っているんだ?


「悩んでいることわかるぞ。なんでこんなに残りまくっているのだろうってとこだろ?」


!?なんでわかった?エスパーか?


「その反応図星みたいだな。俺らも若い時そうだったから。なあ、ライアン。」

「おうよ、ギリギリまでもっていったよ。けど、置いてないやつ名前書いてないからわかんねえんだよ。レイナがいなくちゃ死んでたなあ。」

「それ、あなたが変な液体の水飲むからでしょ…。」


3人各々が思い出話に花を咲かし始める。こんなにも残っていることが分かった。

ここに捨てられているだけなんだ。それを再利用するだけなんだ。



「あの~そろそろ…。」


オトハが恐る恐ると言う様子で盛り上がっている3人に声をかける。


「ああ、悪い悪い。まずはポーチに詰め込もうか。」


レオンは鞄のようなものを取りだす。

(確かそれは…。)

その鞄はクエストを受けるときにリサさんから受け取っていたものだ。

そう思い出している間にライアンさんとレイナさんが次々と入れていく。


「よし、後は武器だな。好きなもん取ってこい!」


鞄は乾燥した植物や鉱石や道具でいっぱいになって、パンパンだ。

レオンさんは再び俺らのほうに向かい合う。

戸惑いながらも好きなものを取ってくる。


俺は盾と剣を持った戦士のような恰好を選んだ。本当は鎧を着ようと思ったんだが、剣や盾が意外と重い。そのうえ、鎧を着ると全然体が動かない。体が鉛のように重かった。昔の人はこの恰好で戦っていたというから改めてすごいと思った。

フルーレットはローブを着て杖を使う魔法使いのような恰好をしていた。

オトハは弓と矢を持って、動きやすい服装をしており、その姿はまるで狩人のようだった。

(ファンタジーだな。)

俺はそうしみじみと感じた。

その後、すぐにエリアⅠへと旅立った。


ーーーーーーーーーーーーーー


「なかなか楽しかった。」

「うん、そうね。でも、レオンさんたちすごい熟練って感じがしたよね」


レオンさんたちと別れて、ギルドハウスに足を踏み入れた際にはもうすでに夕暮れになっていた。

今回俺らは何もできなかった。それ自体は分かっていたことではあったが、ここまでとは思わなかった。

それに対しレオンさんは正しく熟練の冒険者ってもののように感じた。

それは戦うことだけに対してではない。乾燥した植物を乳鉢に入れてすりつぶして、麻酔薬や回復薬を作ったり、刃物を研ぐ方法を教えてくれた。

ただ、その難易度ははっきり言って高い。素人目にはその植物が薬草なのかなんてわかりもしないし、その配分も口頭では単位が分からない。故に再現ができない。

(ああいう風になりたいな。)

俺はレオンさんたちに憧れを抱いた。


「オトハ、ずっと黙ってどうしたんだ?」


終始クエスト中黙っていた彼女に声をかける。


「うん、ごめん。ちょっとね…。」


その顔色は芳しくない。


「次はフラッド君も来れるから大丈夫だって!」

「うん、そうだよね。」


フルーレットに慰められるが、やはりその様子は芳しくなく、頭はうつむいたままだった。

(大丈夫かな?)

その様子は大きく不安と胸騒ぎを感じさせた。

(まあ、大丈夫でしょ。)

俺はすぐにそれを振り払った。何故なら戻ったら、次の日からはフラッドが来れるからだ。

そうして、扉をくぐって、受付席に戻った時だった。


「…。」


リサさんが行きとは違いとても苦い顔をしている。


「リサさん?戻りました。」


俺はその様子に困惑するが、声をかける。


「あ、はい。報酬金をお渡ししますね…。それと、そのぉ…。」


その様子は心ここにあらずと言ったような感じで、上の空だ。一体どうしたのだろうか?朝の様子とは違いすぎて動揺が隠せない。


「いえ、言いましょう。フラッド・レイン、彼をクエストに参加させることはできません。」

「「「!?」」」


その言葉は俺たちに驚きを与えた。

俺とフルーレットはその場で立ち尽くし、オトハはその場でガックシと膝から崩れ落ちた。


~~~~~~~~~

3人と別れた時、報告書を書くために話し合う。

報告書は新しい子が危険かどうかを証明するために必要なものだ。


「レオン、ライアン、あの子たちどう思う?」

「素直ないい子たちだな。懐かしいな、あの感じ。」

「そうじゃないわよ!!」


レオンは懐かしそうな感じで笑う。


「ああ、わかってる。ジョークだよ。ジョーク。そうだな、アンレイルは魔法に関する適正はゼロ。スライムに対しても無力だ。人間と言うよりかあれは…いや、嫌な想像はやめておこう。レイナ、彼女はどうだったんだ?」

「魔法に関する適正はほぼないと言ってもいいかしら。ただ、回復に関する適正だけはある。いえ異常と表現しても構わない。」

「異常?」

「ええ、草を急速に成長させ、枯れさせる。実践では危険すぎるわ。回復させて死の危険に合わせるなんて元の子もないから。回復術師の専門家がいるように感じたわ。」


ふーん、そんな子がいるんだな。


「ライアン、お前は?」

「魔法の適性は風と土といったところで普通の奴らと何ら変わりがないが、問題はあの消極的な様子だ。あれじゃあ、伸ばすのも難しいな。」

「そうかあ。」


中々の癖のあるパーティだな。傍から見たら面白いんだが、どう評価するべきかな。

正直、今日の状態ではスライム1匹狩ることすら難しい。討伐クエストは恐らくできない。ただ、それだと受けるのが探索クエストだけになってモチベがなくなってしまうんだよな。

それは勿体無い。


「よし、決めた。しばらくの間、あの子たちにも付こう!」

「何を言ってるの?私たちはすぐにでも緊急招集に行かないと。」

「あんなもん無視したらいい。もう多くの人らが行っているし、それなら教育クエストを受けるほうが金は入る。それに執行機関のフライさんが関わってるんなら、ギルドも無下には出来ないはず。」

「本音は?」

「あのままだとあの子たちがかわいそうじゃん。」

「それならそうと初めに言いなさいよ!なんというか不器用なんだから。」

「だが、それがレオンらしいな。」


2人もどうやら認めてくれた。ギルドのほうには『以後観察が必要』と報告書を書き上げ、報告をし、そして彼らに今後関われることも受理された。


「次の日からは頑張るぞ。」


決意を新たにして、次の日を迎えた。













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