表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嵐の星のもとで  作者: 音頭
序章
2/34

第2の人生へ

星空の中、みんなが歩く。歩く先は先の見えぬ果てしない闇。だが、闇の先に微かに太陽の光が見える。後光のさす3つ足の黒い怪鳥に導かれる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ゆっくりと瞼を開ける。

目の先の光景は白い天井に蛍光灯。俺は助かったのだろうか。手を目の前に持ってくると、手は綺麗であざも傷一つない。

(あんな瓦礫の下だったのに、何もないのか?)

手首を回転させてまじまじと見ても綺麗な手だった。

俺は起き上がり周りを見渡す。そこは殺風景な部屋で、遠くに扉と近くに机があるだけだった。机には懐かしいものがあった。

手書きで「桜本正也」と書かれた紙。他には可愛いイラストが描かれていた。

忘れるはずがなかった。これはみんなで作った生徒名簿の俺のページだ。

先生も喜んでくれたな。本当に優しい先生で、怒られたことなんて一度もなかった。

俺の大事な思い出の一つだ。


「もっともっと一緒にいたかったよ先生。なんで死んじまったんだよ。」


無念と未練が胸に込み上げてくる。胸が痛い。痛くて苦しい。締め付けられるように痛い。

目から熱い雫が流れてくる。


「ッ…ッ!!」


胸に込み上げてくる感情を抑えきれない。涙が止まらない。受け入れたはずだったが、文字を見た瞬間に溢れ出てくる思いは止められなかった。

紙にぼたぼたと涙が落ちて、文字と絵が滲んでゆく。滲んだ文字と絵は混ざり、そのまま手へと這って行く。


「うわあ!!」


異常な光景に涙は止まり、現実へと引き戻される。手から肩へと、肩から胸へと貼ってくる。払って落とそうとしても、落ちることはない。紙を手放しても、空を飛んで手に付いてくる。

滲んだインクは胸の中にしみこみ消え、紙はただの真っ白な紙切れに変わった。

ードクン!ー

胸の奥が熱くなった気がする。

(…。)

誰かの声が聞こえた気がする。内容は分からない。しかしそれは懐かしく、温かかった。


「起きましたか。」


遠くから誰かの声が聞こえる。頭を上げると扉から猪の顔をし、巨大な斧を持った者がいた。


「えっと、あなたは?」

「自己紹介は後で。私の後に付いてきてください。」

「あ、はい。」


言われるがまま立ち上がり、後に付いてくる。

しばらくすると、大きな部屋に付く。そこは客間だった。ソファには3人の男が寛いでいる。

1人は髭を生やして、その要旨は若人にも老人のようにも見える。

1人は白髪で精巧な顔つきをして、本を読んでいる。

最後の1人は黒髪の青年がいびきを立てながら爆睡していた。


「空いているところにかけたまえ。」


髭を生やした男に言われた通り、ソファの空いている場所に座る。


「スターチス、彼も目覚めたようだ。連れてきてくれ。」

「わかりました。失礼します。」


猪男は部屋から出ていき、扉を閉めてどこかに行く。


しばらくすると、扉は開かれる。

そこには見知った顔の少年が入って来る。


「将貴!?」

「正也!?」


まさか会えるとは思えなくて、お互いが驚きの声を上げた。


「座りたまえ。」


髭を生やした男が、将貴に空いている席に座るように誘導する。

将貴は隣に座る。猪男は俺たちのそばで待機する。


「スターチス、君も座って構わんよ。」

「いえ、私はこの方が性に合っておりますので。お気遣いなく。」

「そうかい。」


猪男は静かにたたずむ。


「まずは自己紹介からだな。私の名前はエスワード。そこの白髪の男がルーシー、寝ている黒髪の男がスビアだ。そしてスターチスだ。君たちの気になっていることから教えよう。

ここは()()()だ。」

「「異世界!?」」


その言葉はあまりにも衝撃的だった。


「初見でしか味わえない快感だ。」


エスワードはニコニコしている。


「ドッキリ?」

「ところがどっこい、マジ。」

「マジすか?」

「マジマジ。どうして、そこにオークがいる?」


オーク?指さした先には猪男ことスターチスがいる。その姿は確かにファンタジーの世界にいそうな存在だ。

仮にコスプレをしているにしては手の先まで剛毛だ。

本当ににここはファンタジーの世界なんだろう。であれば、さっきの異常は理解ができる。

しかし、何故俺たちが異世界に来たのか。全く見当もつかない。


「君たちは死んでここに来た。」


その言葉は納得できるものだった。

確かにあの時瓦礫の下敷きになった。

けど、なんで死んで来たことを知っているんだ?


「死んだことを何で知っているんですか?」


「たまにいるんだよ。君らみたいな者がね。一つ伝えておくが、前の君たちと何ら変わらない。魔法はこの世界にあるが、なにも使えない。」


恩恵なしですか。残念。それにあの時生き残っていても、今みたいに2本足で地面を立てるわけではなかっただろうし、生まれ変わっただけラッキーだと思おう。

この日から俺の新たな人生が始まった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ