第2の人生へ
星空の中、みんなが歩く。歩く先は先の見えぬ果てしない闇。だが、闇の先に微かに太陽の光が見える。後光のさす3つ足の黒い怪鳥に導かれる。
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ゆっくりと瞼を開ける。
目の先の光景は白い天井に蛍光灯。俺は助かったのだろうか。手を目の前に持ってくると、手は綺麗であざも傷一つない。
(あんな瓦礫の下だったのに、何もないのか?)
手首を回転させてまじまじと見ても綺麗な手だった。
俺は起き上がり周りを見渡す。そこは殺風景な部屋で、遠くに扉と近くに机があるだけだった。机には懐かしいものがあった。
手書きで「桜本正也」と書かれた紙。他には可愛いイラストが描かれていた。
忘れるはずがなかった。これはみんなで作った生徒名簿の俺のページだ。
先生も喜んでくれたな。本当に優しい先生で、怒られたことなんて一度もなかった。
俺の大事な思い出の一つだ。
「もっともっと一緒にいたかったよ先生。なんで死んじまったんだよ。」
無念と未練が胸に込み上げてくる。胸が痛い。痛くて苦しい。締め付けられるように痛い。
目から熱い雫が流れてくる。
「ッ…ッ!!」
胸に込み上げてくる感情を抑えきれない。涙が止まらない。受け入れたはずだったが、文字を見た瞬間に溢れ出てくる思いは止められなかった。
紙にぼたぼたと涙が落ちて、文字と絵が滲んでゆく。滲んだ文字と絵は混ざり、そのまま手へと這って行く。
「うわあ!!」
異常な光景に涙は止まり、現実へと引き戻される。手から肩へと、肩から胸へと貼ってくる。払って落とそうとしても、落ちることはない。紙を手放しても、空を飛んで手に付いてくる。
滲んだインクは胸の中にしみこみ消え、紙はただの真っ白な紙切れに変わった。
ードクン!ー
胸の奥が熱くなった気がする。
(…。)
誰かの声が聞こえた気がする。内容は分からない。しかしそれは懐かしく、温かかった。
「起きましたか。」
遠くから誰かの声が聞こえる。頭を上げると扉から猪の顔をし、巨大な斧を持った者がいた。
「えっと、あなたは?」
「自己紹介は後で。私の後に付いてきてください。」
「あ、はい。」
言われるがまま立ち上がり、後に付いてくる。
しばらくすると、大きな部屋に付く。そこは客間だった。ソファには3人の男が寛いでいる。
1人は髭を生やして、その要旨は若人にも老人のようにも見える。
1人は白髪で精巧な顔つきをして、本を読んでいる。
最後の1人は黒髪の青年がいびきを立てながら爆睡していた。
「空いているところにかけたまえ。」
髭を生やした男に言われた通り、ソファの空いている場所に座る。
「スターチス、彼も目覚めたようだ。連れてきてくれ。」
「わかりました。失礼します。」
猪男は部屋から出ていき、扉を閉めてどこかに行く。
しばらくすると、扉は開かれる。
そこには見知った顔の少年が入って来る。
「将貴!?」
「正也!?」
まさか会えるとは思えなくて、お互いが驚きの声を上げた。
「座りたまえ。」
髭を生やした男が、将貴に空いている席に座るように誘導する。
将貴は隣に座る。猪男は俺たちのそばで待機する。
「スターチス、君も座って構わんよ。」
「いえ、私はこの方が性に合っておりますので。お気遣いなく。」
「そうかい。」
猪男は静かにたたずむ。
「まずは自己紹介からだな。私の名前はエスワード。そこの白髪の男がルーシー、寝ている黒髪の男がスビアだ。そしてスターチスだ。君たちの気になっていることから教えよう。
ここは異世界だ。」
「「異世界!?」」
その言葉はあまりにも衝撃的だった。
「初見でしか味わえない快感だ。」
エスワードはニコニコしている。
「ドッキリ?」
「ところがどっこい、マジ。」
「マジすか?」
「マジマジ。どうして、そこにオークがいる?」
オーク?指さした先には猪男ことスターチスがいる。その姿は確かにファンタジーの世界にいそうな存在だ。
仮にコスプレをしているにしては手の先まで剛毛だ。
本当ににここはファンタジーの世界なんだろう。であれば、さっきの異常は理解ができる。
しかし、何故俺たちが異世界に来たのか。全く見当もつかない。
「君たちは死んでここに来た。」
その言葉は納得できるものだった。
確かにあの時瓦礫の下敷きになった。
けど、なんで死んで来たことを知っているんだ?
「死んだことを何で知っているんですか?」
「たまにいるんだよ。君らみたいな者がね。一つ伝えておくが、前の君たちと何ら変わらない。魔法はこの世界にあるが、なにも使えない。」
恩恵なしですか。残念。それにあの時生き残っていても、今みたいに2本足で地面を立てるわけではなかっただろうし、生まれ変わっただけラッキーだと思おう。
この日から俺の新たな人生が始まった。




