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嵐の星のもとで  作者: 音頭
1章 ギルド参入編
18/32

次なる日常へ

「おはよう。」


目をこすりながら、居間へと降りる。


「おはよう。」


優花はもうすでに朝食をすまして、服を着替えている。

どうやら新聞を読んでいるみたいだ。


テーブルの上には皿が置かれ、そこには既に料理が置かれている。

スクランブルエッグ、ソーセージ、ライス、味噌汁…。


普通だ。異世界に来たとは思えない。

さらに味がそのまんまだ。


「ごちそうさま。」


食べ終わり、皿をそのままに立ち去った。

その後は浴室に行って、顔を洗い、朝シャンをして服を着替える。

そうして、居間に戻った時だった。


「まさくん、ここに座ってください。」


優花は俺を椅子に座らせる。圧に負けて座る。

机の上には皿はもうすでになくなっていた。

対面に座った優花は机の上に紙を乗せる。

その紙には『月曜日:優花、火曜日:正也、水曜日:優花…』のように順番に曜日と名前が書いていた。


「なにこれ?」

「当番?」


当番?何の?

頭に?マークを浮かべて、首を傾げる。


「料理と食事の当番。」

「別にやりたい人がやったらよくない?」

「不公平じゃない。目の前でゴロゴロされてると腹立つから。」


それはそう。


「俺やったことないんだけど。」

「それはお互い様よ。でもなんとなくでどうにかなるわよ。」


うーん、そうか。まあ、1日ずつ変わるからいいか。

嫌って言ったら嫌われそうだし、我儘には思われたくない。


「わかった。」

「じゃあ、明日よろしくね。」


コンコンコン!

誰かが玄関をノックする音が聞こえる。


「フライさんかな?」

「さあ?」

「見てくる。」


俺は玄関に行き、扉を開ける。


「誰もいない?」


開けても誰もいなかった。


「どこ見とんだ。下じゃい。」

「へ?」


下を見ると、そこには白い蛇がいた。


「夢か、夢なのか?」


目をごしごしと擦る。


「ほな、邪魔すんでぇ。」

「あ…。」


俺の股の間をするりと通って家の中へと入ってくる。


「優花、喋る蛇が入っていった!」

「喋る蛇?何馬鹿なこと言ってるの?」


そうなるわ。俺ですらよくわからないことを言ってるなって思ってるもん。


「何この蛇…?」


優花は俺と同じ反応になってる。

これは驚きよりも困惑が勝ってしまう。


「誰が蛇だって?失礼な奴らだ。僕をどこからどう見たら蛇に見えるってんだ。全くこれだから最近の若者は…うん?」


喋る蛇は玄関の靴箱に置いてある鏡を見つめる。

そして、鎌首を持ち上げて体の隅々を見る。


「蛇やん!」


目玉を飛び出す勢いで驚いていた。


「ああ、そうだ。昨日夜遅くまでやけ酒したからじゃん。僕ちゃん、おっちょこちょい。」


確かにこの蛇あまりにも酒臭い。そしてどことなく人間臭い。


「言ってよお。分かんないじゃん。」


言ったわ!なんかこいつのリズムに乗らされたらダメな気がする。なんとなく既視感がある。


蛇がバラバラになり人間になっていく。

その正体は人間だった。おそらくは爬虫融人。さらに言えば知り合いだった。そりゃあ既視感があるわけだ。

手には一升瓶を持っており、とんでもなく酒臭い。


「大沼神威」


先生と同じ時期に失踪した同級生の変人だった。

自分がしたいことしかしない。祭りごとが好きで、いつも先頭にいる。そんなパーティー野郎な陽キャだった。


「大沼君、どうしてここに?」

「あ、そんな名前じゃないから。ラック・ホワイトスネイク。この名前だから。」

「じゃあ、ラック君?どうしてここに?」

「それには大きな理由が…。」


なんか始まったぞ。


それは昨日のことだった。


「寒い。」


お金がなくて、帰る場所がない。寒さを酒で凌いでいた。


「なんであんなことになってしまったんだろう?」


先ほどのことを思い出していた。

脳裏に浮かぶは鉄球がころころと転がる音。赤と黒のマスの盤がぐるぐると回転する。

僕と相棒は熱血していた。

(黒!黒!黒!)

『黒に入ってくれ!』と天に願っていた。

しかし運命とは無慈悲なものだった。

女神は性根が腐っていた。

僕はそのまま外に追い出されたってところだ。


「自業自得じゃん。」


よくよく聞いてみたら、ただ単にルーレットで負けて金がなくなっただけじゃん。


「失敬な!あのクソ女神のせいだろうが!」


責任転換をした。中々なクソ野郎である。


「どうして、ここに来たの?」

「金くれるからだけど?」


優花からの疑問はもっともだった。その答えはもはや清々しい。


「誰から?」

「ハエからだけど?」


ハエってのはおそらくフライのことだろう。ただ、フライはなんでこんな奴に頼んだんだろうか?


「その金はどう使うつもり?」

「まずは相棒にマウントを取る。そして、金を2倍にいやそれ以上にする。」


どうしてこんなにも意気揚々と言い張れるんだ?というか、相棒も負けたんかい。


「金を貰うからにはちゃんとやるさ。だが、その前に…入ってこい。」


玄関の扉は開かれ、車椅子の男とそれを押す女が入ってくる。


「将貴に明日香か?けどその姿は?」

「何があったの…?」


男と女の正体はすぐにわかった。そんなことよりも変貌具合に2人とも驚きを隠せなかった。

一昨日あった人が車いすに座っているんだ。驚かないほうが無理があるだろう。


「色々あってな。」

「…。」


明日香は目を合わしてくれないし、将貴はばつが悪そうに答える。

きっと俺ら以上のことを経験してきたんだろう。深くは聞かない…聞けなかった。

空気がどんよりと重くなってしまった。



ーーーーーー

「ここか。」

「ええ、どうですか?」


エリアⅢの奥の場所に2人の男がいた。

その場所は森だが、目の前に広がっていたところは焦土と化し、巨大なくぼみがあった。

それはまるで隕石が落ちた時にできたクレーターだった。


「しかし、あの子らを置いてもよかったんですか?」

「あいつに任せたし何とかなるだろう。金だけの働きはするさ。

それよりもこっちのほうがやばそうだ。」


クレータの底から小さな穴がぽつぽつと空いていた。

ステッキの先で穴を叩く。

ぼろぼろと崩れ、ステッキの音が反響する。

穴の先は空洞だろう。


「この先に何がいるかは分からないが、気を付けるほうがいいな。」


クレータの下から掘り進めて、何かはその先にいる。

問題は掘り進めたものだ。森の下は岩盤になっている。森林も岩盤から生えているから生命力も強い。少々の火では燃えることはない。

今回のは森林を燃やしただけではなく、岩盤を溶かし、掘り進めていったってことだ。

隕石ではない。何らかの生命体だろう。


「ランクⅢ・Ⅳのメンバーを収集、探索隊を編成しろ。グランへは私が打診しておく。」

「は、はい!分かりました!」


(願わくば、友好的なものであってほしいものだ。)

私はかすかな希望を抱きこの場を後にした。







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