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嵐の星のもとで  作者: 音頭
序章
15/32

追い込み

「さあ、やろうか。」


私はエルの前に立ちふさがる。片手に太刀を構える。


「あなたに私を殺せるかしら?」


エルは赤黒い槍を生成し、手に持つ。

地面を足で蹴り上げ、その勢いのままに腕を振り下ろす。


キン!


金属音が鳴り響き、両手持ちの槍でガードされる。しかし返される力は強くない。


「さっきの光がまずかったようだな。あまり押し返してこれてないな。」


光は彼女を弱体化させた。

崩すのにはあまり苦労をしそうにない。しかし、顔には焦りが見えない。


(何が狙いだ?)


私は気味の悪さを持っていた。


「そんなことより自分の心配をしたらどうかしら。」


顔のあたりがきらりと輝く。

その瞬間一閃の光が放出される。首を傾け避ける。


「そんな狙いがバレバレのものくらうはずがないだろう。」

「そうかしら?だったら、次を避けてみたらいいわよ。避けれるのならね。」


また射出されようとしている。

そこで、狙いに気付く。


(なるほど、狙いは倒れているガキだ。このままいけば、貫かれる。)


かと言って、私が庇ったところで貫通する未来も見えている。

おそらくは崩しも、間に合わない。

それが、奴の余裕の理由だ


「あなたが強くても、そこにいるのは弱者よ。もう二度と歩けなくさせたんだから、あなたに対してはいい人質になるわ。」


射出される。しかし、倒れている彼には当たることなく、空中で消滅した。


「へ、どうして?」


その混乱が隙を作った。その隙をついて、槍を下から上に押し上げて体勢を崩す。


「しまっ…。」


そのまま右上から左下へと太刀を振り下ろす。


「浅かったか。」


敢えて服を辛うじて切らすだけで留まらせる。

ここから少しずつ心を追い込んだ行く。


「なんでだよ。」


中身の焦りが出てきていた。


「その力の根幹は血だ。血をレーザーのように射出したのがさっきの技だ。だが、それはとても遅い。零距離であれば、遅かろうが効果的だ。特にさっきみたいに人質がいたりする場合はな。だが、タネがわかっているのなら対処なんか簡単だ。血には血をぶつければいい。」


血を媒体にする攻撃には血をぶつければいい。

タネあかしをして、余裕をなくす。


「まさか、蚊をぶつけたのか!」

「そうだ。…余裕がない顔をしたな。それもそうだろうよ。その技は無限ではなく、体内の血を使っているのだろう?どうする?その子は貧血だぞ。吸血鬼なのに血が最も嫌いな子だからな。無駄撃ちすると体がふらつき始めるぞ。血液は大事だからな。」

「ふん、だが、貴様が俺を殺せないのはわかっている。お前はパートナーであるこいつを殺せるのか。」


エルは自分の体をポンポンと叩いて挑発してきた。


「なら試してみるか。眷属召喚。」


どこからともなく、蚊の大群が押し寄せる。


「眷属分解」


体を蚊にして群れに溶け込む。そのまま群れはエルを中心に回り始める。


「くそ、気持ち悪い技だ。」


気持ち悪いという人が大半だろう。それが奴の心をすり減らす。


「ッ!」


時より腕と太刀に戻して、斬りつける。皮膚の表面を切りつけ、斬られたと錯覚させる。

いくら反撃して傷付いても、眷属変換で怪我した部位を取り換えることができ、その犠牲はあまりにも微々たる足るものだ。

それを眷属召喚して数を補充し続ける。そんなサイクルを繰り返す。

そして、時に攻撃をする。それをゆっくりと繰り返し続ける。


エルの顔は余裕が完全になくなっていた。

どんだけつぶしても、その黒い渦は止まることはない。

奴は削れるが、こちらは何も変わらない。

無意味な攻撃、無意味な防御、それが奴を狂わせていった。

奴は完全に限界が来ていた。もう戦意喪失しているのは明らかだった。


「聖者の手」

「しまった!!」


どこからともなく白い手が現れ、エルから何かが引きずり出される。

引きずりだされたエルはそのままばたりとうつ伏せに倒れた。

完全に精神を折られた奴はスターチスに引きずり出された。

眷属状態を解除させ、元の姿に戻る


「神罰は下される。神の裁きを受けよ。神雷」


スターチスの指先に光が収束し放たれる。引きずり出されたものは光に貫かれる。


「熱い熱い熱い!」


奴は悶え苦しみながら、消滅していった。



~~~

「くそお!もうちょっとだったのに。」


もうすぐで、手に入ったのに!吸血鬼と蟲融人のハイブリットがやっと完成したというのに。

分体が完全に滅せられたので、マーキングも使えない。

あのオークめ!


「まあ、いい。次がある。」

「次?君に次があるとでも?」


声をした方に振り返ると、そこには氷のように冷たい目のした男がいた。


「私は一番嫌いなのは無能だ。何でここにいる?」

「は?何言ってんだ?俺が無能?そんなわけないだろ?」


命令したのはこいつなのに、どういうつもりだ?


「今回の件でモスキートに彼女を殺させてやれば、お前はよかった。」


こいつ、俺に死ねって言ってるのか?


「待て!あれはあのオークがいたからだ。」

「確かに一理ある。」

「だったら…「過程は聞いていない。」」

「私が聞いているのは結果だ。分体である君が死んだところで、君には何の影響もない。君が死ぬというのが最もな利益だったがはずだが、何でしなかった?」


まずい…


「それは…。」

「マーキングをしたかったんだろ?しかしどうも解せないね。何でしたかったんだ?執行機関である限り、君が彼女に近づくメリットはないはずだ。モスキートの反感を買うだけで、君にはデメリットしかない。やる理由がないはずだ。」

「…。」

「君、スパイだろ。」

「!?」


何でバレているんだ?


「彼女を使って何したかったんだ?君は用済みだ。しかしその情報は聞かせてもらおうか。ついでに君が誰のもとにいるのもね。」


ゆっくりと男は近づいてくる。


「く、来るな!来るな!」


俺は必死に足搔こうとしたが、体が金縛りにあったように動かない。

そんな時だった。


コンコンコン!


「デスカル様、いらっしゃいますか?モスキート様より通信です。」


誰かが部屋をノックしてきた。


「ああ、今行く。

モスキートに見られたら、厄介だな。また来る。この部屋で大人しくして持っておけ。」

そう言うと、デスカルは部屋から出て行った。


「はあ、ちびるかと思った。」


体は動くようになっていた。

一刻も早く俺はこの国を出ていかなければならないと思い、急いでこの場所から去った。











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